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お客様の足音が遠ざかると、華は胸に手を当てて小さく息をついた。
(また助けられてしまった……)
律の背中に守られているだけでは、いつまでも一人前になれない。
――それは、誰よりも自分がよく分かっていた。
「……次は、ちゃんとやらなきゃ」
小さな声でそうつぶやき、華は落とした書類を改めて見直した。
一文字ずつ追うように確認し、指で印をつけて頭に叩き込む。
不器用でも、失敗続きでも。
それでも、目の前の教育係に認めてもらいたい――その思いが、胸の奥で静かに芽生え始めていた。