阿部Side
ホテルに戻った俺たちは、マネージャーさんからルームキーを3つ渡された。自分たちで好きなように分かれて過ごしてほしいとのことだったので、じゃんけんをして決めた。
その結果、俺は佐久間と照と一緒。その他は、めめとふっかとラウール、翔太と舘さんと康二というジャスティスな割り振りになった。
🤍「やったぁ、めめと一緒!」
🧡「ゆり組と一緒とか心強いわぁ。ふっかさん、離れちゃってごめんな?また会いに行くからな♡」
💜「俺は離れた方が嬉しいんだけど……あーもう康二くっつくな!!」
🩷「ひかるぅ、今夜も一緒だね♡」
💛「何その言い方……俺こいつと一緒なのイヤなんだけど!」
部屋を決めただけでも大賑わいなみんな。ふと、いつまでもこの9人で居られたらいいのに、なんてことを思う。誰かが欠けるなんてこと、有り得ないと分かっているのに。
その夜のことだった。
どうしても眠れなくて、俺は夜中に体を起こした。
隣を見ると、ぐっすり寝ている佐久間と……
💚「あれ、照起きてる?」
💛「……阿部も寝れないの?」
照の目が開いていることに気づいた。照も今夜はなんだか眠れないみたいだ。そこで俺はふと思いつく。
💚「ねえ、照。ちょっと散歩しに行かない?」
ルームキーを持って、佐久間を起こさないようにそっと扉を閉める。フロントの人に部屋に佐久間がいることを伝えて鍵を預け、外に出ると。
🧡「あれ!あべちゃん、照兄!」
隣の部屋にいるはずの康二、翔太、舘様の3人がいた。
💚「あれ、3人ともどうしたの?」
❤️「ちょっと寝れなくてね……」
💛「そうなんだ、俺らと一緒じゃん」
💚「一緒に散歩する?」
💙「……そうだな、一緒に歩くか」
偶然出会った3人と一緒に、俺たちは夜の京都を少し散歩することにした。近くにあった灯篭で照らされた水路沿いの道を、5人であーだこーだ言いながら歩く。
そんな時だった。
💚「あ、靴ひもが……」
ふと靴ひもがほつれていることに気づいて、俺はその場にしゃがみこんだ。
💛「ん、大丈夫?」
俺のそばにいた照は立ち止まってくれたけど、少し先を歩いていたゆり組と康二の3人は、俺に気づくことなく歩いていった。
ひもをしっかり結び、先を歩く3人を追いかけようと立ち上がってカバンを持ち直した時。
チリン……
昼間にお土産で買った、滅多に鳴ることがないという鈴が鳴った。その瞬間、俺は目の前の光景に息を飲んだ。
舘様のお尻から生えている9つのしっぽ。翔太の頭に生えている角。康二の背中に生えている翼。
💚「え、どういう……?」
目をゴシゴシと擦って3人をもう一度見た時には、しっぽや翼はもう見えなかった。
🧡「ん?どしたあべちゃん」
立ち止まった俺を振り返り、ふわりと笑いかけてくる康二。翔太と舘様も、少し驚いた表情で俺を振り向く。
💚(何だったんだ、今の……)
胸が締めつけられるような感覚。3人に対する、嫌な予感。
❤️「阿部?体調悪い?」
💚「……ううん、大丈夫。靴ひも結び直してただけだよ」
💙「そっか。んじゃもうちょい先行こ」
俺たちはまた歩き出した。
そこから先は特に異変を感じることも見ることもなく、純粋に楽しい時間が過ぎていった。
💚「ねぇ、照」
ホテルの部屋に戻ってから、俺は照にさっきのことを相談してみることにした。
💛「ん?」
💚「さっきね、俺が靴ひも結び直して立ち上がった時、お土産の鈴が鳴ったの、聞こえた?」
💛「鈴?鳴ってたんだ?」
💚「……え?」
照あんなに俺のそばにいたのに……
💛「そっかぁ、俺も聞きたかったなぁ。だってそれ、滅多に鳴らないんでしょ?」
💚「そうだけど……聞こえて、なかったの?」
