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「おはよー志乃」

「柚香、おはよう」

「なんかあった? 」

「昨日、莉央くんとデートして気乗りじゃなかったみたいで」

「珍しいね。」

気乗りじゃなかったのも本当だけど、私が待ち合わせ場所に着き彼に話しかける時彼は千華ちゃんと一緒にいた。

千華ちゃんは恥ずかしそうに何か言ったあと俯いた。

そして、彼は驚いた顔をした後に私にだけ見せる表情をして千華ちゃんを抱きしめた。

その後千華ちゃんは嬉しそうに挨拶をして帰って行った。

そのタイミングで私は彼の前へ現れ、デートをした。

「なんで抱きしめたの?」って聞くことくらいできたはずなのに私は何一つ聞くことができなかった。


「莉央先輩、」

「おはよう、千華」

昨日、先輩に好きだと言ったら先輩は驚きつつ私を抱きしめた。

これにどういう意味が含まれているのかは分からないけれど先輩は私を見て「また明日」と言った。

先輩は私をどう思っているのだろうか。

「ねぇ、先輩⋯」

「莉央くん」

振り返ると先輩の彼女がいた。

いつも優しい雰囲気なのに今日は何処か怒っている。

「今日、一緒に帰ろう」

「あ、うん。部活終わったら正門すぐ行く」

「わかった」

いつもと全く違う。

何かが違う。

もしかしたら、別れ話じゃないのか。

「なぁ千華、俺たぶん志乃に何かした」

淡い期待を抱いているのも束の間、先輩は焦った表情をしている。

当たり前だ。先輩は彼女のことが好きなのだから。

「どうすればいい?」

「自分の気持ちを伝えることですね。」

結局、アドバイスをして自分で先輩達の仲を取り持っている。

私は本当に何がしたいのだろうか。


部活中、彼女のことばかりで何も集中出来なかった。

もし、彼女に別れを告げられたとして俺はどうすればいいのだろうか。

緊張して正門に行くのが怖くなった。

「ごめん、志乃」

「いや、大丈夫」

やはりいつもの雰囲気とは違う。

「単刀直入に聞くね。なんで千華ちゃんと抱き合ってたの?」

俺の心臓が聞いたこともない音で跳ねた。

「え?」

「駅で、抱き合ってるの見た」

「千華が告白してくれたんだ」

「それで抱きつかれて、俺は拒否したんだけど、」

「俺が好きなのは志乃だから」

必死に吐いた嘘だった。

あの時、俺はなぜ千華を抱きしめたのだろうか。

特にこれといった感情も無いのに俺は千華とどうしたいのだろう。

「そうだったんだ。」

「うん、誤解が解けて良かった」

千華に本当のことを言わなければならない。

俺は君が好きじゃないと。

彼女の頬撫で、綺麗な唇にキスをした。

彼女は何故か切なそうに笑っている。


「やっぱ水無瀬 志乃ちゃん可愛い〜」

「お前それいつも言ってんじゃん」

「水無瀬ちゃん彼氏いるしな。よくやるよ、蒼空。」

俺の好きな人には彼氏がいる。

付き合って1年半。

俺に勝ち目が無いことは重々承知している。

「松井くん、科学のノート提出だから貰える?」

「天使⋯」

「ん?」

思わず口から漏れてしまうくらい彼女は綺麗なのだ。

「これ、お願いします!」

「ありがとう」

そんなに優しい笑顔で言われると好きで仕方がなくなる。

「志乃」

「莉央くん!」

教室の入口から聞きたくない声が聞こえた。

彼女の好きな人。

「蒼空、あんま見んなよ」

「⋯うん」

俺の友達は俺を心配してくれている。

それも心に刺さってしまう。

「松井ー」

「どうした桜井」

俺と桜井は部活が同じで部活内では結構仲が良い方だ。

だから、俺は桜井を嫌いになれない

「今日の部活少し遅れる」

「わかった」

なんなら、友人として、チームメイトとして、 とても尊敬している。

部活中もずっと彼女のことが頭から離れない。

もし、桜井に見せるあの表情を俺に向けて貰えるとしたら、と今までずっと思っていた。

「蒼空先輩?」

「あ、千華ちゃん」

バスケットボールを両手で抱えた華奢な女の子。

彼女と似た感じなのに彼女の方が綺麗と感じる。

これも恋だから、なのか。

「蒼空先輩、何か悩みがあるんですか、?」

俺の顔を覗き込むように聞く。

何処か、彼女との違いに気がついたかもしれない。

行動がものすごく、彼女と違う。

自然なのが彼女で作っているのが千華ちゃん。

こう考えるとしっくりくる。

「何も悩みなんて無いよ、あっても千華ちゃんには相談しないかな」

「後輩に弱音吐くとか恥ずかしいじゃん?」

「私、選手の相談事も聞けないなんてマネージャー失格ですね、。」

そう言うと千華ちゃんは泣き始めた。

「え?!なんで!」

俺の声を聞きつけたチームメイトが集まってくる。

皆口々に「どうした?」だとか「話聞くよ」だとか媚びを売ろうと必死だ。

「おつかれー、ってどうした」

そこに桜井が来て千華ちゃんの前に立った。

「何があった」

「私、マネージャーとして上手く仕事出来てないのかな。蒼空先輩悩みがあるみたいなんですけど相談してくれなくて、。」

何故、部活のことでも無いのにたかがマネージャーに相談しなければならないのか。

俺が悪いのだろうか。

もしここで、桜井まで俺を責めたら俺はどうすればいいのだろう。

