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「う、う~~~む……」
放課後、帰り支度を整えながらも静かに唸っていた。
あれからというもの、毎晩練習を繰り返しているのだが。
絶対と言って良い程、私が足を引っ張ってしまう事態に。
今回のイベント、本当に近距離戦は駄目だ。
せめて中距離で戦いたい所だけど、でっかい武器はやっぱり苦手……というのと。
車に乗っている状態では、そりゃもぉぉぉびっくりする程当たらない。
だからと言って、車両を下りてから大きな武器を構えた所でお察しという。
他の皆みたいに綺麗に当たらない、どころか。
銃弾をバラ撒くスタイルのsevenですら、私より射撃が上手いっていう状況。
というか、直接戦闘が苦手な筈の555より……いや、止めよう。
色々考えても悲しくなるだけなので。
うん、まぁ……もっと練習すれば良いだけなんだろうけど。
でも時間無いよぉ……そもそも私、射撃が下手だから近付いてるのに。
これを封殺されちゃうと、どうしようもないという他無いのだ。
なんかもうお兄ちゃんと早乙女さんに相談して、今回のイベントは辞退した方が良い気がして来たんだが。
とかなんとか考えつつ、大きなため息を零してみると。
「し、白川さん……? えぇと、大丈夫?」
「ファッ!?」
何やら心配そうな顔をした黒沢君が、一人で唸っていた私に声を掛けて来た。
学校で話し掛けられる事は未だに慣れていないので、また変な反応を示してしまったが。
「だ、だだだ大丈夫です! ご心配お掛けしてすみません!」
「あ、いや、別にそんなに謝らなくても……」
ブンブンと頭を下げてみたのだが、相手は更に困った様な表情を浮かべてから。
「あの……さ、本当に、良かったら……なんだけど。何か悩んでる様なら、相談とか……あぁいやっ! そんな大層な事が出来るとは思わないから、気晴らしとか! ど、どうかな!?」
何やら焦った様子だけど、ありがたい提案をしてくれた。
それはもう一回ガンショップに連れて行ってくれるという事でしょうか!? とか食いつきそうになってしまったけど。
普通何回も行く場所じゃないか。
というのと、何も買わないのに何度もお店に行くのは流石に失礼だよね。
が、しかし。
このまま悩んでいても答えが出ないのも確か。
もしも何か出来るとすれば、今すぐ帰って射撃練習をする事なのだが。
どうにもこう……イベントまでに皆みたいに上手くなる未来が見えないんだよね。
それが簡単に出来るのなら、誰もが賞金首クラスになっているだろうし。
私が出来るのは、とにかく目の前に集中してのめり込む事。
であれば射撃に集中すれば……なんて、簡単な事ではない。
いくら集中したところで、アレ等はきっと本当の意味で“慣れ”が必要。
つまり経験こそモノを言う類。
であればいくら私が真剣に挑んだところで、どうしたって“時間”が必要になってしまうというものだ。
けど、その時間が無いんですよぉぉぉ!
