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中学校生活にも慣れてきた。でも慣れは油断と隙を作る。相手の体力や体調を見て話を話すことにも慣れてきたし、家ではあまり気を使わなくても会話できる。でも相手が苦しんでいる時の罪悪感と悲しさには慣れないしこれからも慣れることはないだろう。
「山梨さーん!今日委員会あるって!」
「わかったわ。ありがとう!」
「全然いいって!」
そう言って私に手を振りながら廊下を走って行ったのは秋田君。多分『あの人』だ。
図書委員の仕事は昼休みに図書室で本を整理したり貸し借りを行ったりすること。でも中学生にもなってわざわざ図書室に本を借りにくる人なんてごく数人で私は秋田君の隣で椅子に座りながら本を読んでいた。
「山梨さんって香川さん以外に友達っているの?」
「別に。」
「そうなんだ、、、、」
「どうして?」
いつもならここで切り上げるが、私は秋田君が『あの人』なのかどうかを確認するため話を続けた。
「いや、あんま人と関わらないなって、自己紹介の時も関わりたくない感じの雰囲気出してたし。」
「そう?最近はそんなことないわよ。」「・・・・・」
「話繋げるの下手か」とツッコミたくなるほど見切り発車の会話だと思う。私でももう少しうまく会話を続けれる自信がある。
「秋田君は友達って多い方なの?」
「まぁそこそこなんじゃないか?いつも遊ぶメンバーは俺含めて4人だし、そこまでじゃないけど割と話すってやつは結構いるぜ。」
「そうなんだ。」
「・・・・・」
やっぱり私も会話を続けるのはあまり得意ではないのかもしれない。適当に会話を続ける。
「なんで図書委員になったの?」
「あー、何となく?別に本とか積極的に読まないけど漫画は好きだし。山梨さんは?」
「その場の成り行き見たいな?」
「何だそれ。」
そう言って声を上げて笑った。私もそれに釣られ「ふふっ」と釣られ笑い。そして疑問は確信へと変わって行った。
「今しんどくない?」
「ん?別に?心身共に絶好調だ。」
「なにそれ」
愛想笑いをしてみせる。その後も当たり障りのない会話を続けチャイムを待った。久しぶりに20分丸々人と会話をした。
午後の授業は特に何もなく終わった。その日は少し会話を思い出したり、話せた嬉しさと楽しさに浸ったりしていた。人と話せる楽しい時間を存分に味わうことができた気がした。