宮舘が風邪を引いた。
超がつくほど健康だと思っていたのにと、渡辺は朝から慌てている。
💙え?氷枕?それより薬?えーとえーと
❤️翔太、とりあえず体温計持って来て
掠れた声で、宮舘が言う。
そう言われても渡辺には体温計のありかがわからない。
いつも自分より早起きなのに、隣りでうんうん唸ってるのを見て、試しに額に手を当ててみたらこの騒ぎ。
宮舘が自力でふらふらと起き上がって、よたよた体温計を持ってくるのを渡辺は見ているしかない。
くそ、何やってんだ俺は。
渡辺は宮舘と対照的によく体調を崩す。
そのたびに宮舘は完璧に渡辺をケアをしてみせ、仕事に一切影響を与えさせなかった。
それに引き換え自分はこの体たらく。
この小一時間、あたふたしかしてないことに渡辺は少し落ち込んだ。
❤️…全然大したことない
💙嘘つけ。ちょっと見せてみろ
渡辺は宮舘から体温計を奪う。
デジタルの数字は、38.5と表示されていた。
💙めちゃくちゃ熱あるじゃねーか
普段35度台の渡辺からしたら、見ただけで頭がくらくらしてくるような高熱だ。
❤️心配しなくていいよ。寝てれば治るから…こほっ
宮舘は背を向けた。
❤️それよりうつるといけないから、翔太は自分の家に帰って
💙は?
❤️まだ荷物持っていけば泊まれるでしょ。治るまでは別々の方がいいから…ごほっ
言葉を言い終わるか言い終わらないうちに、宮舘は激しく咳き込んだ。
しかし、仕事の時間も迫っている。
渡辺は後ろ髪を引かれる思いで自分だけ仕事へ向かった。
💛舘さん、風邪引いたって
🧡珍しなあ。超健康優良児って感じやのに
現場に着くと、既に連絡があったのか、メンバーが宮舘の体調不良について心配している。
🤍みんなで後でお見舞いでも行く?
💚体調悪いのにそれは迷惑でしょ
🤍確かに。早く良くなるといいね
会話はそこでいったん終わり、渡辺は見舞いの話が流れたのでほっと胸を撫で下ろした。
どちらにせよ今日は早く帰ろう。
できるだけのことはしてやらなければ。
渡辺はその日の撮影が押しそうになるたびにイライラし、終わったと同時に楽屋を飛び出した。
🧡しょっぴー、どうしたんやろ
💚今日はやけに急いでたね。
そんな渡辺にメンバーは揃って首を傾げていた。
💙さて、と
渡辺は帰りがけにドラッグストアとスーパーのはしごをしようと決める。
まずはドラッグストアだ。
💙えーと。頭冷やすやつと風邪薬…薬は…どれだ???
目当ての薬品が並ぶ棚には、多種多様の薬がずらりと並んでいる。 症状によって種類が異なり、形態も錠剤やカプセルに粉薬、さらに液体タイプもある。
💙わかんねー…
渡辺はさっそく途方に暮れた。
いつも人に面倒を見てもらうばかりで、自分から他人の世話などしたことがないのだ。
💙そもそもあいつどんな症状だったっけ…
渡辺は朝起きた時の宮舘の状況を思い出してみる。
💙確か、目が覚めたら真っ赤な顔してたんだよな。で、頭触ったら熱くて…あ、熱?熱がある。あと、咳もしてた。寒気…とかはわからないけど、怠そうではあったような…?
渡辺が一人でいつまでも陳列棚の前でぶつぶつ言っていたら、見兼ねた薬剤師に声を掛けられてしまった。
「お客様のお薬ですか?」
💙あ。違うんです、ちょっとその…同居人が
薬剤師は、その言い方で何かを察したのか、親身になって相談に乗ってくれ、なんとかドラッグストアでの買い物を終えた。
💙次はスーパー…何か食えるもんあるかな…?