などと今一度、沼に嵌りそうな思考回路に陥っていると。
「だ、駄目だった……かな? 今日は、忙しかったり……した?」
私が答えるのが遅かった影響か、違う意味で勘違いさせてしまったらしい。
何となくガッカリした様子で、徐々に声を潜めていく黒沢君。
こ、これは不味い。
これだから私は駄目なのだ、対人能力が最低ランクなのだ。
ただただ話しているだけで、相手を退屈させてしまったり、今みたいにガッカリさせてしまったり。
またやってしまったと慌てつつも、今度はブンブンと首を横に振ってから。
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「へ、平気です! 大丈夫なので、本当に大丈夫なので! 今日はいつも通り、昼間の間は時間がありますから!」
慌ててそう答えてみれば、彼の表情はパァッと明るくなって行き。
「そそそ、それじゃっ! あの、さっ! 今日は、その……甘い物、とか。ど、どうでしょう……か。ホ、ホラ! 何か悩んでるみたいだったし、甘い物食べた方が、思考も回るっていうか!」
甘い物、甘い物か。
基本的にお兄ちゃんがお土産で買って来てくれる物しか食べないし、コンビニでお菓子程度なら買った事はあるけど。
多分今黒沢君が言っているのは、外食……外食? というか、お店で食べるって事なのだと思う。
「行ってみたいです! 私、外出先で甘味を食べるの久しぶりです!」
昔は、というか実家に居た時はたまにあった……というか。
なんだか凄く高そうな場所に行って、デザートが出て来たりって事はあったけど。
あぁいう所だと緊張と共に、粗相をしたら不味いという感情ばかりに埋め尽くされて、ちゃんと味わった事ってないんだよね。
だからこそ、クラスメイトの女の子達が「コレ食べに行こ~」みたいな話をしているのを聞くと、良いなぁっていつも思っていたのだ。
私一人では、ソロでお店に入る勇気なんか無いので。
「か、甘味。あぁ、いや、そんな改まった表現をする所ではないだろうけど……それでも、良い? 普通にファミレスとか、ファーストフードとかになっちゃうかもだけど……」
「むしろそっちが良いです!」
という事で、本日も黒沢君に遊びに誘ってもらえた。
ふぉぉ……なんか凄い、学校帰りに買い食いだ。
私今、ちゃんと高校生やっている気がする。
◆
「えっと……わ、わたし! これにします!」
放課後デート? にお誘いした結果、今回も了承してくれた白川さん。
でも入ったのはファミレスという、ちょっと情けない感じになってしまったけど。
しかし彼女は、この店には入った事がないって言ってたし、何か楽しみにしてそうな感じだったし。
間違った選択ではないと自分に言い聞かせながらも、二人で席に座った結果。
「え、えぇっと……ね? それ、本当にオマケみたいなデザートというか。すっごく小さいよ? ホント、目の前に来たらびっくりするレベルで」
彼女が指さした先にあったのは、本当~にオマケ程度のソフトクリーム。
料理と一緒に頼めば数十円引き! みたいな。
単品で頼んでも、数百円くらいのヤツ。
正直この値段でアイスを食べるのなら、コンビニで買った方がお得感があるレベルだ。
しかしながら。
「あ、あはは……でも、あんまり高い物は頼めなくて。今でもお兄ちゃんに頼ってばかりですから、必要経費以外でお金を使うのが何だか申し訳なくて」
なんて言って、ちょっとだけ困った表情。
経費、経費って。
普通の高校生では、あんまり口にしない言葉なんじゃないかなぁ……なんて思いつつ。
あれ? でも前にファミレスに呼び出された時、ごく普通にご飯食べていた様な。
あの時はお兄さんも一緒だったから、そこまで気にしなかったって事なんだろうか?
とか思った所で、気がついた。
最近のファミレスは、注文だってタブレットだ。
そして今俺が考えた事を、間違いなくお兄さんもやっているのだと完全に把握した。
「白川さん、チョコレート嫌いだったりしない?」
「チョコ、ですか? はい、特に好き嫌いは無いので」
「生クリームとかアイス、ケーキみたいなのも平気?」
「大丈夫です。お兄ちゃんが御褒美をくれるって言ってくれた時、思わずケーキを選んじゃうくらいには、好きです」
ハイ決定、絶対お兄さんコレやってますわ。
という事でタブレットを手に、迷わず季節限定の豪華なチョコレートパフェを注文。
本人に食べる? なんて聞いたら絶対遠慮するから。
勝手に注文して、物が届いてからゴリ押ししてしまえ作戦。
あの時は緊張してあまり意識していなかったが、思い出してみれば料理が届いてから白川さんとお兄さんが何か話していた気がする。
コレか、なるほど。
そしてソレを、俺もやります。
今はバイト代も入った後だし、何より兄貴に貰った三万には一切手を付けていない。
なので、彼女に伝票を一切触らせずに俺が払ってしまえば良いだけ。
よし、今回は絶対に間違っていない筈。
というのも、普段ほとんど使わないSNSアプリで。
“クラスの女子を初めてお出かけに誘いました、ガンショップです。相手は喜んでいた気がするのですが……これは、正解だったんでしょうか?”
