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自分が抱かれると思っていたからこそわかる、その覚悟――挿入する際のつらさをわざわざ江藤に訊ねてしまったのは、未知の痛みに対して、不安や恐怖心が宮本にあったからだった。
それを橋本が、すべて引き受けようとしている。初めてを捧げることによって、自分を縛りつけるためだけに。そんなことをする必要がないくらい、橋本にぞっこんな自分の気持ちを伝えなければ――。
「陽さん、大好き……」
煩いと迷惑がられようが、しつこいと怒鳴られても、告げずにはいられない。
「雅輝?」
とろんとした橋本の顔を、宮本はじっと眺めた。唇の端から涎が滴っていたので、右手でそっと拭ってあげる。下から上へと拭って、愛おしい人の唇にはじめて触れてみた。
柔らかい唇を指先に感じた途端に、その指をちゅっと食まれてしまった。
熱い舌が指に絡んできた衝撃に、下半身がずくんと疼いてしまう。しかも舐めながら上目遣いでこちら側を見つめる橋本の視線がエロく感じるせいで、宮本は無意識に荒い呼吸を繰り返した。
(さっきから陽さんに、いちいち煽られてる。感じさせようとしているのに、どうしてこんなにも感じさせられてるんだろう?)
このままじゃいけないと我に返り、どこかもの欲しげに見えるそれに応えるべく、口内に捕らえられている指先を使って、上顎になぞるように滑らせた。
「んぁっ、はあっ!」
聞いたことのない橋本の声をもっと聞きたくて、じゅくじゅくと指を出し入れさせた。感じるたびに指を甘噛みする橋本が、色っぽいだけじゃなく――。
「可愛い……」
空いてる手で胸の突起に触れつつ、漏れ出てしまった宮本の心情を聞くなり、橋本は口に入ったままでいる手を掴んでぽいすると、面白くなさそうな顔をした。
「陽さん、どうしたの?」
「緊張してるおまえをどうにかしようとしてる傍から、萎えることを言うんじゃねぇって」
橋本の作るペースに、乗っていたのは確かだった。それは潔く認めるとして、別の角度から責めてやろうと考えつく。
「だって俺を感じさせようと頑張ってる陽さんの顔が、すっごくかわいいから可愛いって言ったのに」
「だ・か・らっ! 俺はかわいいってガラじゃねぇこと、何度も言ってるだろ」
「かわいいんです、俺の前だけ限定で。可愛すぎて、どうしていいかわからなくなる」
宮本の言葉を聞いた途端に、橋本の頬が見る間に赤く染まった。動揺を示すように視線が右往左往する。
(く~~~っ! こういうことを無意識でやるなんて、陽さんってば俺を悶え殺す気なんだろうか。かわいい以外の言葉の表現ができない、俺の語彙力が残念すぎる!!)
「……どうしていいかわからなくなるなんて、そんなのおかしいだろ」
「ですよねー。萎えると言っておきながら、陽さんのモノはずっと勃ったままですし。ほんとプリティです」
「プッ!? うわぁ、それはいただけないぞ……」
げんなりした視線を橋本からびしばし浴びせられてしまい、宮本は言葉に詰まった。
「雅輝、頼むからプリティなんて言うな。ぞわっとするから」
「はぃ。あのですね落ち着くために、ちょっとしたいことがありまして」
もじもじしながら頼み事をした宮本を、呆れ果てた眼差しで橋本は見上げながら口を開く。
「この状況下で落ち着きたいと思う、おまえの考えがさっぱり理解できない」
見るからに呆れて無防備でいる好きな人に、これからすることについて阻止される恐れはないだろうと宮本は判断し、橋本の脇の下に両腕を回し込んだ。
「心配ご無用っす。落ち着きながら、しっかり興奮できますので!」
宮本はえへへと笑ってみせるなり、橋本の耳の後ろに顔を寄せて、思う存分に鼻を鳴らした。
「あのさ雅輝、これを訊ねる俺も、どうかと思うんだけどさ」
自分に抱きついたまま、匂いを嗅ぎまくる宮本の躰に、片手だけで抱きついた橋本。大型犬に抱きつかれた気分になったせいで、背中を撫で擦っていた。
「なんすか?」
「これを、江藤ちんにもしていたのかなと……」
「しましたよ。でもくすぐったがってジタバタ暴れるんで、結構大変でした。だけど陽さんは、俺が匂いを嗅いでも平気みたいなんで、すっごく嬉しいです」
「俺は不感症なのかもしれないな。ははっ……」
しんみりした橋本の声を聞き、宮本は首元からすっと顔をあげた。