「千華がマネージャーとしていらないって言ってるんじゃなくて千華に相談できない内容だったんじゃないの?」

「それに、今練習中だろ?」

「練習中に泣いて中断させるってマネージャーとしてその行為が一番失格だよ。」

桜井に顔を上げろ、堂々としてろと言われた感覚になった。

桜井は俺の考えを分かってくれる。

その反面羨ましくなる。

俺がそう言えば批判されるのに、桜井が言ったら全員何も言わずに俯いている。

こういう芯がある男だから彼女も桜井を好きになったのだろうか。

「莉央先輩、ごめんなさい」

そう言うと彼女は部室に走って逃げてしまった。

「松井、俺はお前が悪いなんてひとつも思わない。相談するような間柄でもないのに相談なんてする必要ない。」

「お前らも、千華が可愛いってだけでそうやって人の話聞かないとかやめろよな」

「高校生にもなって恥ずかしいぞ」

何故、俺が泣きそうになるのだろう。

何故、こいつに助けられて少し悔しいのだろう。

もし、彼女がこの光景を見ていたらまた桜井に惚れ直すんだろうな。


「莉央先輩、さっきはごめんなさい」

「うん、謝るのは松井にね。それじゃあ」

「待って、」

私は咄嗟に彼の腕を掴み、彼を見あげる。

「先輩、なんでこの前私の事抱きしめたんですか」

そう、ずっと聞きたかったことを聞くと彼は困った表情をしていて少しの間沈黙が流れる。

「なんというか、衝動、?」

「俺が好きなのは志乃だから、千華の好きには応えられない。ごめん。」

「衝動、、。」

頭が真っ白になった。

何も考えられない。

結局私は彼の何者にもなれていない。

私が掴んでいたはずの彼の腕はもう無くて、意識を前へと送ると彼は大好きな彼女と手を繋いで歩いていた。

その笑顔が私に一度も向けたことの無い顔で、涙が溢れてくる。

彼に行き着いたはずの好きは、呆気なく捨てられてしまう。

私が初めて恋をした相手。

貴方のことが好きで好きでしょうがないのに、私の年齢がひとつ上だったら付き合えたかもしれないのに。

叶うはずのない妄想をして、意味の無いアプローチをして私、

「何してんだろ、」

まだ残っているこの好きはどうしたらいいのだろう。


「莉央くん、もうすぐ文化祭だね」

「そうだね、志乃のクラスは何するか決まった?」

「えっとね、メイド喫茶とお化け屋敷で迷ってる!」

「莉央くんのクラスは?」

ふたりで帰ることがどれだけ私を安心させるか、今すごく実感している。

彼がとても人気なのは重々承知で私が釣り合っている相手では無いことも分かっている。

でも、彼の隣を誰にも譲りたくはない。

「俺らのクラスはクレープ屋だって」

「めっちゃいいね!文化祭一緒に回ろうね」

「もちろん」

あの時、千華ちゃんを抱きしめたのは絶対に彼からだった。

でもあれは一時の気の迷いだと思うことした。

告白してくれて嬉しくておかしくなっただけ。

きっとそう。

「莉央くん、」

「ん?」

「好きだよ」

彼の目を見る。

驚いた表情、目を見開いて私をじっと見る。

そして微笑んで言った。

「急にどうしたの?」

「言いたくなった」

「なんだよそれ」

面白おかしそうに言う。

「ほんとに志乃は可愛いな」

「ありがとう」

やっぱり、「俺も好き」とは言ってくれないね。


君を未だに好きになれない。

でも夢を見た。

君に振られる夢。

あの夢の中で君は言った。

「君は私を好きじゃない。」

「君に私は必要無い。必要としてないのに関係を続けたくない。」

「ごめん、別れよう。」

俺はその後、どんな行動を取ったのかひとつも思い出せない。

もし俺が夢の中で君に「別れたくない」と言ったのだとすれば俺は君を何か別の感情で思ってるのかもしれない。

君は大切な人。

俺たちが別れるのだとしたらたぶん、君から別れを告げるのだろう。


「もしも、私たちが別れるってなった時別れを告げるのは莉央くんだと思う。」

「というか、私から別れは告げないよ。」

「なんだよ、それ」

あなたは微笑んで、私の頭を撫でてくれたね。

もうあの会話も過去の話。

あなたを独占できるのは今だけだから。

あなたを想う時いつもどこで誰と何をして、どんな話で笑ってるんだろうって考える。

けれど、毎回そう考える時に隣に居るのは私でこれは願望なのだといつからか気づき始めた。

私は彼に愛されていない。

大切にされていても愛されていなければそれは私にとって両思いとは言えない。


この感情に名前をつけるとするならばそれは情だろうか。

「これは恋では無い」

彼女を見ていると胸が熱くなるのも何をしていても可愛いと思うのも全て恋ではない。

違う感情だ。

これはただ、彼女と長く一緒にいるから大切に思えているだけで絶対に恋ではない。

俺の瞳から一滴、涙がこぼれた。

「なんで、」

彼女を想うと涙が出る。

彼女を想うと笑みが溢れる。

彼女を想うと胸が締め付けられる。

この感情に気付きたくない。

気付いてはいけない。

もし、気づいてしまえば彼女を苦しませる。

俺たちは必ず別れるのだから。

この感情に気づけば未練が残ってしまう。

俺に彼女は勿体ないから。

だから、この感情は恋ではない。


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