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## 第56話:『限界突破のゼロシステム』
グラグラと天地を揺るがす地鳴りと共に、戦略サテライト中継基地『ヘリオス』は内側から崩壊を始めていた。
中央送信アンテナが崩落し、内部のプラントが次々と誘爆。黒煙と火柱が要塞の各所から噴き出し、崩れた巨大な装甲板が豪快な音を立てて荒野へと滑り落ちていく。
「ノア! セレス! 応答しろ! どこにいるんだよ!?」
炎上する要塞の外周部で、ウイングエックス・ディバイダーの通信器に向かってゼロが叫ぶ。
ノイズの隙間から、切羽詰まったセレスの声が重なった。
『ゼロ、聞こえる!? 私たちは無事よ! ノアが回収した「調律計画」のコアデータを抱えて脱出ルートへ向かってる! でも……内部ドックのメインシャッターが崩落して落盤を起こしたわ! ヴィヴァーチェの出力じゃ、この巨大な瓦礫を撤去できないの!!』
「落盤……!? チッ、ヘボい要塞だな! 今すぐ俺が引っぺがしてやる!」
ゼロはウイングエックスのスラスターを全開にし、要塞内部への緊急搬入路へと急降下した。
だが、救援に向かうゼロの眼前に立ち塞がったのは、崩れ落ちた数千トンに及ぶ高密度チタン合金の装甲板と、要塞の残存防衛メカ――『アイアングローム』の残党だった。
『侵入者の脱出を阻止。要塞自爆シークエンス、最終段階へ移行』
「おいおい、空気読めよルカス軍のポンコツども! 忙しい時に邪魔すんじゃねえッ!!」
ゼロは生意気な減らず口を叩きながら、右手のビーム・ライフルを連射。しかし、要塞の自爆カウントダウンが迫る焦りと、煙に遮られた視界により、敵の分厚い耐ビーム装甲を弾き返すにとどまる。
(くそっ……! ライフルやサーベルでちまちまやってる時間はない! 早くあの巨大な瓦礫を取り除かなきゃ、セレスたちが中に閉じ込められたまま基地ごと吹き飛ぶ……!)
ゼロはコクピットのセンサーを最大まで拡大し、要塞を塞ぐ巨大な落盤を見据えた。
(あんなデカい瓦礫でも、ジャンク屋の長年の勘があれば……一番脆い「破壊ポイント」が見えるはずだ! そこにハモニカ砲をぶち込めば、中の二人を巻き込まずに瓦礫だけを吹き飛ばせる……!)
だが、ゼロの眼前に広がるのは、猛烈な黒煙と燃え盛る炎の壁だった。
高度な光波センサーすらノイズで狂い、カメラ映像は赤と黒の混沌に包まれている。どこが装甲の継ぎ目で、どこに構造の歪みがあるのか、長年ジャンクを漁ってきたゼロの鋭い直感をもってしても、全く見極めることができない。
「見えねえ……!? 煙と炎が邪魔で、勘が働かねえ……ッ!」
焦燥の汗が額を伝い、目に入る。残された時間は、もう1分もない。
このまま適当にハモニカ砲を撃てば、すぐ裏にいるセレスやノアまで木端微塵だ。
(ジャンク屋の勘がダメなら……頼る手段は、ひとつしかねえだろ)
ゼロは視線を、サブモニターに表示されている『ゼロシステム緩和装置』のインジケーターに向けた。
ガドルフたちが付けてくれたこの制御システムは、ゼロの脳を守るためにシステムの出力を安全域に抑制している。だが、その制限された状態では、この混沌の中から「唯一の正解」を弾き出すことなど不可能だった。
「ゼロ! 無理に入るな! 内部の全壊に巻き込まれるぞ!」
通信越しに、アルヴィスの警告が届く。
「へっ……アルヴィス、お前は黙って見てな! 誰がここで諦めるかよ!!」
ゼロの表情から生意気な笑みが消え、鋭く、本気の眼差しへと変わった。
ゼロは操縦桿から片手を離すと、コクピットのサイドパネルにある緩和装置の物理制御コードとヒューズボックスへ手を伸ばした。
「ガドルフのじいさん、リンの姉ちゃん……せっかく作ってくれたのに、ごめんな……!」
バチバチッ!!
ゼロは自らの手で制御コードを力任せに引き抜き、リミッターを完全に遮断した。
ピッ……ppppppppppppppp―――――!!
