テラーノベル
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クルーカー「よし……!!!」
早朝
マグカップに入った最後の一杯のコーヒーをすすりながら、クルーカーが呟いた。
クルーカー「へ、へへ、あへは」
クルーカー「昨日から徹夜した甲斐があった…!」
ガーノルド「ク、クルーカー…!お前ついに!」
キラキラした目でクルーガーの手元を見つめるガーノルド。
クルーカー「ああ…!」
クルーカー「新しいロボットの初期案ラフ……完成だ」
ガーノルド「って、全く進んでねえじゃねえか!」
ガーノルド「あー、期待して損した〜」
クルーカー「うるせえええ!」
クルーカー「そんなこと言ってるけどガーノルド。これ完成したらマジですごいと思うよ」
真っ黒なクマの目立つ疲れた目元でガーノルドをじろっと眺めた。
ガーノルド「そんなガチトーンで言われたら、協力するしかねえな!」
クルーカー「無理矢理にでも協力させるつもりだったよ!」
二人は手をパチン!と合わせて、お互い元気に微笑みあった。
それを見ていたファンボットとファンコンピューター2人。
ファンボット「相変わらず仲良しですよねあの二人」
ファンコンピューター「そうだね〜!いやぁ、元気で何より!」
ファンコンピューター「最近ホコリが溜まってきたから掃除して欲しいかなーとか思ってるけどね!」
ファンボット「そのくらいなら私がやりますよ」
ファンコンピューター「お!ありがとう〜!」
なんやかんや言ってこの二人も仲良いんだな、と思うガーノルドとクルーカーを横目に、窓の外には赤黒い空が広がっていっていた。
ガーノルド「え?急に暗……」
ガーノルド「は?外赤すぎでしょ」
クルーカー「行ってみようか。」
クルーカー「ファンボット!コンピューター持って着いてきて!」
「「はーい」」
四人は困惑しながらも穏やかな雰囲気で、外へ様子を確認しに行った。
ガーノルド「うわぁ…マジで真っ黒」
クルーカー「なーんか嫌な予感するなぁ」
ファンボット「いろいろやるべきことがありますし、作業場へ戻ったほうがいいのでは?」
クルーカー「それはそうだな。戻るか」
ガーノルド「ほーい」
作業場へと足を運ぶ四人の後ろの木に
白い少女が顔を出し、ニヤリと笑った。
「見つけた」
クルーカー「っあー!やっぱオールした後の作業はキツイって!」
ガーノルド「勝手にオールしたのお前だろ?自業自得」
クルーカー「それな」
ガーノルド「うぜっ」
ガーノルド「まあいいや。俺トイレ行ってくる」
手に持っていたドライバーを机に置いて、ガーノルドは立ち上がった。
クルーカー「いってら〜」
クルーカーは手元から目を離さず、ペンを咥えながら作業に没頭していた。
数分後
クルーカー「ガーノルド遅いなぁ」
クルーカー「大かな」
クルーカー「だとしても遅すぎだろサボりか?」
ブツブツと愚痴をこぼしながらも、手は一切止まっていなかった。
その時、シャンッ!とクルーカーのシンバルが叩いて鳴らされた。
クルーカー「おいガーノルド!急にシンバル鳴らすなよ〜………」
クルーカー「ウェンダ?」
ウェンダ「Hi〜クルーカー。元気?」
クルーカー「いやそんなことより、血…めっちゃ付いて…」
ウェンダの真っ白な体には、付着した血が目立ちすぎた。
ウェンダ「あんまり気にしなくていいわよ」
ウェンダ「聞きたいことがあるんだけどさ」
ウェンダ「ほら〜、クルーカーって頭いいじゃない?機械作ったりさ」
クルーカー「うーん、その辺はガーノルドの方が得意だと思うけど…」
ウェンダ「頭いい人の脳って、普通の人より大きいのかなって」
ウェンダ「ラディのと比べてみたいのよ」
ウェンダがクルーカーの机からノコギリを取り出した。
クルーカー「ラディと比べる?」
クルーカー「…それラディと俺の脳みそ除く気ってことになってるけど」
ウェンダ「え?その通りよ」
ウェンダ「じゃ、失礼するわね」
クルーカー「いや、本気で何言って」
クルーカー「?!?!?!」
ウェンダはクルーカーのシンバルを外した後、頭にノコギリを突き刺した。
そのまま円を書くようにノコギリを回していく。
クルーカー「あ゛っ、ひ、がぁっ………ぐっ、」
ウェンダ「我ながら手先器用かも!」
クルーカーは口から血を吐き、首をぐるぐると回しながら虚ろな表情で天井を見つめた。
「ガーノルド………たす…け」
ウェンダ「うんうん!大きさはさほど変わらないのね」
