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阿部が倒れた。
心身ともに絶不調なのを知っていながら、どうすることもできなかった。スタジオで浴びる強いライトに耐えられず、眩暈を起こして尻もちをついたかと思うと、阿部はそのまま立ち上がれなくなった。倒れたのが自分たちの番組の収録だったのは、不幸中の幸いだったろう。阿部はプロデューサーの判断でその回は出演なしということになって、頭から撮り直した。
俺は、阿部の荷物を持って、収録終わりに病院へと駆けつけた。
💚「照」
💛「ああ、起き上がらなくていいよ。寝てろ」
青い顔をした阿部は、やはり相当具合が悪そうだった。腕には点滴を受けている。衰弱が酷いので、数日は安静にと医師の説明も受けた。
💚「荷物……俺の荷物ある?」
不安気に俺に問いかける阿部は、どこか鬼気迫っていて、様子がおかしかった。
持って来ていた鞄と大きな紙袋を渡すと、阿部はありがとうと泣いた。
何があったんだろう。
💚「ごめん、よかった………」
💛「阿部。どうかしたのか?お前、変だぞ」
💚「照、悪いんだけど、出てってくれる?」
💛「えっ」
💚「ひとりになりたいんだ」
阿部の切実な表情に、只事でなさを感じたが、これ以上追求しても何も答えないだろうと思って、黙って病室を出た。
帰り際に、他のメンバーは遠慮して来なかったけど、みんな心配してるからなと伝えると、ほんの少し笑ってありがとう、と言った。
いつもの阿部が垣間見えて俺はほっとした。