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真夜中。
城の中は静かで、外の風の音だけが遠く響いている。
「……っ」
Pizza guyは浅い呼吸のまま、ベッドの上で目を開けた。
眠れない。
熱い。
「……なんだ、これ」
ぼんやりした頭で首に触れる。
牙痕の残る場所。
そこだけが妙に熱を持っていた。
むず痒い。
皮膚の奥を、何かが這っているみたいに。
「……っ」
指先で軽く掻く。
その瞬間。
「……ん」
小さく息が漏れた。
「……は?」
自分で固まる。
呼吸が、妙に荒い。
首を触っただけなのに、
ぞわ、と背筋に熱が走る。
「……なんだよこれ」
もう一度、恐る恐る触れる。
指先が傷跡をなぞる。
「あ……っ」
今度は、はっきり声が出た。
自分でも分かるくらい、甘い声だった。
「……っ」
青ざめる。
慌てて口を押さえる。
心臓が速い。
頭がぼうっとする。
「……冗談だろ」
あの時。
首から吸われた後からだ。
あの痺れる感覚。
力が抜ける感覚。
思い出しただけで、
喉の奥が熱くなる。
「……っ」
また首を掻きそうになって、止める。
駄目だ。
これ以上やったら、
本当におかしくなる。
「……」
なのに。
脳のどこかが、
“もう一回噛まれれば楽になる”
と囁いていた。
「……クソ」
翌日。
台所。
ノスフェラトゥはいつものように静かに立っていた。
「……」
Pizza guyは落ち着かない。
首が気になる。
熱い。
無意識に指がそこへ行く。
掻く。
「……ん……っ」
小さく声が漏れた。
しまった、と思った時には遅い。
空気が止まる。
「……」
ノスフェラトゥの視線が、ゆっくり上がる。
赤い瞳。
まっすぐ首元を見る。
「……」
Pizzaguyは慌てて手を離す。
「……今のなし」
「無理だ」
即答。
顔が熱い。
最悪だった。
また指先が勝手に動く。
「……っ」
その手首を掴まれる。
「刺激を与えるともっと酷くなる」
ノスフェラトゥは静かに言う。
その声が妙に落ち着いていて、
逆に腹が立つ。
「……なんなんだよ、これ」
Pizza guyは眉を寄せる。
「首が熱くて……変になる」
「……」
ノスフェラトゥは少しだけ黙る。
「吸血鬼の唾液だ」
「……は?」
「痛みを和らげる代わりに、人間の神経を鈍らせる」
淡々とした声。
「依存性もある」
「……なら何とかしろ」
思わず言ってしまう。
息が少し荒い。
「お前のせいだろ」
「……」
沈黙。
「……吸えば治るんだろ」
半分やけくそだった。
自分でも何を言ってるのか分からない。
ただ。
頭の奥で、
“あの感覚”を求めてしまっている。
「……」
ノスフェラトゥは首元を見る。
牙痕の周囲。
細い引っ掻き傷がいくつも残っていた。
「……今、吸えば」
低く言う。
「もっと依存する」
「……っ」
Pizza guyは掴まれた腕を振り払おうとするが、
更に強く掴まれる。
「だから、牙は使わない」
「……?」
その瞬間。
冷たい指が首に触れる。
びくりと震える。
「……じっとしていろ」
そして。
ノスフェラトゥは、以前の牙痕へゆっくり口を寄せる。
牙は立てない。
噛まない。
ただ。
軽く吸う。
「――っ」
一気に力が抜けた。
熱が流れていく。
むず痒さが、甘く痺れる感覚へ変わる。
「あ……っ、ぅ……」
肩が震える。
呼吸が乱れる。
「……」
ノスフェラトゥは静かだった。
落ち着かせるみたいに。
深くはしない。
ただ、少しずつ。
「……っ」
Pizza guyは自分の腕で目を覆う。
情けないくらい反応しているのが分かる。
悔しい。
でも。
止まる。
さっきまでの苦しさが。
「……は……」
力が抜ける。
「……しばらく経てば」
低い声。
「毒は体に馴染む」
「……毒って言うなよ」
かすれた声で返す。
「怖ぇだろ」
「事実だ」
すぐに返す。
「……最悪だ」
さっきよりずっと楽になっている。
でも。
思わず体が寄る。
無意識に。
「……」
Pizza guyも分かっていた。
これは一時しのぎだ。
根本的には何も解決していない。
むしろ。
「……」
“欲しい”と覚え始めている。
体が。
首が。
あの感覚を。
「……」
ノスフェラトゥも気づいている。
だから吸わない。
吸えば、もっと深く沈む。
もう戻れなくなる。
「……」
静かな台所。
互いの呼吸だけが残る。
そして二人とも、
同じことを理解していた。
これは――
飢えより厄介な依存の始まりだと。
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