ウェンダ「勉強になったわ。ありがとう」
ガーノルド「クルーカー?」
寒気がした。設計図を赤く染めながら机に顔を埋めているクルーカー。そのクルーカーの首を掴みながら、ケタケタ笑っているウェンダ。
その最悪な光景に、ガーノルドは嗚咽を漏らした。
さっきまで普通に話していた大親友が………
ガーノルド「死んでる………?」
ウェンダ「ガーノルド。」
耳まで裂けた大きな口。小さな瞳孔。身体中についた血液………
ガーノルドは全てを察した。
ガーノルド「ファンボット!!!コンピューター!!!逃げろ!」
今まで出したことのないくらい大きな声で、二人に叫ぶ。
ファンボット「…?」
ファンコンピューター「どうしたのガーノルド?」
ガーノルド「早く!」
ガーノルドは、力を込めて二人を押し出した。
その衝撃で、床に転んでしまった。
ファンボット「………危険な予感がする」
ファンボット「ここはとりあえず、ガーノルドさんの言った通り逃げましょう。」
ファンコンピューター「う、うん…。」
ファンボットはファンコンピューターを抱え、裏口から外へ飛び出した。
ガーノルド「…よかった、ぁ」
ウェンダ「あら、自分が逃げることよりあのオンボロ機械二つを逃がすだなんて」
ウェンダ「随分いい人なのねね」
ガーノルド「…ふん」
ガーノルド「クルーカーがいなくなっちゃ、俺に生きる意味なんてねえよ」
ウェンダ「ふーん。そう」
興味のなさそうな声で、ガーノルドを見下している。
ガーノルドがうつ伏せの状態で馬乗りになり、腕を抑えられているのでどんなにもがこうと動けなかった。
ウェンダ「にしても、すごい頑丈なスーツね。刃が立たないわ」
ウェンダ「この状態で脱がそうとしたら逃げられちゃいそうだし、どうしようかしら」
不満なのか、押さえていたガーノルドの手首を一気に締め付ける。
ガーノルド「痛っ、!やめ…」
ウェンダ「そうだ。」
ウェンダがガーノルドのスーツの首元にある、留め具を刃の先で弾いて外した。
ガーノルド「あっ」
スーツのロックが外れ、急激にスーツが縮小する。
頑丈なため、体をどんなに締め付けようと破れない。
ウェンダ「圧死ってやつかしら?」
ウェンダ「結構いいわね」
ガーノルド「あ、あぁぁあぁ、苦し、っ…たすけて……だれか、っあ」
ウェンダ「残念。あなたの大親友はもういないわ」
ウェンダ「そういえばクルーカー言ってたわよ」
ウェンダ「ガーノルド………たす…け」
ウェンダ「って」
ウェンダ「もっと早く戻ってればよかったのにね〜」
ガーノルド「ぁっ、づ………」
ベショッ、と、肉が潰れたような音がした。
ウェンダ「あ、もういっちゃった〜」
ウェンダ「ファンボットとファンコンピューターも壊そうかと思っていたけど、ロボットだし壊したところで悲しむような二人はどっちも死んじゃったから意味ないかしら」
ウェンダ「次は誰が見つかるのかな〜!」
狂ったような笑い声を上げながら、ウェンダは遠くへ姿を消していった。
ファンボット「もう大丈夫でしょうか…」
ファンコンピューター「………これダメだよ」
いつも元気に話しているコンピューターだったが、何か様子がおかしい。
ファンボット「どうしましたか?」
ファンコンピューター「僕ね、こっそり作業場のところ見てたの」
ファンコンピューター「そしたらさ」
ファンコンピューター「クルーカーがウェンダに頭切られてた」
ファンコンピューター「多分もう死んでた」
ファンボット「…え?」
どんなに知能明晰なロボットでも、動揺が隠せない。
ファンコンピューター「それでガーノルド」
ファンコンピューター「ウェンダにスーツのロックを外されて潰れた」
ファンコンピューター「多分ガーノルドもダメ」
ファンボット「…ウェンダさんが?」
ファンコンピューター「そうだよ」
ファンコンピューター「でもあれウェンダなのかな」
ファンコンピューター「間違いなくウェンダだけど、違うんだ」
ファンボット「…私たちは、機械だから襲われなかったんでしょうか」
ファンコンピューター「…襲う意味がないってことだろうね」
ファンボット「だとしたら、他の方たちが危ない!」
ファンボット「でも………」
だが、自分たちの生みの親である二人を置いていくこともできない。躊躇うファンボットに、コンピューターは言った。
ファンコンピューター「僕だって二人が死んじゃって困ってるさ」
ファンコンピューター「でも、まだ生きている人を助けるほうが絶対にいいと思うんだ」
その言葉を聞いて、ファンボットはハッとした。
