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第21話 〚離れた席、近づいた気持ち〛
「じゃあ、次は席替えをするぞー」
担任の声と同時に、
教室が少しざわついた。
くじを引き、
それぞれが新しい席へ向かう。
海翔は、
無意識に澪の方を見た。
……遠い。
前でも、隣でもない。
教室の端と端。
(……マジか)
胸の奥が、すとんと落ちる。
隣じゃなくてもいい、
そう思っていたはずなのに。
澪の姿が、
急に遠く感じた。
一方、澪も。
自分の席に座りながら、
そっと海翔の位置を確認する。
(……離れちゃった)
理由も分からないまま、
少しだけ、胸が痛んだ。
授業中。
黒板を見るふりをしながら、
二人とも、何度も視線を動かす。
……目は、合わない。
放課後。
海翔は、机に手をついたまま、
動けずにいた。
(なんで、こんなに)
隣じゃないだけで、
こんなに気になるなんて。
今日一日、
澪の声も、表情も、
全部が頭から離れなかった。
(……ああ)
ここで、ようやく気づく。
(俺、澪が好きだ)
守りたいとか、放っておけないとか、
そんな言葉じゃ足りない。
隣にいたい。
話したい。
笑ってほしい。
それ全部が――
恋だった。
その頃、澪は。
えま、しおり、みさとと
いつものように帰り道を歩いていた。
夕焼け。
少し冷たい風。
「席、離れちゃったね」
みさとが、何気なく言う。
その一言で、
澪の胸が、きゅっと締まった。
(……やっぱり、寂しい)
気づいてしまう。
一緒に帰るときの安心感。
声を聞くだけで落ち着くこと。
隣にいないと、落ち着かないこと。
(……あ)
歩く足が、少し遅れる。
(私)
(海翔くんのこと――)
好きだった。
いつからかは分からない。
でも、確かに。
えまが、横目で澪を見る。
「……顔、赤くない?」
「えっ……」
澪は、慌てて俯いた。
その仕草を見て、
三人は、何も言わずに笑った。
離れた席。
離れた距離。
でも。
その日、二人の気持ちは、
初めて同じ場所に辿り着いた。