宮舘Side
リハーサルも本番もいつも通りのパフォーマンスでやり遂げ、楽屋に戻って来れた時には外はもう暗くなっていた。この暗さで、俺と翔太と康二の人間としての生活が終わるのもほんの少しだと思い知らされて胸が詰まる。
本番の空気感そのまま和気あいあいとした盛り上がりを見せている楽屋の中。俺もなるべくいつも通りに振る舞い、みんなに不安を感じさせないように頑張った。
なるべく、これが最期ということを考えないように。1度考えてしまえば、涙が止まらなくなると思うから……
こうして考えていたのが表情に出ていたのだろうか。
💚「……舘様?大丈夫?」
阿部に話しかけられてしまった。
阿部に連れ出されて楽屋の外に出る。周りに誰もいないことを確認してから、阿部は小さな声で俺に聞いてきた。
💚「舘様。単刀直入に聞くんだけどさ、俺たちに何か隠してるよね?」
❤️「……いや、何も隠してないよ」
俺のこの言葉に、阿部は何かを考えるような表情を見せる。
💚「……それ嘘だよね?だって、俺見たんだもん」
❤️「え?見たって何を?」
💚「3人の姿。しっぽとか、角とか生えてるとこ」
そんな、まさか。
❤️「……もしかして、鈴?」
💚「そっか、舘様もいたもんね。そう、京都で夜散歩した時に、あの鈴が鳴って3人の本当の姿が視えたんだよね」
だから、俺たちが隠してるってことに気づいたのか……
❤️「……もう阿部には隠せないな」
翔太、康二、ごめん。阿部にだけは、俺たちの秘密を話します。
💚「どうにも出来ないの?それ」
阿部に全てを打ち明けたあと、阿部は一言そう言った。
❤️「うん……もう、3人で決めたことだから。みんなを守るために、俺たちは妖怪になるんだ」
俺の言葉に、阿部はとても辛そうな表情を見せる。
💚「少しくらい、相談してくれても良かったのに」
❤️「言っても、信じてくれないでしょ?」
💚「まあ、その可能性はあるね」
ハハハ、と2人で笑う。
💚「みんなには、言わなくていいの?」
❤️「言っても、余計な心配かけるだけだから。ほんとは、阿部にも言わないつもりだったから」
💚「そっか……俺ヤダなぁ、ゆり組と康二のいない世界なんて」
壁にもたれかかり、床を見つめて阿部はポツリと呟く。
❤️「……俺かって、嫌だよ」
阿部に聞こえているか分からないくらい小さい声で、俺はそう言った。
その夜のこと。
プルルル、プルルルル。
こんな夜中に電話?一体誰だ……
不審に思って出るつもりはなかったものの、俺は画面に表示されている名前を見ると迷うことなく通話を開始した。
❤️「……翔太」
💙『ごめん、こんな時間に』
❤️「ううん、全然。どうしたの?」
💙『……寝付けなくてさ。ちょっと、会わねえ?』
やっぱり、翔太も同じ気持ちだったみたいだ。寂しがりやでこんな時一番に電話がかかってきそうな康二からは、一切の連絡もないというのに。
❤️「もちろん。どこがいい?」
💙『あの公園』
即答だった。……俺たちの中で「あの公園」というと、いつも俺と翔太が2人きりで会う時に行く地元の公園に決まっている。
❤️「わかった。じゃあまた後で」
💙『ん』
電話が切れると、俺は軽めの上着を羽織ってすぐに家を飛び出した。
💙「涼太!」
❤️「あ、翔太」
💙「お待たせ」
❤️「全然待ってないよ」
俺が公園に着いてから数分経って、翔太と合流した。
💙「改めてごめん、こんな夜中に」
❤️「いいよ、俺も話したいと思ってたから」
俺たちの周りを静寂が包む。きっと、考えているのは明日のこと。
💙「……まさか、死ぬ時も涼太と一緒だなんてな」
ポロリと、翔太がこぼした。
💙「俺たち、生まれた病院も幼稚園も、入った事務所もグループも一緒でここまで来てさ……なんで、死ぬ時まで一緒なんだよ」
自虐のように言う翔太の目には、うっすらと涙がにじんでいた。
💙「なんで、妖怪にならないといけないんだよ……」
勝手に選ばれて、妖力を授けられて、その力を使えばもう元には戻れないと言われて。ここ数ヶ月は本当に辛かった。翔太の気持ちが痛いほどにわかる。
でも俺の中で考えは変わらない。俺たちが死ぬことで、みんなが平和に過ごすことができるのならば。自分のこの力が必要とされているのならば。
妖怪になっても、翔太がいてくれるのならば。
❤️「……妖怪になんてなりたくないけど、翔太がいてくれるなら俺は大丈夫だと思ってる。もしも1人になるようなことがあっても、俺は絶対翔太を探す」
俺の言葉に目をぱちくりとさせている翔太。俺は言葉を区切って、そんな翔太を真正面から見つめる。
❤️「死んだ後だって一緒にいたい」
翔太は俺の言葉に数秒固まった後、フハッと笑った。
💙「そうだな。涼太がいてくれるなら、1人で死ぬより何倍も良いや」
❤️「でしょ?」
💙「多分ここまで来たら、俺たちの縁って切っても切れないよな」
❤️「うん、絶対そうだよ」
2人並んで空を見上げる。柔らかい月の光に照らされた俺たちは、もう人間の姿ではなかった。
コメント
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ワクワクが止まりません😊 続きお待ちしてます🙏
続き楽しみにしてます!!!✨