般若は、倒れた鬼を一瞥すると、冷ややかな笑みを浮かべた。彼女の目には、鬼がいかに無力であるかが如実に映っていた。心の中で、鬼の存在はもう不要であると決まった。
「ふん、道具だ。役立たずめ。」
般若の言葉は、鬼の心に火をつけた。彼はまだ、主である般若の言葉に従い続けていたが、その心の中では不安と怒りが渦巻いていた。彼の目が燃え上がり、体が震え始める。
「うるさい! 俺は道具じゃない!」
鬼が叫ぶと同時に、彼の体から放たれる怒りの気配が一気に膨れ上がった。その力が、般若に向けて発せられる。彼の巨大な手が一瞬で般若に迫り、圧倒的な力で彼女をつかもうとした。
だが、般若は冷静にその動きを見切り、軽く一歩後ろに退く。鬼の攻撃は、彼女の目の前を空しく通り過ぎ、力強い音を立てて壁に衝突した。
「ふっ、まだそんなに力を振り回すだけか。」
般若の笑みが消え、冷徹な目で鬼を見つめる。その眼差しには、鬼がどれだけ暴れても、手に余るほどの冷徹さがあった。
「お前、私に逆らおうというのか?」
般若がそう問いかけると、鬼の怒りはさらに激しくなった。彼の体から放たれる衝撃波が、空間を震わせる。鬼はその場から飛び上がり、再び般若に猛攻を仕掛ける。巨大な手がまるで山のように迫る。
だが、般若の目は冷静そのものだった。彼女は鬼の手を軽々と避け、次の瞬間、鬼の顔面に鋭い一撃を加える。鬼はその一撃で後ろに吹き飛び、壁に激しくぶつかって崩れ落ちた。
「な、なんだ…? こんなに痛いなんて…!」
鬼は衝撃を受け、体を起こすことができずにその場に倒れ込んだ。その顔には驚きと苦痛が浮かんでいる。彼の心は完全に動揺していた。
「お前は何をしている? 無駄な力を振り回すだけじゃ、何も変わらない。」
般若の言葉が鬼をさらに追い詰める。鬼はその言葉が突き刺さるように感じ、さらに激怒して立ち上がろうとする。しかし、その動きが鈍い。もはや、彼の体は完全に力尽きかけていた。
般若は再び一歩踏み出し、その目を鬼に合わせる。彼女の手のひらから、暗いエネルギーが放たれ、鬼を包み込んだ。鬼はその力に抵抗することもできず、もがくことさえもできなかった。
「お前が本当に欲しかったのは、力ではなく、私の支配だったんだろう。」
般若が冷ややかな声で言う。その言葉が鬼の心を一気に突き刺した。彼の目は混乱し、涙がこぼれ落ちる。彼が長年抱えてきた誇りと、般若への忠誠が、今、完全に崩れ去った瞬間だった。
「…俺は、どうしてこんなことをしていたんだ…?」
鬼の目に、人間だったころの無邪気な表情が戻る。彼は般若にすがりたかったが、それはもう叶わない。般若は、彼を見下ろすように微笑んだ。
「お前はもう、私の手の中の道具だ。何もできない。」
その言葉が鬼にとどめを刺す。鬼は力なくその場に崩れ落ち、動かなくなった。般若は、鬼の体を無情に見下ろすと、次に振り向いて港の方を見た。
「次は、あなたか。」
その冷徹な言葉が港に向けられる。彼女は一歩前に出て、次の戦いの準備を始める。
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