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遊園地からの帰り道 五人は、いつもよりゆっくり歩いていた。 誰も急がなかった。 誰も先に帰ろうとしなかった。 まるで 少しでも長く、この時間を続けたいみたいに。
「なあ、仁人」
勇斗が隣から声をかける。
「ん?」
「前世の最後にさ」
少しだけ迷ってから。
「仁人が『来世では、もう会いませんように』って願ったのって……」
仁人の足が止まった。
「……うん」
「俺たちを嫌いになったから?」
「違う」
仁人はすぐに首を振った。
「絶対に違う」
その答えに 勇斗は少し笑った。
「なら、よかった」
「……え?」
「ずっと、それだけが怖かったから」
仁人は何も言えなかった。
*
その夜 仁人は一人で古い写真を並べていた。 五人で笑っている写真。 五人で遊園地にいる写真。 最後に、四人だけが写っている写真。 そして 写真の端に残された言葉。
――『次に会えたら、今度こそ最後まで。』
「……俺は、何を怖がってたんだろう」
目を閉じる。 すると 今までより鮮明に 前世の記憶が浮かんだ。
雨の日 五人で遊園地にいた。 けれど 仁人の様子がおかしいことに、四人は気づいていた。
『仁人、大丈夫?』
『うん』
『嘘やろ』
舜太が心配そうに顔を覗き込む。
『……大丈夫』
仁人は笑った。 でも その手は震えていた。 仁人は知っていた。 この先 また五人の誰かがいなくなる。 何度も繰り返してきた。 五人で出会う。 五人で笑う。 五人で約束する。 そして 最後には一人がいなくなる。 だから 今度は自分が消えればいい。
『仁人』
勇斗が手を握る。
『一緒に帰ろう』
『……ごめん』
『何が?』
『俺、もう決めたんだ』
『何を?』
仁人は涙をこらえながら笑った。
『来世では、もう会わない』
四人の顔が固まる。
『……なんで?』
『その方が、みんな幸せだから』
『そんなの、俺たちが決めることだろ』
『違う』
仁人は首を振る。
『俺が知ってるんだ』
『何を?』
『五人でいると、最後には必ず誰かがいなくなる』
勇斗が首を振る。
『だったら、五人で変えればいい』
『……無理だよ』
『どうして?』
『だって――』
仁人の声が震える。
『俺は、もう何度も見てるから』
四人は言葉を失った。 仁人は 何度も同じ人生を繰り返していた。 そのたびに 四人との別れを見ていた。 だから 最後に 自分から願った。
『来世では、もう会いませんように』
その願いなら 四人は苦しまなくて済む、 そう思った。
*
「……違った」
仁人は目を開ける。 涙が頬を伝っていた。
「俺、勘違いしてたんだ」
五人でいることが誰かを失う原因なんじゃない。 誰か一人が、全部を背負おうとすることが原因だった。 仁人は ずっと一人で決めていた。 自分が離れれば 四人は幸せになる。 そう信じていた。 でも 四人は一度も そんな未来を望んでいなかった。
*
翌日 五人は屋上に集まった。
「昨日のこと、考えてた」
仁人が言う。
「俺も」
勇斗が答える。
「俺たちが何度も同じ結末になる理由」
仁人は四人を見る。
「たぶん、誰かが一人で未来を決めるからなんだと思う」
「……仁人」
「前世の俺は、四人を守りたくて離れた」
涙をこらえながら。
「でも、それは四人に何も聞かずに決めたことだった」
舜太が笑う。
「じゃあ今度は、五人で決めたらええやん」
「うん」
太智も頷く。
「誰か一人が勝手に消えるのは禁止な」
「それ、仁人が一番守らなきゃね」
柔太朗が笑う。
「……分かってる」
仁人も笑った。 勇斗が手を差し出す。
「じゃあ、もう一回約束しよう」
「何を?」
「五人で決める」
一人ずつ手を重ねる。
「五人で悩む」
「五人で笑う」
「五人で泣く」
「五人で最後まで」
最後に 仁人が手を重ねた。
「……五人で、生きる」
その瞬間 胸の奥にあった何かが 少しだけ軽くなった。 けれど まだ一つ どうしても分からないことがある。
――なぜ。 五人は何度生まれ変わっても 必ず再会するのか。 その答えを知るためには 五人が最初に出会った人生まで、記憶を辿らなければならなかった。
コメント
1件
読了しました、第21話…。 仁人が「一人で全部背負おうとしたから同じ結末を繰り返してた」って気づくシーン、すごく刺さりました。自分を犠牲にすることが守ることだと思い込んでた過去と、今の五人が重ねた手のひらの温度の対比が切なくて、それでいて優しかったです。 まだ最初の人生の謎が残ってるのが気になる…続きがすごく知りたいです。 重いテーマなのに、ちゃんと希望をくれる話をありがとうございます🌙