テラーノベル
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――部屋。
電気もつけずに、床に座る。
愛空「……はは」(乾いた笑い)
(見なきゃよかった)
(ほんとに)
頭の中で、何度も繰り返される。
さっきの光景。
高良の表情。
距離。
全部。
愛空「……無理」(ぽつり)
胸が苦しい。
息が浅くなる。
愛空「……っ」(額押さえる)
(なんでこんな)
(こんなに)
(苦しいの)
――スマホが震える。
画面。
“樹里さん”
愛空「……」(少し迷う)
出る。
愛空「……もしもし」
樹里『愛空ちゃん?大丈夫?』
愛空「……なにが」
樹里『声、変よ?』
愛空「……普通だよ」
樹里『嘘』
愛空「……」
樹里『何あったの?』
愛空「……見た」(小さく)
樹里『……何を』
愛空「高良の、恋人」
樹里『……そっか』
愛空「……普通だった」
愛空「ちゃんと恋人って感じで」
愛空「お似合いで」
愛空「……笑ってて」
声が、少しずつ震える。
愛空「……ウチさ」
樹里『うん』
愛空「邪魔じゃん」
樹里『……』
愛空「いない方がいいじゃん、あれなら」
樹里『そんなことない』
愛空「あるよ」
樹里『ないって』
愛空「あるって!!」(少し強く)
――静寂。
呼吸が乱れる。
愛空「……っ」
樹里『……愛空ちゃん』
愛空「……やだ」(小さく)
樹里『……』
愛空「やだよ……」
初めて、本音が漏れる。
愛空「好きなのに……」
愛空「どうしようもないのに……」
愛空「……無理」
――涙が、静かに落ちる。
樹里『……会いに行く』
愛空「……いい」
樹里『ダメ』
愛空「いいって」
樹里『ダメ』
愛空「……」
樹里『一人にしない』
――その言葉に。
少しだけ、救われる。
でも。
同時に。
(それでも無理なものは無理なんだよ)
心のどこかで、そう分かってしまっていた。
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