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俺、ゾムはいつもどおり街を歩いていた。
幹部の城に入るために。
zm「…ん、ここまだあったんや…」
shp『………。……パン屋っすか?』
zm「そ。買って帰るわー」
俺は、大きくあくびをしながら空を見上げる。灰色に濁った雲。
あー…今日は雨降るなぁ…
そんなことを考えながら城がある森に来る。
一応整地したあとは見えるが、歩きやすくなったわけでもない。あえてこうしているのか、面倒くさかったのかはわからないが、普通に怪我の可能性がある。
坂を登れば大きな城。普通は庭園だとかがあるのだが、ここはちょっと違うらしい。
木々が開けてすぐに見える門。監視室のある部屋まで、外から周り、窓まで飛ぶ。
shp『……監視の人昨日と違う…鬱…か』
zm「鬱ね〜了解。入ってええやろ?1人っぽいし」
窓から様子をみると、本当に1人で、鬱はタバコを吸っていた。
zm「…臭そ…」
窓の鍵はもちろん閉まっているだろう。
こういう時、今まで俺は能力をこっそりと使ってきた。
ギュルル…と生成された小さな爆弾。
これは最近手に入れた技術で、爆発する時の音を最小限まで小さくしたものだ。でも威力は十分。
俺も成長したな…フフ…なんて、しみじみと感じる。
ぽんっと可愛い音を立てて爆発すると鍵が壊れる。なんで外にも鍵つけてるんやろ…。
ま、そんなことは置いといて、バレない程度にほんのちょっとだけ窓を開ける。
耳をすませば、会話。独り言にも聞こえるが、何やら鬱が喋っていた。
ut「……ふー…寝起きにやるような仕事ちゃうでほんま…。………いいよなぁチーノは。外歩いてればええんやから。……………いや…俺食すら許されへんねん。ロボロも今資料庫におるから離れられ……ちょっとごめん」
こっちを見る。
ut「誰?」
zm「ーーー…誰やろなぁ」
気づくんや。今の。そんな鋭い奴じゃないと思うけど。
俺はすとん、と降りる。
ut「ぁ………」
zm「おはようございまーす」
ut「……緑のフード」
そう呟くと、鬱は立ち上がる。
あ、これはもしや…センサー起動しちゃったか?
shp『首トンってすると死ぬからやめてくださいよ』
煽ってんなぁ…流石に知ってるよ…。
ここは力ずくかぁ…?
一歩踏み出し、俺より若干背の高い鬱の目の前に立つ。
俺は、ポケットから出した銃を彼の首に当てた。
ut「…なんや」
zm「ついてきて」
ut「……………」
鬱は、黙ったまま俺の目を見つめる…というよりは、観察している。
あー…これは無理やな…
そう思った俺は、銃を当てたまま鬱の腹を抱えた。
ut「ちょ、ぉッ…お前…ッ!」
彼は、目を見開けば俺の腕を掴み、抜けようとする。
zm「すまんな」
shp『そのまま部屋を出ていいっすよ』
ut「ッ離せ…」
俺の腕を掴み必死で抵抗する。
zm「あー暴れない暴れない」
腕から抜けられる前に降りるか……
zm「よし。行くで」
廊下から、何人かが走ってくる音がする。
俺は窓枠から足を外し、2階という高さから飛び降りた。
ut「え゛っ!?」
zm「あとで返すから大人しくしてな」
shp『飛んでることバレないように』
地面に足がついたかと思うと、上からナイフが降ってきた。
シュッ
zm「っ……」
避けきれず、頬をかする。
zm「あぶねぇな…鬱に当たったらどうすんねん…」
鬱を抱えて俺が向かった場所は、借りている部屋ーーーではなく、以前この国の森で見つけた地下みたいなところに行く。潜入する時はこっちに移動しようかな、とか最近は考えていた。
ut「あ…あの…?僕は何かしましたか?」
