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『あの人の言葉』
受験期後半。
私は絵の道に進むため、芸術コースがある高校を受験する。
テストは終わったが、芸術コースには実技試験がある。
そのため毎日、練習している。
でも、なかなか上手くいかない。
手が止まって、思うように描けない日が続いた。
そんな時、クラスの男子が私に話しかけてくれた。
「何やってるの?」
「絵の練習」
「芸術コースに行くの?」
私が絵が好きなのは、クラスのみんなが知っていた。
「うん。もう少しで実技試験があって」
「へぇ、実技試験があるんだ」
「そう。でもなかなか上手くいかなくて…」
彼は少し考えたあと、こう言った。
「俺は絵が得意ってわけじゃないけどさ、お前なら大丈夫だよ」
私は思わず顔を上げた。
「だから、頑張れ」
「うん…ありがとう」
「じゃまたね」
「またね」
そう言うと彼は何事もなかったかのように去っていった。
私はその言葉を聞いて、すごく嬉しかった。
数年後。
私は高校に合格し、絵を描き続けている。
あの時、彼がくれた言葉は今でも、私の中にちゃんと残っている。