習慣で点けていただけのテレビから、緊急速報のアラーム。
その音が絶えずスピーカーから響いていたあの頃は、まだましだったと思う。突然の大きな地割れとそこらを徘徊するようになった生き物。それは言葉では言い表せない異形で、謎の言語を発して夜の崩れた街を彷徨う。
昔、蛍光灯が常に輝き、沢山の商品が並んでいたコンビニは、ガラスの破片が散らばり、食料品が並んでいたであろう棚は倒れ、歪んでいた。
カウンターから行ける休憩室の扉は少し隙間が空いていて、そこから甘ったるい匂いと煙が天に向かって伸びていく。
長い黒髪を下ろし、壁にもたれる女は身体に毒を与えていることを自覚しながらも毒を吸う。肺に、喉に。血液を使って巡らす。彼女の好みは苦い煙草だが、こんな時勢、贅沢も言っていられない。生きる意味もないまま、ただ、その日を生きている。
「……甘…」
そういうとぷかり、不味そうに毒をを吐き出した。