「ねえ、聞いてよ、昨日アイツがさぁ。」
「朝来て開口一番に何よ。」
「ごめんごめん、おはよ。それでね、」
「ん、おはよう。はいはい。」
彼女はいつでもそうだ。
毎朝決まって、「アイツが。」
大嫌いで大好きな彼の話。
「でね、〜でさ、ね、酷いでしょ。」
早く仲が悪くなっちゃえ。
「ほんと、仲良しだね。アンタたち。」
「何言ってんの。そんなわけないじゃない。」
もう縁を切ってしまえ。
「いっそ結婚したらいいじゃん。」
「ねえ、さっきの話聞いてたの。もう、知らない。」
私の気持ちも知りもせず。
「だって、夫婦喧嘩にしか聞こえないもの。」
私の方が、こんなにも好きなのに。