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第1話:雨宿りの距離
 午後の授業が終わったころ、グラウンドを濡らす冷たい雨が降り出した。

 教室の窓際で、それをぼんやり眺めていたオレの前に、影が差す。


「……おまえ、傘、ないんだろ?」


 顔を上げると、そこには――

 藤宮 颯(ふじみや はやて)先輩。

 成績優秀・運動神経抜群・顔は俳優レベルの完璧イケメン。

 なのに、なぜかいつもオレにだけ、優しすぎる。


「うん……。カバンに入れたと思ったんだけど、入ってなかった……」

「ほら、入れよ。送ってやるから」


 差し出された黒い折りたたみ傘の中。

 そこには先輩の整った横顔と、少し濡れた前髪。

 ふわっと香るシャンプーの匂いに、オレの心臓が跳ねる。


 ――なんでだろ。

 同じ傘に入ってるだけで、体の芯まで熱くなる。


 


 先輩の家までの道は、いつもと違って静かだった。

 オレが話そうとするたびに、先輩が黙ってじっと見てくるから、なんか喋れなくて。


 「……葵(あおい)」

 ぽつりと名前を呼ばれる。

 オレの本名。下の名前。呼ぶのは、先輩だけだ。


「……おまえ、また制服濡れてんじゃん。風邪引くって、何回言った?」


 玄関を入った瞬間、そう言ってタオルを押し付けてくる先輩。

 優しい。けど――どこか、怒ってるような目だった。


「脱げ。上着、貸すから」


 言われるまま、オレは制服の上を脱ぐ。

 冷たい布が肌に張りついて、震えそうになる。


 すると――

 ふいに、先輩の手がオレの頬に触れた。


「……かわいすぎんだよ、おまえ」


 ぼそっと呟かれたその声が、耳の奥で焼きついた。


 オレの心臓が、爆発しそうなほど鳴り始めたのは、その瞬間だった。

『指先でほどける、キミの嘘』

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