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一つ、深呼吸をして、俺は話し始めた。
俺は、827年に現在のイギリスで生まれた。
その時はまだ、イングランド様もスコットランド様も生まれていなかったからな、一人だった。
自身の主の居ないドールは至って暇だ。だが、俺は、毎日、毎日、毒耐性を付けるべく毒を食し、どんな事があろうとこれから生まれる主の為に多少の無理な動きも出来るようにした。
そんなある日、俺達ドールのリーダーである愛華が俺を訪ねてきた。
「お前にとっては、初めましてか。私は初めのドールであり、お前達ドールのリーダー、愛華だ」
たったその二言だった。その二言で、彼女がとんでもないドールだと理解できた。誰よりも強く、カリスマだというのを本能的に理解した。
「俺は英厳だ」
圧倒され、たった一言、その一言しか言えなかった。
「生まれてまだ数年だというのに、随分と無理をしているようだな」
愛華のその一言は的確だった。
「まぁ、お前の生きる時代には必要かもしれんが、それをお前がする理由が分からない。何故、他者に毒味を任せようとしない?」
愛華が問いかけてきたのは至ってシンプルな質問だ。
そして、俺の答えもシンプルな物だ。
「他者を信用して良いかが分からないからだ」
一言そう言うと、愛華はそっと口角を上げ、「合格だ」と言い放った。
「お前の生きるこの国の歴史には、他者を信じ過ぎてはいけない時もある。どれほど親しい仲の者であろうと、スパイの可能性もある。お前のその心構えは丁度いい」
続けてスラスラと英語で愛華は話し続けた。彼女はこの国の者ではなく、極東の国の化身のドールだと聞いたが、あまりにも流暢に話すから驚いた。
「そんなお前に、生まれた祝として、家をやる。これから必要になるだろうからな。広めに作ったぞ」
そう言う愛華について行くと、三階部分まである大き過ぎる屋敷の前まで来た。
「デカすぎないか?」
「いや、これからを考えるとこれくらいが丁度いい」
ふと疑問を口にすると、愛華に鼻で笑われながらそう答えられた。
「では、私はこれで失礼する」
クルリと回り愛華は俺に背を向けた。
「本当にこれだけの為に来たのか?」
不思議過ぎてついつい眉間にシワが寄る。
「まぁ、そうだな。一つ助言としては、本気で欲したものはお前の手で掴み取れ」
「相談位なら乗ってやるさ。じゃあな」
フッと笑い、ヒラヒラと手を振りながら彼女は去っていった。
嵐のような奴だと心底思った。
その屋敷が、今をも残る、イギリス家の家だ。
それから数年の月日が流れた。そうだな、大体十六年といった所か。