コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「いらっしゃいませ。本日は……」
声を出した瞬間、言葉が喉につかえて止まった。
予約票を確認するはずが、手元の紙を取り落としてしまったのだ。
「す、すみません!」
慌てて拾おうとする華の前に、律がさっと手を伸ばした。
「失礼いたしました。こちらで承ります」
滑らかな所作で手続きを続ける律。その背中を見ながら、華はただ頭を下げることしかできなかった。
お客様が去ったあと、律は書類を華に返しながら静かに言った。
「桜坂さん、慌てると余計にミスが増えます。深呼吸してから行動してください」
「……はい。気をつけます」
叱責というより助言に近い言葉。その落ち着いた声音に、華の心臓は不思議と静まっていった。