なんて、答えの無い質問を投げかけた結果。
数多くのコメントに袋叩きにされたので。
それは無いわ、相手女子だろ? お前に合わせてくれただけじゃねぇの? みたいなコメントは特にグサッと来た。
ですよね、デートする場所としては絶対違うもんね。
変に良い顔をしようって思っている訳では無いし、今更だけどお金に物を言わせて喜ばせようってのは何か違う気がする。
むしろそんな事ばかりでは、俺の財力が追い付かない。
でも買ってあげたい、とか図々しい事を思ってしまうのは多分……単純に、白川さんの喜ぶ顔が見たいから。
もしも俺がもっとスマートに行動できる男なら、きっと前回の銃だってどうにかして購入していた事だろう。
でも出来なかった。
だがしかし、もしも。
もしもあの銃をこっそり買って、彼女にプレゼントした場合。
もう一回、ゲームで“シロさん”が見せた様な微笑を浮かべてくれるんじゃないかって、どうしても期待してしまうのだ。
そんな下心満載な思考回路な訳だけど、しばらく待っていれば店員さんがパフェを運んで来て。
迷わず、白川さんの前に置いた。
「え、あれ? わ、私……こんな凄いの頼んでないです……黒沢君のじゃないですか?」
アタフタしながら店員さんにそう言ってしまい、相手は少々困った顔を浮かべた所で。
ゴクリと唾を呑み込んでから、無理矢理にでも笑顔を作った。
恥ずかしがるな、今だけは。
もはやゴリ押せ、この場だけ乗り切ってしまえば良い。
「あ、あはは……実は、勝手に頼んじゃった。誘ったの俺だし、ちょっとくらいは……ご馳走したかったというか。美味しそうだったし、白川さん食べてみてよ。もしも苦手だったら、残りは俺が食べるからさ」
多分、笑顔ぎこちなかったけど。
あと若干声裏返ったけど。
とはいえ店員さんの方は、これだけで何かを察したらしく。
「ごゆっくりどうぞ」
それだけ言って、ニコニコしながら去って行った。
しかしまだ問題は山積みであり、未だに白川さんはアタフタしている状態。
私だけ食べるのは~とか、それじゃお金を~とか言いつつお財布を出そうとしてしまったので。
「あぁ、ホラホラ白川さん! アイス溶けちゃう! 早く食べないと色々零れちゃうかも!」
期間限定を謳うだけあって、なんか色々ニョキニョキしているチョコパフェを指さしながらそう言ってみると。
彼女は慌てた様子でスプーンを手に取り、そのままパクリ。
いよしっ、第一関門クリア。
その間に店員が置いて行った伝票をサッと回収してみると。
「ちゃ、ちゃんと払いますから……」
「駄目です、コレは白川さんに今日付き合ってもらったお礼です」
「でも……それじゃ、申し訳ないというか……」
かといって、ココで折れたら駄目だろう。
しかしながら、奢られっぱなしなのも気にする人も居ると聞く。
じゃぁどうしろって話なんだけど、生憎と恋愛経験の疎い俺に答えは見つからず。
「こ、今度っ! そう、今度にしよう! 今日は俺の奢りで、次は白川さんが美味しそうな物見つけたら、俺にご馳走してくれるとか! ね、そうしよう!」
慌ててそう言い放ってみると、彼女は暫く固まってから。
「私、あんまりこういうのを調べるのは得意じゃないんですけど……分かりました。次は私が黒沢君を連れて来て、ちゃんとご馳走します!」
なんて言って、フンスッと拳を握り締める白川さん。
こういうところも、本当に真面目だよなぁ……なんて、思わず笑ってしまいそうになったけど。
あれ? 今、俺……次のデートの約束した?