耳朶を裂く不気味な高音の警告音がコクピット内に満ち、メインモニターの全UIが鮮烈な赤へと塗り替えられる。
《 ZEROSYSTEM STANDBY 》
《 LIMITER CUT: OVERLOAD 》
「ぐああぁぁぁぁぁぁぁッ────!!!!」
絶叫。
リミッターが外れたゼロシステムは、途方もない膨大な未来予測データをダイレクトにゼロの脳内へ叩き込んできた。
視界が血の赤に染まり、目と耳から血の筋が垂れる。脳を直接灼熱の鉄串で焼き刺されるような激痛。数億通りの敗北と死の映像が、狂気となって意識を侵食していく。
(痛ぇ……脳みそが弾けそうだ……! だが……見えたぜ!!)
ゼロは血の混じった唾を吐き捨て、狂気の世界の中から「瓦礫の最弱点」の座標を力ずくで手繰り寄せた。
「そこだあああッ!!」
ウイングエックス・ディバイダーが神業のような精度で動く。
背部からホールドした『ディバイダー』を、システムが弾き出した「寸分違わぬ角度」へ固定。
「ハモニカ砲……照射!!」
赤紫色の多重ビームが放たれた。光線は崩落した瓦礫の「分子構造の歪み」へ正確無比に突き刺さり、内部の圧力だけを解放するように、数千トンの高密度装甲板を綺麗に外側へ弾き飛ばした。中の二人に衝撃波すら届いていない。
「……嘘でしょ……!? この瓦礫だけを粉砕したの……!?」
ヴィヴァーチェのコクピットで、セレスが驚愕する。
「へっ……遅ぇんだよ、セレス! 早く乗れっ!!」
炎の隙間から飛び出したウイングエックスは、力強くヴィヴァーチェの右腕をガシッと掴み引き寄せた。
「上から天井が落ちてくるわ!」
ノアが叫ぶ。
「任せとけ!!」
ゼロはウイングエックスの背部から『ディバイダー』をシールドとして前面に構え直した。
上空から降り注ぐ巨大な瓦礫や鉄骨の濁流を、頑強なディバイダーの装甲で力まかせに防ぎ止める。ガガガガッ!と凄まじい火花が散り、激しい衝撃が機体を揺らすが、ゼロはヴィヴァーチェの腕を絶対に離さなかった。
「行くぞおぁぁぁッ!!」
スラスターを限界まで吹かし、上空からの落下物をディバイダーで弾き返しながら、ウイングエックスはヴィヴァーチェを引き連れて崩壊する要塞の出口へと一直線に突き抜けた。
ドカーーーンッ!!
直後、要塞ヘリオスは大爆発を起こし、天を突く火柱と共に完全な沈黙を迎えた。
崩れ去る炎の墓標を背に、荒野へと脱出を果たしたガンダムたち。
「ハァ……ハァ……やったぜ……」
限界突破の代償により、ウイングエックスのコクピットでゼロは意識を失い、操縦桿の上に崩れ落ちた。だが、その口元には、どこか誇らしげな生意気な笑みが残されていた。
**次回予告**
要塞ヘリオスの崩壊と共に、奇跡の脱出を果たしたゼスト一行。
ノアが命がけで解析したデータから浮かび上がったのは、世界を裏から操る中央政府の『真の黒幕』の存在だった。
ゼロシステム突破の重い代償に倒れたゼロを支え、仲間たちは次なる戦いへと絆を深めていく!
そして、一時的な共闘を終えたアルヴィスが、ついに決断の時を迎える――!
「俺たちの戦いは、まだ終わっちゃいねえ……この光を、世界中に響かせてやる!」
次回、『響け自由のタクト』
**「たとえどんな暗闇が訪れようと、俺たちの指揮棒(タクト)は止まらねぇ!!」**
コメント
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みぅだよ🥀 第56話、めっちゃ熱かった…! ゼロがリミッターを自ら引きちぎって脳を焼きながら瓦礫を撃ち抜くシーン、もう痛いほど伝わってきたよ…。ガドルフたちに「ごめんな」って謝る台詞が、ゼロの優しさと覚悟の両方を感じさせてグッと来た。意識を失っても笑みを残してるところが、彼の生き様そのものだね。次回、アルヴィスの決断がどう転ぶのか、すごく気になる…!