「なあ、親父、、」
時間は少し戻ってアメリカとイギリスが出ていったとき。
アメリカは足早に歩くイギリスを追いかけながら声をかけ続けていた。そのいずれもイギリスから声が返ってくることは無い。
アメリカの心は曇っていた。日帝と仲間割れしたことも、2人を置いていったことも、正義を掲げる純粋な彼には受け入れ難いことだった。
そして何より、何時にもなくイギリスがらしくなかった。イギリスは滅多に感情的にはならないし、喧嘩はフランス関係以外はいつも傍観している側だ。
そんなことを考えている間に、イギリスの背中は小さくなっていた。そう、歩く速さが段々と上がっているのだ。
アメリカは置いていかれぬように、必死に不安を振り払って大きく1歩を踏み出した。
ふと、背後に気配を感じた。
害は無い印象を受けたが、何故か胸騒ぎがした。
視界の端に、海賊の装いが見えた。それを目で追っていくと、その先にはイギリスの姿があった。
「親父!!」
そう叫んだときには彼らは消えていた。
いつものアメリカならば、ここで追いかけている。それなのに動けなかったのは、背後の気配が近づいてきたことに気がついたからだ。
とてつもなく嫌な予感がする。体がこわばってしまって、硬直する。
「あんなのを気にかけるんだ」
背後の声により、意識が一気に現実に引き戻される。ひどく幼い声だった。
しかし、その幼い声によって紡がれた言葉は、アメリカにとって無視できないものだった。
振り返ると、
そこには写真そっくりの少年がいた。
驚きは薄かった。海賊の装いが見えたことから、予想はついていた。
「親を気にかけるのは当然のことだ。お前ら、親父に何をする気だ!?」
「それが本来の親ならね。別に危害を加える気は無いから、安心しな。」
「本来の親なら?」
何だ、何だ何だ!?全く理解できない!!
頭が追いつかない。
こんな時、きっとイギリスならばすぐに冷静になって対処できるのだろう。
だが、アメリカにはそんな器用なことはできやしない。感情は抑えることができず、言葉となって溢れ出る。
「なんなんだお前らは!俺と親父は正真正銘の親子だ!それを否定するだなんて、一体何が目的だ悪党め!」
「そっか。君は、あんなのの為に怒れるんだね。大丈夫、君たちが親子なのには変わりないよ。でもね、父様は酷い人だ。僕を子供として愛してくれたことは無かったと思う。」
「何が言いたいんだよ!お前は、俺たちのなんなんだ!!」
「僕たちは君たち自身だよ」
アメリカがどれだけ叫べど、少年は表情を変えることが無い。まるで人形のようだ。
もはや苛立ちを通り越して不気味だ。
アメリカはついに銃を取り出した。
迷っている暇は無い。さっさと目の前の問題を片付けなくてはならない。武力を持ちだせば何かが変わるかもしれない。
少年に銃を向け、引き金に震える指をかける。
「お前らは、敵だろ?だ、だから、、俺が、俺が倒さなくちゃ、、」
口ではそう言っても、アメリカは引き金を引けなかった。
銃を向けられたのにも関わらず、少年は怯えることも焦ることもし無い。
そして、少年はアメリカの方へ歩いて行き、銃口が体に当たる地点で止まった。
「そう。それでいいんだよ。」
少年は下ろしかけた銃を掴んで、諭すかのように言った。
「大丈夫、大丈夫。何も怖くない
撃ちなよ」
アメリカは目をぎゅっと瞑り引き金を引いた。
銃声と同時に真っ赤な返り血が散って、気味の悪い鮮やかさが周囲を彩る。
恐る恐る目を開けると、そこには冷たくなってもう動くことの無い少年と、血に塗れた自身の体があった。
数秒後、自分のやった事を自覚し、ぐらりと世界が暗転するような感覚に襲われる。
それと同時に無数の”声”が頭の中に響く。
「俺の教え、今後一生大切にするんだぜ?」
「待って、待ってください!」
「お前は正義なんかじゃない。」
思い出せない。
そんな中、その声を遮るように聞き慣れた声が届いた。
「アメリカ!!」
「あーあ、バレちまったか」
3人しかいない部屋で、足音と声がよく響いた。
「国際連盟…」
「答え合わせは終わりか?ならば目的を聞かせてもらおうか」
姿を現した黒幕、国際連盟はニヤリと笑みを浮かべて拍手をした。
「ああ、正解だ。流石ナチス」
「焦らないのか?」
「え?焦る?」
「今、お前は正体暴かれて追い詰められているところなんだぞ?」
ソ連が鎌を取り出し脅すように言うと、国際連盟は1歩退いて、首を傾げた。
「本当に、俺の正体がわかったと?」
「は?」
「まあ良いや。記憶持ちはお前らだけじゃないだろ?そこでさっきから盗み聞きしてる枢軸のお二人さん?」
「―!」「ひぇっ!」
上手く躱された上、国際機関相手に姿を隠せるわけも無く、日帝とイタ王が居ることを言い当てられてしまった。
国際連盟は加えてこう続けた。
「特別にお前らは先に案内してやるよ」
コメント
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久々の能力戦争だぁぁッッ✨️ 黒幕の正体は...?! 気になりすぎるぅぅぅッッ🥺