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西遊記龍華伝

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西遊記龍華伝

148 - 誰が味方で、誰が敵?参

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2025年10月28日

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同時刻 天界
キイィィン!!!


鳴神と黄泉大津神の二人は、激しい斬り合いを繰り広げていた。


お互い引く様子はなく、黄泉大津神の表情は殺気で満ち溢れている。


ブンッ!!!


大振りされた槍の刃はわずかな距離で黄泉大津神の右側の脇腹を擦りるが、鳴神は致命傷には至らない攻撃ばかりしていた。


黄泉大津神は勿論、鳴神が自分の事を殺そうとしていない事ぐらい分かっていた。


ズシャッ!!!


鳴神が槍を大振りした瞬間、黄泉大津神は鳴神の脇腹を刀で貫く。


「ガハッ!?」


「ふんっ!!!」


ドカッ!!!


黄泉大津神はそのまま、吐血した鳴神の腹に思いっき

り蹴りを入れ蹴り飛ばす。


「「「隊長!!!」」」


ドサッ!!!


蹴り飛ばされた鳴神を飛龍隊のメンバーが、慌てて体を張って受け止める。


「どう言うつもり?飛龍、殺す気ないだろ?私の事」


「もうやめて下さい、伊邪那美命様!!!あんなにも愛し合っていた二人が、殺し合わないといけないのですか。俺には理解でいませんよ、伊邪那美命様」


傷付いた鳴神の前に雲嵐刀を構えながら、黄泉大津神の前に立ちはだかった。


「私は私の愛する者達だけが、存在する世界に作り変える。神なんてものがいなくても、人は生きていける。上だの下だの、そう言う分かりきった存在は一人だけで十分だ」


「一人だけって…、美猿王の事ですか」


「私の息子以外、誰が居ると言うのだ。息子の愛する家族を守るのも母親としての勤めだろう」


「だから、隊長の事も殺すおつもりだと。やはり、貴方の考えを理解する事は出来ませんよ」


「黄泉大津神の言葉を聞いた雲嵐は、黄泉大津神に向かって走り出す。


タタタタタタタタタッ!!!


キイィィンッ!!!

 

雲嵐が振り下ろした刀を黄泉大津神は、刀を片手で持ち攻撃を受け止める。


「何だ?この軟弱な攻撃は?こんなものなのか?」


ビュンビュンッ!!!


グサグサッ!!!


黄泉大津神の背中に生えた骨の羽先が、雲嵐の両肩に突き刺さった。

 

「なっ!?グハッ!!?」


ポタッ、ポタッ…。

 

骨の羽先から雲嵐の滴り、そのまま雲嵐の体が静かに持ち上がって行く。


「「「雲嵐副隊長を離せええええ!!!」」」


「やめろ、お前等!!!」


タタタタタタタタタッ!!!


鳴神の静止を聞かずに、飛龍隊の隊員達は黄泉大津神に向かって走り出した瞬間、鳴神の目の前で大量の血飛沫が上がる。


ブシャアアアアアア!!!


ビチャビチャ!!!


空から血の雨が降り注ぎ、鳴神の体に飛び散った肉片と破裂した目玉達が落ちる。


鳴神は一瞬の出来事過ぎて、何が起きたのか頭の理解が追い付いていなかったのだ。


巨大な髑髏化した無天経文の足が飛龍隊の隊員達の体ごと踏み潰し、踏み潰された影響で隊員達の血肉が飛び散った影響だった。


頭ごと潰されたキョンシー化した隊員達でも、復活する事は出来ない。


黄泉大津神は乱暴に骨の羽を揺らし、雲嵐の体を地面に叩き付けるように地面に落とした。


ブンッ!!!


ドサッ!!!


無天経文の脅威的な一撃を見た明王と天部の二人は、観音菩薩の方に視線を向ける。


何とかして、観音菩薩と鳴神だけでも逃さないとと考えが頭を過ったからだ。


「明王、我々のすべき事を分かってますよね」


「あぁ、分かってんよ。混乱乗じて、観音菩薩と鳴神の二人を逃すだろ?」


「何悪巧みしてるの?」


「「っ!!!?」」


突然、背後から聞こえてきた声の方に二人が振り返ると、星熊童子が立っていた。


細い体から放たれる強い妖気と威圧感、圧倒的強者のオーラに明王と天部は押し潰されそうになる。


「もしかして、観音菩薩と鳴神の事を逃がそうとしてる?駄目だよ、そんな事したら」


「ハッ、お前が駄目って言ってもよ。俺等は死んでも、そうすんだよ!!!」


ブンッ!!!


