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#残酷な描写あり
らい
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37
#パンデミック
畝澄ヒナ
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おお、ついに佳蓮が脱出のチャンスを得たんですね……!リュリュが静かに準備を進めてくれてたんだなあって思うと、ちょっとじんわりしました。隠し通路の発見シーンがワクワクする反面、佳蓮が騙されたことに気づいた時の虚ろな表情がすごく胸に刺さる……。次が気になります!
それから数日後、アルビスは予定通り北のリフィドーロという領地に視察に向うことになった。
旅服に身を包んだアルビスは出発前に離宮に立ち寄り、出窓で読書にふける佳蓮に声をかけた。
「しばらく視察で帝都を離れる。もしここにない本が読みたくなったら、幾らでも取り寄せる。だから大人しく待っていろ」
「……」
アルビスの最後の言葉に、佳蓮は青筋を立てた。
誰が待つものか。戻って来た時に空っぽになった離宮を見て慌てふためけばいい。
背を向け去っていくアルビスに、佳蓮は心の中でせせら笑った。
*
皇帝が留守にしても、城内は何も変わらない。
毎日、メイド達は掃除や洗濯に励み、料理長は調理に勤しみ、官職達は与えられた仕事を着々とこなしている。衛兵達も佳蓮の監視を怠ることはない。
「……どうしたもんかなぁ、これ」
佳蓮は本日も出窓の物置き部分に腰かけて、窓の外を眺めてため息を吐いた。
アルビスが視察に出立してもう5日が過ぎたが、佳蓮は逃げ出すタイミングが見つからず未だ離宮にいる。
リュリュといえば、ここから出してあげると言ったっきり変化はない。毎日、お茶を淹れて、軽食を運んでくるだけ。
(騙されちゃったんだ、私)
思ったより心のダメージが大きく虚ろな表情を浮かべていた佳蓮だったが、午後を過ぎた頃、状況は一気に変わった。
「長らくお待たせして、申し訳ありません。全ての準備が整いましたので、行きましょう」
昼食を運んできたかと思えばすぐに離宮を離れたリュリュは、白い布に包まれた何かを両手に抱えて戻って来た。
この急展開に、佳蓮は手にしていた白パンを滑り落としてしまった。
「あの……行くって……どこに?」
「外でございます」
「へ?」
佳蓮がきょとんと眼を丸くしても、リュリュの表情は変わらない。向かう先も口にしないが、こげ茶色の目は”言わなくてもわかってますよね?”と訴えている。つまりはそういうことだ。
「うん、行く。すぐ行く……!」
食べかけの昼食を無視して何度も頷く佳蓮に、リュリュは抱えていた包みを手渡した。
「あいにく今日は一段と冷え込みますので、まずはお召替えをお願いします」
「……うん」
おずおずと受け取った佳蓮だが、次の瞬間ぎょっとした。
リュリュが音もたてず、たった一人で天蓋付きのベッドを動かしたのだ。
まるで空の段ボールを押すような軽々とした動きに、佳蓮は思わずあんぐりと口を開けてしまう。けれど驚くのはこれだけではなかった。
リュリュは動かしたベッドの位置に膝を付くと、床に顔を近づけて何かを探したかと思えば、あっと小さく声を上げた。
すぐにギィ……と、物音がしたと思えば、今度は暖炉の前の床の一部が盛り上がる。
自分が生活していた場所に、こんな仕掛けがあったとは。次から次へと予期せぬことが起きて、佳蓮は頭が収拾がつかない程、真っ白になる。
対してリュリュは、至って冷静だった。軽々とベッドを元の位置に戻すと、佳蓮に目を向けた。
「離宮は敵に囲まれてしまえば逃げることが不可能です。ですから、こういう隠し通路が用意されているんです。……と、いってもわたくしも昨日までは、この位置を見つけることはできませんでしたが」
リュリュは申し訳なさそうに眉を下げたが、佳蓮は首を横に振る。
「ううん、そんな……探してくれてありがとう」
「とんでもございません」
もじもじと指をこねながら佳蓮が感謝の気持ちを伝えると、リュリュは照れくさそうに笑ってくれた。でも、すぐに表情を引き締める。
「さ、カレンさま。急いでお着換えを」
「うん……!」
状況を把握した佳蓮は、リュリュから受け取った包みを解いて着替えを始めた。