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先端から蜜が溢れ、俺はゴクリと唾を飲む。
「挿れるぞ」
ゆっくりと挿入され、指とは比べ物にならない質量に息を呑む。
最初は浅く、徐々に奥へと進む。
「んっ……んぁ……ああん!」
「気持ちいいか?」
耳元で囁かれてビクッと身体が震える。
そのまま耳朶を甘噛みされるとゾクゾクとした快感が身体中を駆け巡った。
その間も抽送は続けられており徐々に激しさを増していく。
「あぁっ!激しっ……!」
パンッパンッと肌同士がぶつかり合う音が響く。
結合部からは愛液が溢れてシーツを濡らしていた。
突かれる度に身体が跳ね上がりもう何も考えられない状態になっていた。
「っ……!イく……!」
テオが短くそう言うと同時に最奥を突かれて絶頂を迎える。
「ぅあ…!くる、っ…!くるぅっ…!」
「っく……!」
ほぼ同時に達したようで気が付くと
テオの白濁食の液体は俺の腹の上に出されていた。
熱い飛沫を受けて身体が痙攣する。
しばらく余韻に浸っていると彼はティッシュで俺の鼠径部や腹をティッシュで拭き取ってくれる。
「あっ、ありがとうございます…」
「水飲むか?」
そう言って頭を撫でてくれる。
その感触にホッとして「はい」と微笑むと
キッチンからコップに注いだ水道水を持ってきてくれて
片手で背中を支えてコップを俺の口に運んでくれた。
◆◇◆
翌朝
目が覚めると、テオが隣で寝息を立てていた。
起こさないようベッドから出ようとすると、腕を掴まれる。
「どこ行くんだ?」
「トイレに行くだけですよ」
寝室に戻ると、テオは二度寝を始めていた。
「ちょっと、テオ! 起きてください、今日からドラマの撮影があるんですから」と揺さぶると
不機嫌そうに目を開ける。
その色っぽい表情にドキッとする。
「…あぁ、今支度する。けどその前にこっちこい」
寝ぼけた声で手を引かれ、腹に顔を押し付けられ、ぎゅっと抱きしめられる。
「あの…テオ、もうすぐ支度しないと…」
「まだ時間あるし、ちょっとぐれぇいいだろ……」
「いや、えっと…妙にドキドキしてしまうので、そろそろ話して頂けると…!」
「あんま可愛い反応されるとまたしたくなるからやめろ」
顔が赤くなり
「きっ……昨日したばかりじゃないですか」と言うと「足りねぇんだよ」と覆い被さってくる彼をどうにか押し退ける。
「と、とにかく! 早く準備してください」
テオは渋々ベッドから出た。
朝食を済ませ、身支度を整え
タクシーで六本木のテレビ局へ。
駐車場からスタジオまでの短い距離でも、スタッフの視線を感じる。
昨日の発言で注目度が高まっているようだ。
エレベーターに乗って現場のある階層に着くとスタッフ達が待っていて挨拶をする。
これからテオのドラマの撮影が始まる。
スタジオに足を踏み入れた瞬間
空気の温度が少しだけ変わった気がした。
照明の熱、スタッフの緊張、張り詰めた空気。
全部がこれから始まる「非日常」に向かって静かに膨張していく感じ。
その真ん中に、テオが立ってた。
ひとりだけ、まるで別の空間にいるみたいな顔をして。
朝、眠そうに俺に文句を言ってたのに、今はそんな影もない。
眉一つ動かさずに台本を見てる姿は、まるで異物みたいだった。
でも──、綺麗だった。
俺は黙ってカメラを構える。
ファインダー越しに覗くと、テオの顔が切り取られ、役の中の“誰か”としてそこに立っている。
「本番行きまーす」
監督の声にスタジオの空気が一変した。
静寂、スタッフも息を潜める。
テオがゆっくりと顔を上げた。
ライトが彼の睫毛を照らし、瞳に微かな影を落とす。
その目を見た瞬間、息をするのを忘れた。
さっきまで隣で「眠い」と言ってた男が
いまは画面の中にしか存在しない「誰か」になっていた。
スタッフの合図と共にカメラを回し始めた。
テオが一歩、前に出た。
靴音すら計算されたように響く。
今回のテオの役柄は、運命の番と道端で出会い
俺様ながらにアプローチするシーンから始まる。
『お前…名前は?』
その番役の相手は今をときめく大女優・瀬戸口アリス。
彼女は戸惑いながらも役になりきって答える。
1話のクライマックス
お互いに見つめ合い、テオが瀬戸口アリスの頬に手を添えて自分の唇を重ねた。