明王は叫びながら、星熊童子に向かって金棒を振りかざす。


ブシャアアアアアア!!!


その瞬間、明王の腕が宙に浮き上がり、勢いよく血飛沫が上がった。


「明王…?」


「チッ、このガキがっ!!!観音菩薩、立てよ。アンタと鳴神だけでも天界からの逃す」


「僕と鳴神だけ…って、明王達はどうするんだよっ」


「俺達の事を考えてる余裕はねーよ、あの女が俺の腕を斬り落としたのを見ただろ?」


明王の言葉を聞いた観音菩薩は、明王の切断された腕を見ながら黙る。


誰が見ても、この状況が良くない事ぐらい分かる危ない状況なのだから。


バサバサッ!!!


「雲嵐副隊長、まだ動く事は可能ですか」


「ゴホッ!!天部か…、さっきの影響で肋骨を何本か折れたが動ける」


「それは助かります。申し訳ありませんが、鳴神と観音菩薩の二人を下界に逃すのを手伝って下さい」


「理由を聞かなくても…、こんな俺にだって、二人を死んででも逃す事に大きな意味がある事ぐらい分かる。今の体調は血を流し過ぎて気絶してる状態だ。観音菩薩を隊長の所まで、俺が連れ出す。アンタが下界への鳥居を出してくれ」


雲嵐はそう言って、残りの隊員達に向かって声を張り上げる。


「お前等、なんとしてでも隊長を死守しろ!!!ここが俺達、飛龍隊の踏ん張り所だぞ!!!」


「「「っ!!!」」」


雲嵐の言葉の真意が分かった飛龍隊の隊員達は、一斉に鳴神の前に立ち各々の武器を構え直す。


「何コイツ等、いきなりやる気になったじゃん。どうする?温羅」


「大方、オッサンと観音菩薩の二人を逃すつもりだろ。飛龍隊の残りの数は百…ちょいか」

 

「観音菩薩と合流させる前に、大将首を刎ねれば良いんでしょ?だったら、早く殺そ」


「おお、縊鬼がやる気のうちに片付けるか」


タンッ!!! 


温羅刹と縊鬼の二人は守りを固めている飛龍隊の隊員達に突っ込み、無天経文の巨大な髑髏の足も降り注ぐ。


「なっ!?コイツ等、いつの間に前まで!?グアアアアアアア!!!」


「弱過ぎて笑っちゃうね」


「このガキ、ガリガリなくせにっ!!!」


縊鬼の細い体からは想像出来ない力に隊員達が困る中、無天経文は次々と隊員達を踏み付ける。


タタタタタタタタッ!!!


「はぁああああ!!!」


雲嵐は星熊童子の背後から接近し、力強く刀を振り下ろす。


ブンッ!!!


キイィィンッ!!!


星熊童子は振り返りもせずに、雲嵐の位置を正確に当て刀で攻撃を防御したのだった。


「なっ!?」


「気配を消さずに背後から近付かれれば、馬鹿でも位置がバレバレだよ?私の事、殺せないよ?」


カチャッ。


そう言って星熊童子は、片方の手に握られていた銃を雲嵐に向けると、縊鬼が召喚した骸骨達が銃の入った木の箱を持っていた。


「天帝って、こんな便利な武器まで隠してたんだ。いっぱいあったよ?だから、ここにある銃はぜーんぶ、私達の物」


「天帝の武器庫から持ち出したのか、この泥棒が」


「泥棒?私が持ち出していなかったら、お前等が使ってただろ?」


バンバンッ!!!


ブシャ、ブシャ!!! 


星熊童子は容赦なく明王の太ももに銃を乱射し、雲嵐の腹にも引き金を引く。


「ガハッ!!?」


「あ、まだ息があるね」


バンバンバンッ!!!


ブシャ、ブシャ、ブシャ!!!


悶え苦しむ雲嵐に向かって、再び星熊童子は容赦なく引き金を引き続け、雲嵐のから細かい血飛沫が上がり続ける。


「アイツが雲嵐に夢中になってる間に、鳴神の所まで走れ」


「…っ、言いたい事が沢山あるよ…死なないよね、明王…っ」 


「…、お前がそう望む限りな。時間が無い、早く行け!!!」


「っ…、うんっ」


観音菩薩は言葉を飲み込み、明王に言われた通りに鳴神の元に向かって走り出す。


星熊童子はすぐに観音菩薩の方に視線を向け、銃口を向けるがふらふらな明王が前に立ちはだかった。


「君が私の目の前に立っても意味ないよ?ポチが追い掛けて行ったから」


「ポチだ??」


「可愛い駄犬がね」


そう言うと明王の横を、ボサボサで痩せ細った大型の犬が涎《よだれ》を垂らしながら、観音菩薩の後を追い掛けて行ったのだ。


タタタタタタタタタッ!!! 


