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月姫ミク@スパレイ

るる
430
#心霊
付き合い始めて一週間。
実瑠は重大な問題に直面していた。
「どうしよう。」
自室のベッドの上で頭を抱える。
恋人になった。
それはいい。
問題はその後だった。
恋人って何をするんだろう。
手を繋ぐ?
デートする?
毎日連絡する?
わからない。
恋愛経験ゼロの実瑠には難しすぎる問題だった。
そんな時だった。
スマホが震える。
一斗からのメッセージ。
『おはよう。』
実瑠は固まった。
付き合う前も連絡はしていた。
でも生徒会の連絡だけだった。
今は違う。
どう返せばいいのかわからない。
三分悩む。
五分悩む。
十分悩む。
結局。
『おはよう。』
だけ送った。
すると数秒後。
『返信きた。』
『当たり前でしょ。』
『嬉しい。』
『そう。』
送った後。
実瑠は枕に顔を埋めた。
なんなの。
付き合う前より恥ずかしい。
⸻
翌日の昼休み。
生徒会室。
玲奈はニヤニヤしていた。
ものすごくニヤニヤしていた。
「会長。」
「なに。」
「最近幸せそうですね。」
「気のせい。」
「気のせいじゃないです。」
「気のせい。」
「浜瀬先輩と付き合ってるからですか?」
実瑠は盛大にむせた。
玲奈は爆笑した。
「わかりやす!」
「うるさい!」
「会長かわいい!」
「うるさい!」
玲奈は楽しそうだった。
失恋したはずなのに。
それでも二人を応援してくれている。
そんな玲奈に実瑠は少しだけ感謝していた。
⸻
初デートは水族館だった。
待ち合わせ十分前。
実瑠はすでに到着していた。
落ち着かない。
制服ではない一斗を見るのも初めてだった。
すると。
「お待たせ。」
振り向く。
私服姿の一斗がいた。
白いシャツに黒いジャケット。
シンプルなのに妙に似合う。
「会長?」
「なに。」
「見すぎ。」
実瑠は慌てて目を逸らした。
「見てない。」
「見てた。」
「見てない。」
一斗は笑う。
その笑顔が悔しい。
⸻
水族館の中。
実瑠は意外と楽しんでいた。
クラゲ。
イルカ。
ペンギン。
どれもかわいい。
特にペンギンエリアでは立ち止まったまま動かなくなった。
「かわいい。」
思わず呟く。
「会長もそんな顔するんだ。」
「どんな顔。」
「楽しそうな顔。」
実瑠は少し照れた。
しかし。
今日は少しだけ素直になろうと思った。
本当に少しだけ。
「楽しいから。」
「へぇ。」
「……一斗といるし。」
言った瞬間だった。
一斗が固まる。
「え?」
「なに。」
「もう一回。」
「嫌。」
顔が熱い。
一斗は顔を覆った。
「反則。」
「何が。」
「そういうところ。」
実瑠は首を傾げた。
しかし耳が真っ赤になっているのは隠せていなかった。
⸻
昼食の時。
実瑠はハンバーグを注文した。
一斗はオムライス。
しばらく食べていると。
「一口食べる?」
一斗が聞いてくる。
「いらない。」
即答。
しかし。
少し気になった。
オムライス。
美味しそうだった。
その視線に気づいた一斗が笑う。
「食べたい?」
「別に。」
「はい。」
スプーンが差し出される。
実瑠は固まった。
「あーん。」
「しない。」
「なんで。」
「恥ずかしい。」
「恋人なのに。」
「恋人でも恥ずかしい。」
結局。
周囲を確認してから小さく食べた。
一斗は満足そうだった。
実瑠はしばらく顔を上げられなかった。
⸻
付き合って一ヶ月。
周囲にも少しずつ知られるようになった。
とはいえ。
二人とも目立つタイプではない。
実瑠は相変わらず生徒会長として忙しい。
一斗も進路で忙しい。
それでも。
放課後はなるべく一緒に帰った。
ある日の帰り道。
夕焼け空の下。
二人で歩いていた。
すると。
突然。
実瑠が一斗の制服の袖を掴んだ。
一斗は驚く。
付き合ってから初めてだった。
「どうした?」
「別に。」
離さない。
「別にじゃないでしょ。」
「……。」
しばらく黙った後。
実瑠は小さな声で言った。
「ちょっと。」
「うん。」
「手。」
「手?」
「繋ぎたい。」
一斗の思考が停止した。
実瑠も顔が真っ赤だった。
たぶん人生最大級に勇気を出している。
「会長。」
「なに。」
「それ反則。」
「だから何が。」
「かわいすぎる。」
「うるさい。」
実瑠は恥ずかしくなって離そうとした。
しかし。
その前に一斗が手を握る。
指を絡める。
恋人繋ぎだった。
「っ!」
実瑠は固まった。
「嫌だった?」
「……嫌じゃない。」
「よかった。」
一斗は笑う。
実瑠は顔を背ける。
しかし手は離さなかった。
⸻
春。
桜が咲く頃。
一斗の卒業式がやってきた。
式が終わった後。
校門の前には多くの女子が集まっていた。
写真。
プレゼント。
告白。
相変わらず人気者だった。
実瑠は少し離れた場所から見ていた。
すると。
一斗がこちらへ走ってくる。
「待った?」
「別に。」
「会長。」
「なに。」
「嫉妬した?」
実瑠は即答した。
「してない。」
しかし。
一斗は笑っている。
完全に見抜かれていた。
「してた。」
「してない。」
「してた。」
「してない。」
言い合いになる。
そして最後に。
実瑠は小さく呟いた。
「……ちょっとだけ。」
一斗は数秒固まった。
「会長。」
「なに。」
「反則。」
まただ。
実瑠は呆れる。
「そればっかり。」
「だって反則級に可愛いから。」
一斗は照れながら笑った。
付き合う前は気づかなかった。
付き合った後も普段はツンツンしている。
なのに。
たまに見せる素直な姿だけは誰よりも破壊力があった。
そして。
そんな実瑠を見られるのは自分だけだ。
そう思うと少し誇らしかった。
「帰ろうか。」
「うん。」
二人は並んで歩き出す。
ポケットの中には今もミルクキャンディが入っている。
最初は告白のためだった。
今は違う。
二人の恋の始まりを思い出すためのお守りだった。
春風に桜が舞う。
その中を歩く二人の未来は、まだ始まったばかりだった。
コメント
1件
ああ、もう…最後まで本当にあったかかったです🥺 ツンデレ実瑠会長の「ちょっとだけ」とか「手、繋ぎたい」が、普段の強気な姿とのギャップで破壊力やばかったです。一斗くんの「反則」連発、気持ちわかる…。ミルクキャンディが今もお守りって設定、グッと来ました。 何気ない日常をこんなに愛おしく描けるの、本当に素敵です。素直になろうとする実瑠の成長と、それを見守る一斗の優しさにほっこりしました。お二人の未来、これからも楽しみにしてますね🌷