💛「うん。今初めて知った」
少し拗ねたように言う照。どうして、俺にだけ聞こえたんだろう。鈴の音が聞こえていないならなおさら、今これから言うことを信じてもらえるか不安になる。……でもだからといって、何も言わないままでいるのはいけない。
💚「一番聞いて欲しいのはこの先なんだけど……その時にさ。翔太と、康二と、舘様に、狐みたいなしっぽとか、鬼みたいな角が生えてるの、見えたんだ」
💛「え、しっぽ?角?……見間違いじゃないの?」
💚「本当なんだって。俺も、信じられないんだけどさ……あの鈴を買った店のおばあさんが言ったこと、覚えてる?この鈴が鳴った時、普段は視えないものが視えるようになるっていう」
💛「あー……てことは、さっき阿部が見たのは普段は見えないけど実は本当に3人に生えてるものってこと…?」
💚「分かんない。確証が持てない」
💛「まあ何かあったら、あいつらなら言ってくれるでしょ。信じよう」
💚「……そうだね」
俺たちはベッドに横になる。佐久間の寝息に混じってすぐに照の寝息が聞こえてきたけど、俺はまだ寝る気にはなれなかった。
あの時に感じた嫌な予感が、気になって仕方なかった。
宮舘Side
散歩を終えた夜。俺たちは、久しぶりにあの夢を見た。
辺りが明るく感じて目を開けると、あの神社の前に3人並んで立っていた。
❤️「ここは……」
👺「汝ら、久しいのう」
厳かな空気を放つ3体の妖怪。俺らの妖気の元であるキュウビと天狗と鬼がそこにいた。
💙「お前らが来たってことは、」
👺「……そう。我らと敵対する妖怪軍との戦いが、明後日に迫っているのだ」
🧡「あれ、明後日なん?前日に来るとか言ってなかった?」
👺「その予定だったのだが、思っていたより我らの力が残っていてな。早めに伝えに来ることが可能になったのだ」
👹「あんまり突然だと、お前らの準備も間に合わねぇなと思ってな」
俺たちの気遣いをしてくれる妖怪たちは、本当に優しかった。少し辛そうなその表情は、俺たちを巻き込んだことに対してなのかもしれない。
🦊「……大切なお仲間がいるのに、こんなことになってしまい本当に申し訳ありません」
キュウビが言った。たしかに最初は、なんで俺たちがって思っていた。でも、もう違う。俺たちが戦うことで、みんなの生活が守れるのであれば。
❤️「大丈夫です。大切なみんなの生活が守れるのなら、なんだってします」
俺が胸を張ってそう言うと、両脇にいる2人も力強く頷く。
🦊「ありがとうございます、本当に……」
👹「……やり残したことのないようにしておけ。もう元には戻れなくなるからな」
🧡「おん、わかっとるで。早く来てくれてありがとな」
鬼の言葉に康二が返すと、3体はくるりと背中を向け静かに姿を消した。
残された俺たちは顔を見合わせる。
💙「……みんなに、言わないとだな」
❤️「そうだね……なんて言われるかなぁ」
🧡「まあ、そう簡単には信じてもらえんやろな」
クスクスと3人で苦笑する。
別れが近づいているというのに、俺たちはなぜだか冷静だった。
朝起きて、いつも通り仕事に行く準備をする。
いつも通りの生活ができるのも、今日で最後だ。明日からは、全く違う環境で暮らしていくことになる。
家を出るにはまだ時間があったので、少し掃除をして今までの思い出を机の上に並べた。30年と少ししかないこの人生で、これだけたくさんの宝物ができただなんて、自分は本当に幸せ者だなと思う。
❤️「……じゃあ、行ってきます」
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続き楽しみにしてます!✨