「はぁ、はぁっ!!!」


「ガルルルルルルッ!!!」


「二人が作ってくれた隙を無駄になんかしない!!!」 


追い掛けてくる犬との距離を稼ぎながら」観音菩薩は鳴神の元に急いで向かう。


黄泉大津神も走っている観音菩薩に向かって、骨の羽を広げ骨の破片を弾き飛ばす。 


ビュンビュンッ!!!


グサッ!!!


「ヴッ!?」 


飛ばされた骨の破片が観音菩薩の右足の脹脛に刺さるが、観音菩薩は体勢を崩しながらも走り続ける。


タタタタタタタタタッ!!!


「はぁ、はぁ!!!なる、かみ!!!」


「っ!!!」


バッ!!!


観音菩薩の叫び声を聞いた鳴神は、意識を取り戻し体を起き上がらせた。


「鳴神、観音菩薩と共に下界に行って如来と合流して下さい。ここにいては、我々は無駄死してしまいます。貴方の隊員達も事情は知っています」


「陣形を見たら分かる。天部、鳥居を降ろせ!!!観音菩薩、手を伸ばせ!!!」


「っ!!!」


ドォォォーンッ!!!


鳴神の呼び掛けを聞いた観音菩薩は手を伸ばし、伸ばされた手を取った鳴神の前に鳥居が降り立つ。


現れた鳥居を見て、瞬時に温羅が鳴神達の元に向かって走り出す。


「急いで鳥居を潜って下さい!!!温羅がすぐ側まで来ています!!!」


「天部っ、必ずまた後で四人で会おう!!!」


「えぇ…、四人で」


鳴神と観音菩薩が鳥居の中に吸い込まれて行く瞬間、一筋の光が天部の首元を通る。


シュンッ!!!


ズシャッ!!!


天部の首元から勢いよく血が噴き出し、その場で力無く天部は地面に倒れ込む。


ドサッ。


温羅が持つ刀から血が滴り落ち、その血が温羅の足元に倒れている天部の物だと分かる。


「天部!!!お前等ああああ!!!」


怒りで身を任せた明王が温羅の元に走り出そうとした時、星熊童子が明王の後頭部に銃口を突き付けた。


カチャッ。


カチンッ、カチンッ。


ゆっくりとシリンダーを回し、星熊童子は明王に最後の問い掛けをする。


「言い残したい事はある?」


「これだけ殺したんだ、お前等は必ず地獄行きだ。最後によ、この戦いに勝のは観音菩薩達だ」


明王がそう言った瞬間、星熊童子は一気に引き金を引いた。


バアァァァンッ!!!


ドサッ!!!


撃たれた部分から血を流しながら、明王は星熊童子の足元で崩れるように地面に倒れる。


「天国なんて望んでないよ、私は」


そう言って、星熊童子倒れた明王に向かって言葉を吐いた。



***


同時刻 下界 平頂山


阿修羅の言葉を聞いた美猿王は口角を上げ、不敵に笑いながら口を開く。


「お前、悟空達を修羅道に堕とす為に、経文も一緒に堕とすって言ってたのを覚えてるか?」


「あぁ、勿論」


「だったら、何で箱の中に経文が入ってなかったんだ?」


阿修羅の言葉を聞いた悟空達は、一斉に美猿王の方に視線を向けた。


「テメェ、初めから経文を堕としてなかったのか…」


「俺がお前等の為に経文を堕とすとでも思ったのか?堕とす訳がないだろ。何で、俺がこんなくだらない遊びを開いたと思ってんだよ」


悟空の言葉を聞いた美猿王の表情が、とても恐ろしかった。


哀れみと怒りの含んだ表情は、これ以上の言葉がなくても説明が付く表情だったからだ。


「阿修羅、お前も少しの時間を過ごしただけで毒されたのか。笑えるな、修羅道の守り神なのにな。簡単に心が揺らいでしまうのか。お前の事を高く買っていたんだが、俺の見当違いのようだ」


