裕介の寝顔を見ながら、美奈子は裕介の腕に掴まる。
裕介は元々性欲が薄い。
付き合った当時から、それは分かっていた事だった。
美奈子と裕介が知り合ったのは合コンの席で、美人の美奈子にみんなが群がる中、裕介だけは距離を持っていた。
裕介は優しそうな甘いマスクのイケメン。物静かな感じで、それでも隣の席の相手と冗談を言い合いながら会話も楽しめる。
小学校の教師だと聞いて、ハメを外さない真面目な人なんだと美奈子は思った。
美奈子も裕介と話してみたいと機会を見ていたが、なかなか2人の距離は縮まらなかった。
「じゃあ、場所を移すか」
男性幹事の声で一次会が終わって外に出ると、男性幹事がみんなに声をかけてきた。
「ごめん、僕はここで。皆さん、楽しかったです。また」
裕介がみんなに手を振ってあっさりと帰ろうとした時、美奈子が慌てて裕介を呼び止めた。
「志田さん!」
振り返る裕介。
「あのッ!あまり話ができなかったけど、今夜楽しかったです。またみんなで会ってください」
美奈子から声をかけられてびっくりした裕介だったが、にっこり笑うと頷いた。
「はい。また会えたら良いですね。おやすみなさい」
裕介の笑顔に美奈子はときめいた。
いつも周りにいるタイプじゃないことに好感が持てた。
「なーんだ、美奈子ちゃんはやっぱり裕介みたいなのがタイプかよー。でもあいつは無理だよ。合コンに来ても彼女作ったことないから」
美奈子に言い寄ってきていた男性幹事が言う。
「え?」
「あいつ、根っからの真面目君だから、付き合いは良いけど、恋人にする女はやっぱり同じ教師とかなんじゃないのかなぁ」
確かに男性幹事が言うように、裕介は真面目で付き合いは良かった。
その後の飲み会やバーベキューなどにも顔を出したが、美奈子との距離が縮まったのは出会って半年以上経ってからだった。
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