渡辺は自分の看病の時に宮舘がよく作ってくれる洋風おじやを思い出す。
あれ、美味いんだよな…。
💙よし。やってみるか
そして記憶を頼りに買い物を済ませた。
❤️ん……
宮舘が目を覚ますと、半開きのドアから何かが焦げるような臭いがし、渡辺の悲痛な声が聞こえた。
ゆっくりと起き上がり、カーディガンを羽織って、ふらつく足でキッチンへ向かう。
💙なんで写真みたいにならないんだよっ!
渡辺は手元の携帯に向かって文句を言っている。
おそらくレシピサイトでも見ているのだろう。渡辺は料理に夢中になっていて、宮舘にはまったく気づいていない。
❤️翔太、何してるの?
💙あっ!涼太!!
渡辺は顔を上げた。
💙いいから寝てろよ。後でそっちに持ってくから
❤️いや、焦げてる臭いしてるし
宮舘は渡辺の手元の真っ黒な鍋にため息をついた。
💙これは…ちょっと失敗して
❤️焦げた鍋洗うの結構大変なんだよ?
💙それは…ごめん。でも、
❤️帰ってって言ったよね?
💙………
❤️翔太。俺、早く治したいから
💙んだよ
❤️翔太?
💙俺がいると邪魔なのかよ
❤️そういう意味じゃ…
みるみる機嫌が悪くなる渡辺を宥めようとした時、宮舘は強い目眩に襲われた。
そして、そのままキッチンの床に倒れ込んでしまった。
遠くで渡辺の自分を呼ぶ声が聞こえた気がしたが、そのまま宮舘の意識はふっつりと途切れた。
渡辺はなんとか宮舘をリビングまで引きずって来たものの、持ち上げることができない。
腕も疲れた。
💙俺の力じゃこれ以上涼太を運べない…
寝室から毛布を持って来て、せめて宮舘に掛けてやる。
💙次は……そうだ
それから、ぐちゃぐちゃになったキッチンを片付ける。
やはり料理は鬼門だ。
レトルトでいいから今度は簡単なものにしよう。
そう反省して、鍋についた焦げを必死で削ぐ。
💙確かに…力が要るな…っ
腕がつりそうになりながら、必死に磨き続け、時間を掛けてなんとか鍋も元通りにした。
戻ってそっと宮舘の様子を窺う。
💙あつっ…
おでこを触るとさらに熱が上がっている感じがした。
渡辺は薬剤師に教えてもらったおすすめの解熱剤と水を一緒に自分の口に含んで、宮舘に飲ませた。
💙これでいいだろ
そこまでするとすっかり疲れ切ってしまい、宮舘の横に添い寝した。
❤️翔太?
宮舘がようやく目を覚ますと、体には毛布が掛けられている。
一体どれぐらい寝ていたのだろう。
気のせいか、いくらか頭がスッキリしていた。
見ると、隣りには渡辺が寝ている。
二人してカーペットの上で横になっていたようだ。
渡辺を撫でていたら、目が開いた。
💙りょうた…具合は?
❤️もう大分良いみたい
💙そっか…立てそうか?
❤️大丈夫
💙ここ体痛いから、ベッドで寝よ…
渡辺は欠伸をして自分の肩を揉みながら寝室へ入って行った。
宮舘は思い出し、キッチンに立ち寄る。
鍋も含めてシンクも綺麗に掃除されていた。
色々と大人気がなかったなと反省し、 渡辺に謝ろうと追いかけたら、 もう本人は布団に潜り込んで眠っていた。
時刻は深夜の2時を回っている。
このままよく休めば自分も明日は仕事に出られそうだ。
❤️ありがとう
宮舘は眠る渡辺の頬にキスをした。
翌朝。
💙さささむい…
ベッドの中で渡辺がぶるぶる震えている。
❤️やっぱりうつしちゃったか。
💙りょうたぁ、たすけてぇ……
❤️はいはい
熱に浮かされ涙目になっている渡辺を見て、やはり自分は守られるより守る方が性に合っているなと宮舘は思った。
一生、翔太の面倒を見てやりたい。
寒気に震える渡辺は、そんなことを宮舘が思っていようなどとはまったく気づいてないだろう。
コメント
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しょっぴー頑張ったね💙
しょっぴー凄いじゃん!頑張ったね!でもできないのがしょっぴーだもんねぇ笑