「美猿王、無駄に長く生きてきたから多少の時代の動きが分かる。お前のやり方だと、誰も付いて来れなくなる。今、お前に付いてきている仲間も」


「お前は何も分かっていないんだよ、阿修羅!!!」


阿修羅と美猿王の会話に割って入って来たのは、蹴り飛ばされた金平鹿だった。


金平鹿は何故か泣きそうな表情を浮かべながら、阿修羅の胸ぐらを掴みながら叫ぶ。


「王の事をよく知らないくせに、知ったような口を叩くな!!!俺達はあの人が鬼の為に、何度も何度も殺される所を見てきた。酷い殺し方だったぜ、俺達の体を拘束して、俺達の目の前でっ!!!指を斬り落とし、手足を斬り裂き、叫び声一つ上げない王の事を見下してよ。なぁ、どんな気持ちだったんだよ、どんな気持ちで見てたんだよ!!!」


「!?」


金平鹿の言葉を聞いた阿修羅は押し黙ってしまう。


それは悟空達も同じで、彼が嘘を言っていない事が分かってしまったから。


ただ悟空だけは、当時の美猿王の光景が頭に浮かんでいた。


美猿王は激痛に耐えながら、仲間達に心配かけないように、黙って神達を睨み付けている姿を。


ピカッ!!!


美猿王の右隣にある巨大な鏡が光出し、鏡に映り出したのは血塗れの温羅と縊鬼の姿だった。


「王、仕事は終わったぜー。ただ、観音菩薩と鳴神とー、なんか副隊長?みたいな男が逃げちまった」


「お前の事だ、わざと逃しんたんだろう?」


「あはは、王にはバレちまうか。まぁ、逃した所で王からしたら何も問題ないんだろ?」


「あぁ、コイツ等に今の天界の様子を見してやれ」


そう言うと鏡から温羅達の姿がなくなり、今の天界の状況がすぐに映し出される。

 

映し出された光景はあまりにも悲惨なもので、首なしの天界軍達が一列に座らされ、斬られた自分の頭を持たされていた。


その姿はまるで、許しを乞うような懺悔しているようにも見え。


木の槍に突き刺さられた神達の体から流れ出した血が、地面が血の海化とし真っ赤に染まっている。


「や、やめろおおおおお!!!」


「グアアアアアアア!!!」


ブチブチブチブチッ!!!


嫌がる神達の体を持ち上げる骸骨達は、鋭く尖っている木の槍の上に持ち上げた体を乱暴に堕とす。


木の槍が下から体の中を突き破って行く音、目や鼻、口、耳と穴と言う穴から血が溢れ出ている。


見ているだけで気分が悪くなる胸糞悪い光景が移し出されていた。


「いやあああああああああ!!!」


「ギャアアアアアアアアア!!!」


神なら男も女も関係なく次々と設置された木の槍に突き刺され、血肉と悲鳴が飛び交う。


天界にいる温羅と縊鬼の二人は、痛みに悶え苦しんでいる神達を涼しい顔で見つめていた。


神達の苦痛に歪む顔を見ても、何一つ感情が動いていないようだ。


誰が見ても、美猿王が命じた神達の処刑方法は酷いものだと分かる程だ。


「我々が何をしたと言うのだ!!?」


「お前達に何もしていないだろう!!!?」


泣き叫ぶ神達の言葉を聞いた温羅の口元から、スッと笑みが消える。


「何もしてない?おいおい、冗談キツイぜ。何?今更、とぼけるきか?」


「ほ、本当だ!!!わ、わた…」


「俺達が鬼だって分かってる?アンタ等が昔、俺達一族にしてきた仕打ちを覚えてない訳ないだろ?」


「あ、ああああああああああっ!!!!」


鬼と言う言葉を聞き、何かを思い出したのか神達は温羅の足元に縋りついた。


「許してくれ!!!あ、あれは、不可抗力だったんだ!!!」


「み、皆が鬼達の事を恐れていたからっ、ああしないと天界に住む天界人達が安心して暮らせなかったんだ!!!仕方がなかったんだよ!!!」


「何度でも謝る、謝るから殺さないでくれよ!!!」

「アハハハハハ!!!さっきまでの威勢はどうしたんだよ神様。アンタ等は高貴な態度の下に醜いした心を隠してたんだよな?」


パシンッ!!!


