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見ると、安浦と呉林の服も、汗と雨ですっかりびしょびしょだった。私は鼻の下を伸ばした。二人とも服が少し透けている。
「私は文系だから、それらに関連している単位を取っていたわ」
安浦に言ったつもりが呉林は奇麗な横顔をこちらに向けた。ブラは青だ。
「あたしは理数系なのです。ご主人様は高卒ですか?」
私は少々目を閉じた。
「ああ、高校を卒業してからはバイトと家に籠ったりだった」
安浦はそんな私を見つめて、
「正社員にはならなかったんですね? 頭は良かったんですか?」
安浦のストレートな話に、私は微苦笑し、
「何もやりたくなかったんだ。頭は良いか悪いか解らない」
呉林は微笑んで、
「赤羽さんなら、この不思議な体験を抜け出せば、もっといい生活が出来るわ」
「そうだといいが……」
雨による恵みで、汗でべたついた体が、丁度良く冷えてしっとりとしてくれた。喉も潤せ、元気も取り戻せた。
20分くらい横になっていたが、また濡れた服を気にせずに西へと向かう。かなり小降りとなった雨はまだ続いていた。
「西の池の方には何があるの?」
安浦は首を傾げている。その仕草はやはり可愛いと思う。
「私にも解らない。けれど、今では何か感じるものがあるわ。何かとても大事なものがあるって」
「呉林。おまえだけが頼りだよ。お前を信じて進むしかないよ」
「あたしも信じるわ」
私たちは、ぽつぽつとした小降りの雨の中、ひたすら歩き続ける。
今度はあまり辛くはなかった。雨と風で気持ちが良い。
空はまだ薄暗く。涼しい時間は続きそうだ。
1時間後、
「もう少しで、着きそうね。ほら池の端が近付いてきたわ」
意気揚揚としている呉林に私はある疑問をぶつけてみた。
「なあ。食料を探しに来たんだよな?」
「ええ。そうよ」
私はなおも角度を変えてぶつけてみる。
「池の近くに食糧なんてあるのか? ……そもそもこの世界に食料ってあるのか?」
「……」
呉林は言葉を無くしたようだ。
「……何とかなるわ。私は池に向かうということしか感じられないのよね。食料は二の次ね」