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そこエビ@活動休止
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## 第57話:『響け自由のタクト』
要塞ヘリオスが荒野の露と消えてから数時間。移動母艦ゼストの内部は、静まり返った重苦しい空気に包まれていた。
無事に救出されたセレスとノアだったが、激戦の代償は大きく、艦内の医療室では静かな機械の動作音だけが規則正しく響いていた。
「うん……バイタルは安定しているよ。脳波のスパイクも収まってきた。命に別状はないから、安心して大丈夫だ」
ベッドの脇に置かれたモニタリング装置の数値を優しく確かめながら、艦の主治医であるバルトが穏やかな声で告げた。温厚で思慮深い大人である彼の落ち着いた佇まいは、緊迫していた室内の空気をふっと和らげる。
「バルト先生……本当に、大丈夫なんですか? ゼロはあんなに激しい血を流して……」
不安そうにベッドのゼロを見つめるのは、ミラだった。
「ああ、外傷そのものは大したことはないんだ。ただ……ゼロシステムの負荷に脳が耐えきれなくなって、自己防衛のために一時的に意識をシャットダウン(遮断)している状態なんだよ。膨大な情報を処理しすぎて、脳が強い疲労状態にある。彼が自力で目を覚ますまで、静かに休ませてあげよう」
バルトはゼロの額に貼られた冷却シートの位置を丁寧に整えると、優しく微笑みながらミラたちの肩をそっと叩いた。
パイプ椅子に腰掛け、腕を組んだままじっとゼロの眠り顔を見つめていたセレスが、小さく息を吐き出す。
「本当、バカなんだから……。緩和装置を自分で引き抜くなんて、無茶にも程があるわ」
言葉とは裏腹に、セレスの目元にはゼロが無事だったことへの深い安堵と、自分たちを救うために命をかけた彼への感謝が滲んでいた。
壁際に静かに佇んでいたアルヴィスも、緑の瞳をゼロに向けたまま低く呟く。
「……無茶だが、あいつでなければ全員助からなかったのも事実だ。命を賭して仲間を護る……口だけの男ではないな」
「私……すごく怖かったんです」
ミラがぽつりと絞り出すように呟いた。
「ブリッジからウイングエックスを見ていた時……ううん、それだけじゃなくて。ゼロがリミッターを外した瞬間、私……ニュータイプの勘みたいなもので、ほんの少し先の未来が見えた気がして……。ゼロの心が真っ赤な光に呑み込まれて、そのまま戻ってこられなくなるような、そんな恐ろしい予感がして……!」
小さな肩を震わせるミラの手を、セレスが優しく包み込む。
「ミラ……大丈夫よ。ゼロはちゃんと戻ってきたわ。あいつは頑丈だし、何より私たちを置いて逝くような奴じゃないもの」
医療室の温かい沈黙の中で、仲間たちは眠るゼロを見守り続けていた。
一方、ゼストのブリッジは、張り詰めた緊張感に満ちていた。
中央のメインモニターには、ノアが要塞ヘリオスから命がけで持ち帰った「調律計画」のコアデータが展開されている。
「……ハァ、ったく。命がけで拾ってきたっていうのに、暗号化の段階がいくつ重なってると思ってんのよ。少しは骨のある暗号を解く楽しみを残しなさいよ、ルカスのポンコツ技術陣」
コンソールを高速で叩きながら、トゲのある口調で毒づくのはノアだ。不満を口にしながらも、彼女の指先は寸分の狂いもなく複雑なプロテクトを破っていく。
「ノア、無理は言わんが……何が見えてきた?」
艦長が重厚な声で問いかける。
ブリッジには、怪我から復帰したジュードと、その横で彼を支えるカイル、そして3人のオペレーターたちが固唾をのんでモニターを見つめていた。
「文句なら解読が終わってからにして。……はい、ファイナルプロテクト解除。画面に送るわ」
ノアがエンターキーを強く叩くと、メインモニターの暗号群が一瞬で書き換わり、膨大な組織図と極秘文書が映し出された。
「これは……中央政府の最高幹部層『調律評議会』のリスト……!?」
オペレーターの一人が息を呑む。
「そうよ」とノアが冷ややかに冷笑する。「私たちが戦ってきたルカスなんて、ただの地方の捨て駒に過ぎなかったってワケ。この『調律計画』の本当の目的は、全世界のインフラと通信ネットワークを『ゼロシステム』の派生OSで一元管理し、人類の全思想と行動を先回りして統制すること。そして、その引き金を握っている真の黒幕は――中央政府の頂点に君臨する『アルトリウス提督』と、その背後のエリート層よ」
「世界を……裏から完全に調律し、支配する計画……」
ジュードが義手に近いサイバネティクスを施された拳を強く握りしめた。