命乞いする神達に冷たく言い放った温羅は、足に縋り付いてきた神達の手を払い除ける。 


「いくらなんでも、やり過ぎじゃねーのか…」


「やり過ぎ?お前の目から見たら、そう見えるか?李」 


李の言葉を聞いた美猿王は、冷たく李に言い放つ。 


美猿王の視線に耐えきれなくなった李は、バツが悪そうな表情を浮かべながら顔を逸らす。


「これがお前のやり方かよ」


「何故、俺が温羅達に命令したと思ってんだ?ただの遊びだとでも?」 


悟空は美猿王の言葉を聞いて、少し前に読んだ鬼の伝承に書かれていた内容を思い出した。


「お前等も同じようにやられてた、そうだよな」


「「っ!!!」」


悟空の言葉を聞いた猪八戒と沙悟浄の二人は、ハッとした表情を浮かべる。


「神達に対しての見せしめ…、そう言う事か」


「神だけじゃない、世界にだ」


「世界…だと?」


「この世界は神が神の良いように作った世界だ。もう今までと同じように、好き勝手にさせない為の…、見せしめとでも言っておくか」


沙悟浄の追い掛けに答えながら、美猿王は静かに立ち上がる。


「悟空、俺のやり方が気に入らないのなら、殺してでも止めてみろ。俺達は先に進む。夜叉、金平鹿、行くぞ」


「おい、どこに行く気だ」


「天竺に向かう、終わりと始まりの場所に行く」


「経文も持ってねーのに、天竺に行く意味なんかあんのかよ」


悟空の言葉を聞いた美猿王は、どこか子供のような表情を浮かべながら悟空に尋ねた


「天竺って、どんな所だと思う?悟空」


「は?何んだよ、その質問に意味あんのかよ」


「俺はよ、何にもない所だと思うんだよ。町も人も木も生物も何もかもな」


「何で、そんな無邪気な顔して聞いてきたんだよ」


思った事を美猿王に聞いてみたが、美猿王から帰って来る言葉はなかった。 


何もこ答えずに夜叉と金平鹿を連れて、美猿王は泣き崩れる源蔵三蔵の前に立つ。


「心が折れたか、情けない。悟空、こんな人間と共にいたら無駄死にしるだけだぜ」


「あ、僕も一緒に行くよ〜!!!」


牛頭馬頭が慌てて、去り行く美猿王の後を追いかける様に走り出した。 


美猿王達がいなくなった広間に嫌な静寂さが訪れ、悟空達は床に黙って座り込んだ。 


「悟空、その左目の件も修羅道で何があったんだ」

「…、百花が牛鬼を刺して死んだ。牛魔王も、俺の目の前で爺さんと橋を渡って行った。経文も取り返すって言ったが、忘れてた」


沙悟浄と悟空の会話に、猪八戒が割って入る。


「百花が牛鬼の事を刺した…?じゃあ、小桃ちゃんの目の前で死んだって事か…。経文の事は、最初から美猿王は落としてなかったんだろ?だったら、悟空が気にする事じゃ…」


「百花はどのみち、長くはなかった。アイツの体は内部から腐敗を始めていたからな。修羅道に来た時から、百花はお嬢の為に死ぬつもりだった」


「えっと、アンタは白虎なんだよな?黒風も修羅道で生き還ったって事?」


「は、はい、そんな感じです」


猪八戒が人間化した白虎と黒風と話していると、悟空達の目の前に鳥居が降り立った。


ドゴォォォーンッ!!!


ドサッ!!! 


鳥居の中から傷だらけの観音菩薩と鳴神が勢いよく、床に転がり落ちる。


「あ、観音…」


「如来!!!」


ガバッ!!!


哪吒の呼び掛けに答えずに、観音菩薩は眠っている弥勒如来の元に駆け寄り抱き付く。


「悟空、その左目はどうしたんだ!!!?」


「あー、うるせえな親父。大した事ねーわ」


「大した事はあるだろうが!!!」


「過保護なのは結構だが、今はこれからどうするかの方が重大だろが!!!」


悟空と鳴神が言い合いをしてる中、毘沙門天と吉祥天の背後から長い伸び、背後に渦巻く黒い渦の中に引き摺り込まれた。


ズルズルッ!!!


「「っ!!?」」 


二人は叫ぶ暇なく結界の中に引き寄せられ、目の前にいる人物を見て目を丸くさせる。


「アンタは天帝じゃないか!!?今更、私等に何の用なのさ!!?」


「そんな偉そうな態度を取って良いのかな?返してほしくはないのかい?」


「「っ!!?」」


戸惑う二人の前に釈迦如来は、神力の光の玉を見せつけた。


「君達が今の姿を捨てて、更に進化した姿になっても良いなら…、返してあげるよ?」


「それはどう言う意味ですか…、天帝」


「そのままの意味さ。人と言う器を捨てて、新しい人類になるんだ。そう、君達二人で、この世界の禁忌の存在に生まれ変わるんだ!!!」


毘沙門天野問いに答えた釈迦如来は、今まで見た事がないくらい楽しそうな表情を浮かべていた。



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