「やったぞ呉林! 雨が降りそうだぞ、助かった! 雨なら飲んでも大丈夫だよな!
俺は絶対飲むぜ! みんなも雨をテイーカップで受け止めようよ!」
私は力なく胸躍る。元気のない顔で呉林の方を見やる、もう限界だった。
「そうね、大丈夫よ。この世界なら、きっと」
呉林も猛暑にかなり応えているようだ。雨なら多分、少しは害がないと期待したようだ。
「ご主人様。雨です。やったあ! お水、お水、お水!」
それまで、俯いていた安浦は空を見上げて狂喜した。
上を見ると、所々ネズミ色をした空から小降りの雨が降ってきた。それはやがて大降りの雨となる。雨の雫は大粒で、テイーカップで粒を幾つか受け止める。数分もしないうちに雨水でカップは半分くらいの量になった。
私はすかさずそれを口に運んだ。
「美味い! 雨がこんなに美味いとは!」
誰が何と言おうと、その時は雨が最高の飲料水となった。安浦と呉林も雨の粒を入れ始めたコップを口に運んでいた。
「ああ、生き返るわ。恵ちゃん。これで池に顔を突っ込まなくて済んだわね」
この世界に来てから、肩を落として、俯き加減だった呉林も顔を上げ少しずつ背筋を伸ばすようになった。
雨水を数杯飲む頃には、三人に笑顔が湧く。
「みんな、今のうちに休憩をとりましょうよ。かなり体に応えたはずだし、みんな熱中症気味よ」
いつもの状態に目覚めた呉林の指示で、私たちはその場で芝生に寝転んだ……。周囲の気温も少しずつ下がってきていた。大振りの雨はまだ少し……振り続ける。
「角田さんと渡部くんはこの世界にいるのかな」
安浦が雨水入りティーカップを飲みながら呉林に尋ねた。
「解らないわ。でも、何か感じるの」
「居るかもって事なの真理ちゃん?」
安浦の言葉に私は超能力的直感を持つ呉林の方を見る。
呉林はソフトソバージュを手櫛で整えていた。
「そうかも知れないわ」
呉林の言葉のこういった時は、まったく意味をなさない。とても、言語化出来ることではない。呉林自身が、それをどう感じるか、感じないかでまったく違ったことにもなりうるのだろう。思考能力が物事のただ単の指標になってしまう。
「俺は大学に行った時がないけど、安浦はそこで何を学んでいるんだ?」
私は休憩がてら、仕事の時にするどうしようもない雑談を始めた。
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