「ヘリオス基地はそのための大規模中継局に過ぎなかったというわけか」
「ええ。でも、このデータのおかげで、彼らの本拠地である首都要塞『ゼニス』の防衛網の弱点と、計画の最終フェーズのスケジュールが丸裸になったわ。ゼロが命を張った甲斐くらいはあったんじゃない?」
ノアの言葉に、ブリッジの面々は静かに頷いた。ついに彼らは、世界を蝕む「真の敵」の首元に手をかける鍵を手に入れたのだ。
データ解析が一段落した頃、医療室の扉が静かに開き、アルヴィスがブリッジへと歩み出てきた。
その整った顔立ちには、ひとつの明確な決意が宿っていた。
「艦長。少し時間をいただきたい」
アルヴィスは艦長の前に進み出ると、深々と一礼した。
「ヘリオス基地の破壊、そして『調律計画』のデータ回収。当初の目的であった一時的な共闘協定は、これをもって完了したと認識している」
「アルヴィス……お前、去るつもりか?」
ジュードが静かに問いかける。
「ああ。俺の目的は、我が一族を陥れ、世界を歪めようとする真の黒幕を突き止めることだった。そして今、ノアの解析によって標的が『アルトリウス』だと判明した。ならば、俺は俺のやり方で奴らを討つ」
アルヴィスは腰の飾りに手をやりながら、言葉を続けた。
「ゼストの諸君には感謝している。ゼロをはじめ、君たちの戦う姿勢は……俺の偏見を捨てさせるに十分だった。だが、俺は自らの機体『アルカディア』と共に、独立した戦力として行動する。それが、我が誇りに賭けた道だ」
「独立して戦う、ね……。孤立無援で中央の首都要塞に挑むつもり?」
ブリッジに移動してきたノアが、相変わらずトゲのある口調で呆れたように息を吐く。
「無謀と笑いたければ笑うがいい。だが、俺には覚悟がある」
「……ふん、誰も無謀なんて言ってないでしょ」
ノアは画面から視線を外さずに言った。
「首都要塞『ゼニス』の防衛網は強固よ。ゼスト一艦で突撃するより、外から揺さぶりをかけてくれる別動隊がいた方が、こちらとしてもデータの利用価値が上がるって言いたいの」
「ノア……」
カイルが苦笑いしながら彼女を見る。
艦長は静かに歩み寄り、アルヴィスに向かって右手を差し出した。
「アルヴィス。我々の目指す先が同じである限り、戦線が分かれようとも我々は『同盟』だ。君の誇り高き戦いに、勝利があらんことを」
「……感謝する、艦長」
アルヴィスはその手を強く握り返した。
その時、ブリッジの自動ドアが開き、頭に包帯を巻いたゼロがセレスに肩を貸されながら姿を現した。
「おいおい……俺抜きでカッコいいお別れ会やってんじゃねえよ」
「ゼロ! もう動いて大丈夫なのですか!?」
バルトが慌てて後ろから追いかけてくるが、ゼロはいつもの生意気なニシシという笑みを浮かべていた。
「へっ……脳みそがちょっとシビれてただけだっつの。それよりアルヴィス……お前、先に行く気かよ?」
「ゼロ……フッ、相変わらずしぶとい男だな」
アルヴィスは口元に微かな微笑を浮かべた。
「先に行かせてもらう。首都要塞で、お前たちが遅れてやってくるのを待っているぞ」
「言っとくがな、一番手柄を挙げるのは俺とウイングエックスだ! 横取りすんじゃねえぞ、エメラルドの坊ちゃん!」
「言わせておけば……絶対に譲らん!」
背中を向け、ブリッジを去っていくアルヴィスの後ろ姿を、ゼロたちは誇らしく見送った。
ヘリオスの戦いは終わった。しかし、真の敵『調律評議会』との決戦という、さらに巨大な波濤がゼストを待ち受けている。
仲間たちの絆を胸に、彼らの自由を求める指揮棒(タクト)は、新たなる戦場へと未来のメロディを奏で始めるのだった。
**次回予告**
アルヴィスとの別れを経て、ゼストは真の黒幕『調律評議会』が待つ首都要塞ゼニスへと針路をとる。
ノアの解析データをもとに、最終決戦の作戦を練る一行。
だがその裏で、復活を果たしたルカスが、過酷な強化手術を受けた試作機を駆り、執念の復讐劇を開始する!
「俺の誇りを踏みにじった奴らを……絶対に許さん!!」
次回、『決意の十字路』
**「たとえ運命が交差しようとも、俺たちの進む道はひとつだけだ!!」**
コメント
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戦いが終わってひと息つけるかと思いきや、真の黒幕が判明して一気に世界のスケールが広がったな…! ゼロがリミッター外して無理する姿は毎回胸が痛むけど、ミラの「未来が見えた気がした」ってシーンがすごく切なかった。アルヴィスとの別れもカッコよかったし、ゼロが「一番手柄は俺」って言い返すところで思わず笑ったわ。次はゼニス決戦か…続きが待ちきれない🔥