ファンボット「そうですね」
ファンボット「さようなら、ガーノルドさん。クルーカーさん。」
ファンボットは、コンピューターを抱えて、人が集まるであろう大樹の下へ向かった。
「Something is wrong」(何かがおかしい)
「They are all DEAD」(全員死んだ)
「They are NOT REAL」(奴らは本物じゃない)
「Look around you」(周りをよく見て)
「You can not hide」(隠れられない)
「You are not safe」(安全じゃない)
「RUN away. RUN away」(逃げて、逃げて)
「RUN. RUN. RUN. RUN」(走れ走れ走れ走れ)
そう歌い続けるコンピューター。
生存者を探すため、走り続けるファンボット。
その前には…
涙を流すピンキーとブラッドがいた。
ファンボット「…ピンキーさん!ブラッドさん!」
ピンキー「ファンボットにコンピューター…」
ピンキー「ねえ、みんなどうしちゃったの?」
ピンキー「ツリーさんのところに行こうと思ったらみんな血だらけで倒れてて」
ピンキー「オレンも、もう死んじゃってて」
ピンキー「う、うわぁぁぁぁぁん」
ブラッド「ピンキー、?」
ファンボット「私にはわかりません」
ファンボット「でもきっと、生き残る手段が…」
タナー「…ピンキーにブラッド?」
ジェヴィン「それに、ファンボットさんにファンコンピューターさん…!」
ピンキー「…!!!」
ピンキー「ジェヴィンさん!タナーさん!」
ファンボット「……あぁ、安心した」
タナー「ああ。俺らが来たからには絶対君たちのことを守ってやる」
帽子を持ち上げながら、希望に満ちた瞳でブラッドの手を取った。
ジェヴィン「四人とも、無傷でよかったです…!」
目を潤ませて皆を見つめる。
ピンキー「ジェヴィンさん」
ピンキー「なんで、世界はこんなになっちゃったの?」
ピンキー「なんで…」
ピンキー「ウェンダがみんなを殺してまわってる」
ジェヴィン「…簡潔に説明しますと」
ジェヴィン「今日、この世界にブラックという者が現れまして」
ジェヴィン「ウェンダさんはそいつに操られている…ということになると思います」
その瞬間、六人の顔が一斉に暗くなる。
ピンキー「ご、ごめんなさい。こんな質問しちゃって」
ジェヴィン「ご心配なさらず」
タナー「…」
タナー「あと見つかっていないのは」
タナー「サイモン、ダープル、オワックス」
タナ「Mr.サンかな」
ジェヴィン「それと、ガーノルドさんにクルーカーさん、グレーさんですね」
ファンコンピューター「…ガーノルドとクルーカーはもういないよ」
ファンコンピューター「どっちもウェンダに殺された」
タナー「…!」
ジェヴィン「……申し訳ございませんでした」
ジェヴィン「では、あと五人の生存者の確認と保護をすること」
ジェヴィン「ウェンダさんを捕えるか殺して、被害者を減らすこと。」
ジェヴィン「ブラックを探し出し、倒すこと」
ジェヴィン「これが今私たちがやるべきことです」
全員「…わかった」
ジェヴィン「ではまずは、全員で生存者を見つけ出しましょう。」
タナー「でもジェヴィン。こんな大人数で言ったらバレる可能性が高く…」
ジェヴィン「大丈夫です」
ジェヴィン「ブラックはまだ現れない」
ジェヴィン「ウェンダさんが襲ってきても、二人がかりなら足止めくらいはできます」
ジェヴィン「私たちを相手にしていれば、他の方達を襲う余裕なんてありませんしね」
タナー「そうか…」
五人はまた足を進めた。
ピンキー「……待って」
ピンキー「ブラッドがいない」
ジェヴィン「……え?」
タナー「確かに、ブラッドのことだ。別のとこ寄り道して行っちゃうかも…」
タナー「手を繋ぐなりしておけば良かった…」
ピンキー「ブラッドなら多分」
ピンキー「いつものお花畑ね」
ファンボット「では、そこに向かいましょうか」
ジェヴィン「…ええ」
五人が花畑に着くと、案の定、ブラッドがいた。
枯れた花を眺め、ポカンとしている。
ピンキー「良かった…!ブラッド」
ブラッド「あ、ピンキー!」
ブラッドがピンキーの元へ向かおうとする。
その瞬間、ブラッドの目の前に黄色い生き物が立ちはだかった。
ジェヴィン「あれは……サイモンさん?」
サイモンはジロッとブラッドを凝視した後、こちらへ振り向いた。
ピンキー「…サイモン?!」
活発な瞳は失われ、口が地面につきそうになる程肥大している。
