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領民達から感謝されている兄、リディアは嬉しそうに話していた。まるで誇らしいと言わんばりに。


(莫迦莫迦しい)


本当にアイツは何も分かってない。確かにグリエット家の領地は他と比べて豊かだと自負はしている。だがそれは領民達の為にしている訳ではない。あくまで自分の地位や権力を維持する為に過ぎないのだ。言わば領地達からの感謝の念は副産物だ。

だが領民等から慕われる事は良い事でもある。士気が上がれば更に領地は豊かになるだろう。


「俺はお前が思うような、綺麗な人間ではないんだよ」


誰もいない部屋で、独り言つ。


最年少で黒騎士団長に就任し、最年少で侯爵となった。だが、綺麗事で済むような世界ではない。周囲からは羨望、嫉み、嘲け……様々な感情を向けられた。無論居心地の良いものではない。


リディアには決して言えない様な汚い事も……人を殺した事もある。それは任務とは別に、私欲の為にだ。利用できるものは、兎に角何でも利用した。


ーー大切なモノを守るには、仕方がない。後悔も懺悔する気持ちなど微塵もない。


もし今後、後悔をするという感情が自分の中に生まれる事があるならばそれは……リディアを失った時だけだ。


「俺にはお前しかいないし、お前しかいらないんだ」


国が滅びようと、世界が終わろうと、彼女がいれば何もいらない。この世で自分を満たしてくれるのは彼女だけだ。



◆◆◆



ーー滞在4日目の朝。


「これは良作ですね。リディア様が、お作りになられたのですか」


今日は予定通り教会へ行く。リディアは持って来たマカロンをテーブルの上に置いた。


「あー……私が作ったのは、失敗しちゃって……。これは、屋敷のシェフが作ってくれたのよ」


眉根を寄せて項垂れる。自分で言いながら、 落ち込んだ。不器用過ぎる自分が恨めしい……。


そう言えば、結局あの大量の駄作は兄が全て食べ切っていた。


(実は味覚音痴だったりして)


「まあ、そうなんですね。ですが、作ろうとなさったそのお気持ちが大切かと思います」


慰めの言葉を掛けられるが、余計に情けなくなった。


「ありがとう、エマ。でも次こそは、必ず成功させるわ」


だが、負けず嫌いのリディアは諦めない。


マカロンの包みを大切に抱えて、昨日購入したジャムを籠に入れて準備完了だ。


私だけに優しい貴方

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