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翌日、ロメオの処置と調合した薬草が効いているのかシャーリィの怪我は順調な回復を見せており、肩に不安はあるが足の怪我は綺麗に塞がっていた。

「これで車椅子とはおさらばですね」

「だからって無理はすんなよ、シャーリィ。まだ怪我してるところはあるんだからな」

ルイスと並んで農道を歩くシャーリィ。その表情はいつものように無表情ではあるが、声が弾んでいた。

「分かってますよ、ルイ。色々心配をかけました」

「謝るのは俺の方さ。っと、それより今日は妹さんと一緒じゃ無いんだな?」

「レイミはエーリカと面会していますよ。エーリカは感動し易いので、色々と大変ですから」

しれっと口にするシャーリィにルイスは首をかしげた。

~療養所~

「レイミお嬢様ぁあああっ!!」

「落ち着いて、エーリカ!身体に障るわ!」

(お姉さま!これを知ってて私一人に行かせましたね!?)

号泣するエーリカを相手に右往左往するレイミは、ちょっとだけ姉を恨んだ。

~再びシャーリィ達~

「今日は何をするんだ?」

「動けるようになったので、マスターにご挨拶をと思いまして」

「ならダンジョンか」

「ご安心を、流石に稽古を乞うつもりはありませんよ。万全でないことは重々承知していますから」

「なら良いけど……気を付けろよ」

「ええ、ありがとう」

シャーリィは一人ダンジョンへ入り、ワイトキングと再会を果たす。

「マスター、長らく留守にしました」

『良いのだ、勇敢なる少女よ。悠久に存在する我にとって、数日など瞬きに等しい』

ダンジョン内部とは思えない荘厳な装飾の施された広間でワイトキングはシャーリィを迎える。

「そうでしたか。色々ありまして、お尋ねしたいこともあります」

『であろうな。そなたはその身に宿す力を自覚したと見える』

「やはり、マスターはご存じでしたか」

『無理に目覚めさせるものではないと判断した。なによりそなたの魔力は量こそ膨大であるが魔法を行使することに向かぬ』

「ですが、窮地で使うことが出来ましたが」

『その魔法剣を通して、であろう?』

「はい」

『魔法とはすなわち、世に存在する精霊に魔力と言う餌を与えて行使するものである』

ワイトキング曰く、精霊にも好みがありその好みに合致した魔力属性の精霊の力のみを行使できる。

レイミの魔力は氷属性の精霊の好みであるため、氷属性の魔法を行使できるのだ。

「ですが、私は使えないと?」

『そなたの魔力は様々な属性が混ざり合ったもの。故にそのままではどの精霊も寄せ付けぬ。が、解決策もある』

「それが魔法剣。いや、魔石でしょうか?」

『である。魔石は魔力を溜め込んだ器である。それを通すことでそなたの魔力を精霊好みに変換することが可能であるようだ』

「まるで、ろ過ですね」

『その認識で正しい。非常に稀有な才能である。様々な属性を内包しておる故に、それは様々な魔法を行使できる可能性を秘めておる』

ごきげんよう、シャーリィ=アーキハクトです。何故かとんでもない才能を持っていたことが判明しました。

いや、あの規格外なお母様の娘なので、不思議と納得してしまうのですが。

だって十歳で一つ目の巨人サイクロプスを一人で討伐してしまうような人ですから。

「マスターがご存知と言うことは、前例があるのですね?」

聞いてみることにします。前例があるなら、学ぶのも簡単ですからね。

『勇者である』

……はい?

『そなたらが勇者と讃える、かの若者が持っていた特性である』

「はぇ!?」

勇者!?あの魔王を討ち滅ぼした伝説の勇者!?

『勇者は数多の魔法具を用いていたと伝承されておる筈』

「はい、魔法剣などが有名です」

これらは勇者を信仰する『聖光教会』が聖遺物として大切に保管しているのだとか。小さな頃お父様から教えていただいた事があります。

『用いたのではない、用いねば魔法を行使できなかったのである。そう、そなたのように』

「私が、勇者様と同じ……」

『故に勇者は地水火風の主要なものから光、闇などあらゆる魔法を行使できたのである。我も相対した時は驚いたものである』

「そんな伝承はありませんが……」

『人間にとって都合が悪いのであろう。現にそなたの妹のように魔石を通さずとも魔法を行使できるものは、極めて稀少ではあるが存在するのだ。そなたも勇者も、魔石がなければなにも出来ぬ』

悪い言い方をするなら私は可能性を持ってはいるものの、自由に魔法を使えるレイミの下位互換とも言えます。

優れた妹を持てて誇らしいですね。

「だから魔法剣から光の刃が出たのですね」

『そなたの本質は闇であると想定していたが、光であったか。聖なる魔力を感じたのは、そなたであったのだな』

「私の本質は光?」

これでも腹黒いことや猟奇的なことをしてるんですが。主に地下室で。

『本質が闇であれば決して光属性の魔法は使えぬ。可能性も無限大。修練次第で勇者のように様々な魔法を行使できよう』

「それは、便利ですが危険ですね」

だって個人で様々な魔法を使える可能性がある小娘ですよ?利用しようとすれば何でも出来ます。

なにより、帝国が放っておかないでしょう。

いや、『聖光教会』だって怪しい。

『左様、その力は人間社会では異端となろう。まして、勇者と同じであるならばな』

勇者の狂信者集団である『聖光教会』は、私の存在をどう扱うのか。排除か教主に担ぎ上げられるか。

どちらにせよ、ロクな事になら無いのは間違いありません。

「公言は避けた方が良さそうですね」

『それが賢明であろうな。そなたは我を師と仰ぐような稀有な人間ではあるが』

変わり者みたいに言わないでください。自覚はありますが。

「厄介ごとが増えそうな気がします。レイミ曰く、魔力を持つものは魔力の残滓を感じ取ることが出来るとか」

『なれば、これまでと変わらぬな?勇敢なる少女よ』

「はい、マスター」

そう、変わらない。厄介ごとにはなれています。そしてそれが迫るのならば備えるだけ。

いつだって準備万端で迎えられるように。準備不足を嘆かなくて良いように。

「マスター、怪我が完治したら直ぐにご指導をお願いします。せめて自分の身を守れるくらいには、この力を使いこなさないと」

『その意気である。事実をありのまま受け入れ、咀嚼し、未知を積極的に学ぼうとするその姿勢は好感が持てる。久しく心踊るわい』

当たり前です。知らないから、怖いからでは意味がない。知らないなら学べば良い。教えを乞えば良い。

未知を学んで既知に変えれば、それは恐れではなく新しい力となるのだから。

新たな力に目覚めたシャーリィはそれを受け入れて自分の糧とする道を選ぶ。来るべき困難に備えるために。

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