先ほどのあの視線とは違って、弱気に話しかけられる。なんや、冷静キャラかと思ったら表面だけか。
zm「いやいや、殺すとか監禁とかはしませんよ」
ut「そう…なんや…?」
諦めたのか逃げようとしないので、掴んでいた手を離す。
zm「ん…眩し…」
もう昼か…ちょうど入り口から入ってきた日差しが強いせいで、思わずフードを深くかぶる
== ut ==
もっとはやく謎の地下通路を埋めておくべきだったか。今はそう後悔している。
実はちょっと話し合いで出ていた。「あの地下について誰か知ってる?」って。俺もこの国来て6年くらい経つんやけど、ここは知らんかったなぁ。
そんな呑気なこと考えていたら悪用されてもうた…
俺、鬱は最近うちの幹部に潜入する男に捕まってしまった。
あの状況でシンプルに飛び降りたってことは、能力持ちではないのかもしれない。
あたりを見回せば、木のテーブルと木製の椅子。本だとかもあるし、……あれっ?あの宝石グルちゃんのやつじゃない?めっちゃ飾ってんじゃん。前地下に入った時は結構汚かったんだけど、だいぶ綺麗にしたな…ってね。
…と、向こうから靴の音がした。
shp「おかえりなさい」
低い声。…いや、表現としては冷ややかな声……が正しいのだろうか。
zm「ただいま」
緑の男が向けた声の方を見ると、そこにはヘルメットを被った、ふわふわがついているジャケットを着た、青年…と呼ぶべきだろう。
俺の目の前にくると、俺を見上げる形で、会釈した。
shp「どうも」
zm「座ってええよ」
俺は緑の方に言われるがまま、目の前にあった木製のスツールに腰を下ろす。
shp「幹部の方に聞きたいことがあったので」
そう言って紫の子が俺の目の前にくる。椅子に座れば、まっすぐに俺のことを見た。
shp「鍵の場所は?」
数秒俺の目を見つめる。奇妙な違和感のある圧を感じる。
ut「……言うわけないやろ」
一瞬目を細めれば、小さくため息をついた。
shp「やっぱそうっすよねー。…ま、見当はついてるからええんやけど…」
ut「……………」
脅しではなく、本気で言っているのだろう。
彼は、俺のことを下に見ている。それ以外の感情はわからない。
ut「………それだけか?」
shp「まあ…はい。どうぞ、そっちもなんかあるんやったら」
ut「あー……せやなぁ…」
ふう、と紫の子が俺から目をはなす。
shp「どうぞ」
室内が静まったことを感じ取れば、ゆっくりと口をひらく。
ut「お前らは2人でやってるんか」
shp「はい」
ut「名前は」
shp「ゾムさんです」
ut「……お前は」
そう訊くと、彼は一瞬言葉を詰まらせた。気のせいかと思った時には「んー…」と考えるそぶりを見せ、右手の人差し指を立てる。
shp「ーーーひみつ」
目を閉じ、立てた人差し指を、彼は唇に添える。
ut「……目的は」
ぴくっ、と彼の肩が動いた。
shp「えぇ〜、、?」
ちらっと紫の子がゾムの方に視線を動かすと、ゾムは入り口から見える空に視線を向けていた。入り口からは太陽が見える、どうやらもう昼らしい。
zm「…趣味とか言っとけ」
shp「じゃあ趣味です」
ut「……。趣味やったら…俺らを巻き込まないでほしいんやけど」
じゃあ、と俺の言葉を遮って続ける。
zm「『怪盗ごっこ』。どうや」
そんな彼に俺は軽く嘲笑した。
なんか、もうどうでもいい気がしてくる。
zm「変なやつか?」
ut「……せやな」
ふははっ、とゾムが笑う。
zm「…wもうええよ…あ、送るで、この子が」
shp「は?ゾムさんがやればいいじゃないですか」
zm「俺パン買ってへんねん」
shp「覚えてたんすね」
朝はパン派です(小麦100%米0%)
次回もよろしくお願いします