アクアが意識不明になって1週間。
ルビーがなにやらビデオレターらしきものを持ってきた。
だいたい10枚位はある。
見てみればルビー宛のものやミヤコさん宛のものもあった。
アクアはどんなこと言ってたんだろう。
気になってすぐにビデオレターを持って帰り、再生した。
『…、多分、これを見てるってことはルビーあたりが俺の居ない間部屋から持ってきたんだろうな。』
『その時には無事に俺の復讐はもう終わったんだな。良かった。』
『この機会に言いたいことは全部言うつもりだ。』
『まず、散々有馬のことを振り回してすまない。思わせぶりな態度取ってたよな。』
『それに、有馬はそんなに好きでもない相手から言われてるようなものだし、俺のことはすんなり忘れてくれるだろうな。』
『……もし、俺が生きてたら…その時は叩いてくれても構わない。俺がやったのは、それくらい馬鹿な事だ。』
『さて、最後になったが…』
『ずっと有馬は俺にとって太陽みたいだった。有馬と居る時だけは、楽になれて……感謝してる。』
おそらくビデオレターはそこで途切れているはずだった。
アクアが切り忘れたのか、それはまだ続いた。
『……はぁ…死にたくない…っなんで、なんで俺だけ死ななきゃいけないんだ……、、』
『……っ…でも、これで…これでいい、さりなちゃんも、有馬も、あかねも……みんな幸せになったらそれでいいんだ、』
そこでぷつっと途切れた。
…アクアはどれだけの物を抱えてるんだろう。きっと私よりも、何十倍も大きい。
そりゃそうよね、母親が死んで、ずっと復讐にこだわってきて、PDSDまで患って…誰も巻き込まないで、独りで抱えて、あの素振りだと多分、ミヤコさんにもルビーにも言ってない。
……もう1枚ある。
私へ向けたビデオレターが。
でも、開ける勇気が私には無かった。
あいつが生きてるって、まだ信じたい。
これも見てしまうと、本当にアクアがいなくなったような気がするから。
あれから2ヶ月。
アクアにはミヤコさんとルビーが付きっきりで見ている。
私も行きたかったけど、あの二人は家族だからしょうがない。
私なんかよりずっとアクアのことを見てきてた。
だから1番最初はルビー達。2番目は絶対私。
1番がダメでも2番なら誰でもいいでしょ?
あんたが2番目に見るのは私。あかね達には譲らない。
そう思っていた頃。
「……はい、ミヤコさん。どうしました?」
ミヤコさんから電話が掛かってきた。
『お兄ちゃんが起きたのっ!!お兄ちゃ、お兄ちゃんが!!!』
ルビーの声がよく聞こえてきた。
その知らせを聞いて、急いで外に出る。タクシーに乗って、病院まで。
アクアが目覚めた。それだけで嬉しかった。
あんなビデオレターを残したこと。
死にたくないのにそんな無茶したこと。
自分がどれだけ愛されてるか自覚しなかったこと。
全部全部問い詰めてやるんだから。
私がどれだけ待ったと思ってるのよ、馬鹿。
ーーーー
ーアクアsideー
「ミヤコさん、頼むから離れてくれ……」
「えぇ、ごめんなさいね、、」
ミヤコさんは俺が起きたと分かった瞬間、飛びついて泣いた。
それから泣きながら色々言っていたが泣き声に侵食されすぎてもはやよく分からなくなった。
ルビーはナースコールを押して、誰かに電話を掛けた。
『ロリ先輩』って言ってたから多分有馬だろう。
ーかなsideー
「…アクア!」
「あ、有馬か。」
『有馬か。』じゃないわよ。
私がどれだけ心配したと思ってるのよ。
私がどれだけ傷付いたと思ってるのよ!!
「……まず。」
「?」
「アクアが生きててよかった、ずっと心配させて、、なんなのよ、」
「…すまない」
「あと!あんなビデオレター残して!あんたが居なくなること前提にして話してんじゃないわよ!!本当になんなのよ!!私があんたのことどれくらい好きだったと思ってるの!?あんたはもうちょっとみんなに愛されてる自覚ってものをねぇ…っ!!!」
最初はハキハキ言えてたものの、最後の方は今までの感情が爆発したのか、涙が止まらなくなった。
「かってに、しのうとするんじゃないわよ……」
「…すまない」
アクアに縋るように抱きつくと、アクアは私の頭を撫でてくれた。
いつもは器用に何でもこなす手が。
細くて華奢な綺麗に手入れされた手が、私の頭を優しい性格を表すように、落ち着かせるように撫でてくれる。
「…あんなビデオ残して、どういうつもりよ、」
「すまない、」
ほんと、大嫌いよ、
自分のこと大切にしないし、愛されてるのなんてまるで分かってない……
そんなあんたが大っ嫌いだけど、大好きよ。
周りの人を大切にして、誰よりも他の人のために動けて…そんなあんたが大好きなの。
コメント
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尊い
今回もアクアが尊い……