それにどうしてか、酷く胸が締め付けられる。
「──カット」
監督からの声がスタジオに響いた。
◆◇◆
それから数日後
このドラマの視聴率は15%以上と、現段階3話まで放送している中で高い視聴率を維持していた。
「瀬戸口さんとテオ、お似合いだって好評よ。」
成瀬さんは嬉しそうに言った。
「はは……ですね」
俺は曖昧に笑うことしかできなかった。
「って、こんなこと言うとだめよね!本当の番は白鳥くんなんだし」
「あっ、でも気にしないでください!テオと俺はただの政略番っていうか、テオも俺も都合がいいから番になっただけで…」
そんなとき
「お疲れ」
背後からテオの声がした。
振り向くと、彼はいつも通りの顔をしていた。
さっきまで撮影で見せていた表情とは違う。
「翼、今日の飯何?」
「今日?まだ決まってないですけど」
「肉食いたい。焼肉とか」
「また肉ですか?」
テオは「いいだろ」と笑う。
さっきまでドラマの中でアリスと見つめ合っていた彼が、今は俺の隣にいる。
ドラマの中の彼が嘘のようだった。
◆◇◆
そんなある日。
それは、夕方の帰り道だった。
撮影を終えたばかりの俺たちは
タクシーの後部座席に並んで乗っていた。
車窓に流れる街並みは夕陽に染まり始め
日常と非日常の境目が曖昧になるような
妙に静かな時間帯だった。
「翼、明日のイベントお前も来い」
不意に、隣に座るテオがそう言った。
あまりにも自然な口調だった。
軽く言葉を投げるみたいな、何の前触れもない誘い。
俺は一瞬、返事に迷った。
関係者として行くのは構わないけど、あの場に“俺”がいる意味って何だろう――そんなことを考えた。
でも、考えてすぐに、その迷いは消えた。
テオが「来い」と言ったのだ。
それだけで、断る理由なんて消えてなくなる。
俺は小さく頷いた。
──当日。
会場は、息を呑むほどの熱気に包まれていた。
照明の光が空間を彩り、ファンの歓声が壁を震わせる。
音と光と人の熱が渦巻く中で
俺はあくまで関係者として、目立たないよう壁際に身を寄せて立っていた。
手に持ったカメラのファインダー越しに、テオの姿を追い続ける。
ステージの上の彼は、いつもより少しだけ柔らかく笑っていた。
その笑顔は、ファン一人ひとりに届くように丁寧で、どこまでも温かかった。
ああ、テオって、こうやって誰かのために笑える人なんだ。
そう思った。
それは、ごく普通のイベントのはずだった。
少なくとも、最初は何の異変もなかった。
──ただ、“あいつの姿”を見るまでは。
観客席の後方、関係者エリアの隅に立っていたのは
俺にとって“過去”の象徴のような存在だった。
ちひろ
俺の元妻だ。
信じられなかった。
まさかこんな場所で再会するなんて思ってもみなかった。
それは数秒
たった数秒だった。
でも目が合った瞬間、俺の背筋が凍りついた。
ちひろの瞳の奥には、見知った感情ではない
異質な色が渦巻いていた。
──それは、殺意だった。
「……!」
その瞬間、全身の毛が逆立ったような戦慄が走った。心臓が跳ね、思考が止まる。
だが、気づいた時にはもう、遅かった。
ちひろが懐から何かを取り出して
俺の方へ一直線に突っ込んでくる。
白い手に握られていたのは、銀色に鈍く光るナイフだった。
「危ないッ──!」
叫ぶ暇もなかった。会場が悲鳴とざわめきに包まれる。
だが、パニックの原因は“俺が刺された”ことではなかった。
一瞬の刹那。テオが、俺の前に立ちはだかったのだ。
そして、そのナイフの刃先が、テオの腹部を掠めた。
「テオ!!!」
視界が真っ赤に染まった。
血が飛び散った。
時間が止まったような感覚の中で、唯一聞こえたのは、ちひろの叫び声だけだった。
「は……っ?な、なんで……っ、なんで私…うそ、テ、テオ様を……刺した……?」
呆然と立ち尽くすちひろが、ナイフを手に震えていた。
スタッフが駆け寄り、彼女を取り押さえる。
俺は震える手でポケットのスマホを掴み、必死に通報ボタンを押す。
「早く、早く来てください!!人が刺された!!──彼が……テオがっ……!!」
その間も、ちひろはパトカーへと連れていかれながら、何度も叫んでいた。
「違うの!違う、違う……私は、コイツを刺したかっただけで……!なんで!なんでテオ様を……!!」