タナー「ブラッド!危ない!」
タナーがブラッドの元へ駆けつけようとした瞬間、サイモンがブラッドのバケツと頭半分を……
ガリッと噛み砕いた
タナー「……ブラッド…!」
ブラッドは相変わらず焦点の合わない目でこちらに駆け寄ってくる。
サイモンは上を向いて、ユラユラと揺れたまま動かない。
ジェヴィン「…サイモンさんも、ウェンダさんと同じように操られたのでしょう」
ブラッド「…あー、…うー、」
喰われた頭から血を大量に流して、ずっと同じ言葉を繰り返している。
ピンキー「大丈夫、処置さえすればブラッドは死なないわ」
ピンキー「前聞いたの」
ピンキー「「僕は痛いがわからない」って」
ジェヴィン「なるほど…」
ジェヴィンはまた、一人分の包帯を取り出して、ブラッドの頭に巻き付けた。
ジェヴィン「これで大丈夫」
ジェヴィン「そして………こうなればもう…サイモンさんを殺すしか」
ピンキー「…嘘でしょ、?」
ジェヴィンが屈み、斧を振りかざして戦闘体制に入った瞬間、サイモンがバタッと倒れた。
タナー「え?」
すかさずジェヴィンが倒れたサイモンに駆け寄り、脈を測ってみた。
ジェヴィン「…死んでいます」
ピンキー「え…?」
ジェヴィン「多分原因は…」
ジェヴィン「バケツが喉に詰まったことによる窒息死でしょうか」
タナー「…でも、これで、サイモンに殺される奴はいなくなったな」
ジェヴィン「どちらにせよ、サイモンさんは一人も殺せてませんが」
ジェヴィン「とりあえず、サイモンさんは死亡を確認」
ジェヴィン「あと行方が不明なのは?」
タナー「Mr.サン、ダープル、グレー、オワックスだ」
ジェヴィン「わかりました」
ジェヴィン「では、その四人を探しに行きましょう」
ファンボット「…はい」
六人がまた進んでいくと、首を吊ったラディが見えた。
ピンキー「まさかここって……」
ジェヴィン「…えぇ」
ジェヴィン「ツリーさんの元へ戻ってきてしまったようです」
実は、ジェヴィンとタナーは他の生存者を探そうとずっと走り回っていた。だが、どうしても同じところを何度も周回してしまう。方向感覚が鈍ってきているのだ。
それは他の、ピンキーやファンボットも同様だった。
タナー「…もしかして、見つかってない人、全員ツリーさんのところに集まって…」
ラディの下には、下半身と顔の下半分をちぎられ歯が剥き出しになったオワックスが倒れていた。
ブラッド「オワックス、?」
ダープルは、大きく見開いた虚ろな目でこちらを見つめながら、大きな口を広げて不気味なトランペットの音を鳴らしていた。
ジェヴィン「…死んではいない」
ジェヴィン「……でも、生きてもいない」
ジェヴィン「腐ってる………?」
Mr.サンは、元の陽気な笑顔は消え失せ、空に浮かんだ目玉と同じような瞳を左右に揺らしていた。
タナー「…サンも、ダープルと似たような感じがする」
タナー「…腐ってる…わけではないが」
タナー「突然変異…?本人が本人じゃなくなって…」
ファンボット「あとは…グレーさんです」
ジェヴィン「そうです、グレーさん…」
ピンキー「どこにいるのかしら………」
みんなが周囲を見渡すと、近くの茂みが微かに音を鳴らした。
タナー「…!」
タナー「あそこだ!」
それにいち早く気づいたタナーは、すぐ茂みに駆けつけ、葉をかき分けて中を覗き込んだ。
グレー「ひっ………!」
グレー「あぁぁあ、もうダメだ……」
タナー「よく見ろグレー」
タナー「俺だ」
タナーがグレーを見つめながら、自分に人差し指を向けた。
グレー「タナーさん…!!!」
タナー「俺だけじゃない」
タナー「生存者はあそこにも何人か」
タナー「…あそこにいない人たちは…」
グレー「…うん、知ってるよ」
グレー「だって…全部見てたんだもん」
グレー「ウェンダがスカイやラディを殺すところも」
グレー「まだ生き残っている人を探している様子も」
タナー「…なんで、見つからなかったんだ?」
グレー「………」
グレー「僕の影が薄いからだよ」
グレー「だからウェンダには気付かれなかった」
タナー「そ、そうか…」
そうすると、七人の後ろから、ダダッ!という走る足音が聞こえてきた。
ジェヴィン「下がってください!」
ジェヴィンとタナーが、武器を持ってピンキー達の前に立ち塞がる。
目の前にいたのは…
タナー「ウェンダ…!!!」
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