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「聞いていいか?ケリーはなぜおまえに執着しているのだ?昼の時、何を話した?」
リオは紫の目を見つめた。
ギデオンは誠実で真面目だ。信用できる人物だ。魔法が使えることを話しても、悪用されたりしないとわかっている。だから話してしまおうか。でも…ダメだ。魔法のことを知られて連れ去られた仲間がたくさんいる。そのせいで村がなくなった。絶対に魔法のことを知られてはいけないと母さんから何度も何度も聞いた。だから…話してはいけない。
「その前に…どうして俺が催眠をかけられてるってわかったの?」
リオは質問に質問で返した。
ギデオンが、すぐに答える。
「昼の時、ケリーが、リオが眠って話ができないと一人で部屋から出てきた。部屋に入ると確かにおまえが眠っている。呼びかけても肩を揺すっても起きない。明らかにケリーが何かをしたとわかったが、とりあえず見張りをつけて寮に帰した。そしておまえを部屋に運び、全身を調べた」
「ちょっ…、ちょっと待って!全身を調べたって?」
リオの叫び声に驚いて、アンが床に飛び降りた。
「あ、ごめん」とリオが手を伸ばすと、再びリオの膝に飛び乗る。そして数回頭を擦りつけた後に膝から降りて寝そべり、前足を舐め始めた。
リオはアンの頭を撫でて「どういうこと?」と情けない顔で聞く。
「リオはうたた寝などしない。この城に来てから、一度もそういう姿を見ていない」
「え…そうだった?」
リオは首を傾げて思い返す。
うたた寝をしないことはない。旅の間も雇われて働いてる間も、疲れれば寝る。夜じゃなくても寝る。でも、言われてみれば、ここに来てからは夜以外は寝ていない。たっぷりと睡眠が取れているから。それに、リオが隣にいるとよく眠れるというギデオンと同じで、リオもギデオンの隣でよく眠れているのだ。睡眠の相性がいいのだろうか。
睡眠の相性…ってなんだよと自分につっこみながら、「それで?」と続きを|促《うなが》す。
「そのおまえが、自分から望んだケリーとの対面中に眠るのはおかしい。だからケリーが何かしたことは確実だ。だが、部屋に飲み物や食べ物の類は無かった。ということは、直接身体に何かされたのだろうと思い、調べた」
「……裸にして?」
ギデオンが目を見開き、そして細める。
「ああ」
「えー…」
「ふっ、嘘だ。シャツのボタンを少し外して首と肩を調べて、すぐにわかった。だから、ほとんど脱がせていない」
「なんだよ…驚かせるなよ」
リオは、安堵したと同時に、ギデオンが冗談を言ったことに驚いた。
最近はつくづく思う。ギデオンとの会話が楽しい。ギデオンは物知りで、会話をすればするほど、リオの知識が増えていく。見える世界が広がっていく。
「しかし、男同士なのだから、恥ずかしくはないだろうに」というギデオンの言葉に、リオはハッとした。