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ごきげんよう、シャーリィ=アーキハクトです。
マスターとの会談で思いがけない自分自身の秘められた才能と、それを行使することで生じる厄介事を認識することが出来ました。
あの火柱を初めとして、逃走劇の際には派手に立ち回りすぎました。嗅ぎ付けられるのも時間の問題かもしれません。
伝説の勇者を信奉する『聖光教会』は勇者を唯一絶対の存在であると断定。時には苛烈なまでの弾圧や異端審問を行う過激な宗教団体です。
ですが、そんな組織が帝国の国教と言われる理由は、帝国貴族の成り立ちにあります。
端的に言えば、帝国貴族は勇者の末裔であるとされているのです。個人的に調べた限りだと勇者に子供が居る事を示す資料はないので、眉唾物ですが。
しかしそれを成り立ちとしている以上、現在の地位などを護るためには勇者の存在が必要不可欠。
となれば、勇者の狂信者集団である『聖光教会』を利用するのはなにも不思議ではありません。
そのような利害関係があって『聖光教会』は帝国の国教として根強い勢力を誇ります。時には政治にすら口を挟む始末。『帝国の未来』にある『政教分離』とは程遠い。
更に『聖光教会』は魔法を禁忌として、あらゆる魔石は『聖光教会』管理下にあります。帝国で魔石が普及しない最大の理由でもあります。
そんな『聖光教会』が偶然にも勇者と同じ力を持つ私の存在を知ればどうなるか。
「まず間違いなくお姉さまの排除に動きますね。どうやら『聖光教会』はお母様の存在も危険視していましたから」
ダンジョンを後にした私はレイミに相談することにしました。私の見解を聞いたレイミは険しい顔をして意見してくれます。
と言うか、『聖光教会』にすら睨まれていたんですね、お母様。
「お母様は色々規格外なのでこの際気にしませんが、やはり狙われますか」
「シスターに話すべきではありません。いくらお姉さまの恩人と言えど彼女は『聖光教会』の人間です」
当然ながらシスターも『聖光教会』所属。この寂れた教会は『聖光教会』シェルドハーフェン支部です。
シスター以外誰も居ませんし、シスターも修道女か怪しい部分がありますが。
「レイミはシスターが信じられませんか?」
「お姉さまの恩人なのです。出来れば信用したいのですが、この件に関しては慎重に行う方がよろしいかと」
ふむ、レイミの慎重な意見も大いに理解できます。が、だからこそ私はシスターを信用したい。
「レイミの意見は理解しました。ですが私はシスターに話そうと思います」
「お姉さま……」
「そんな悲しそうな顔をしないでください。お姉ちゃんの意志が挫けそうになるじゃないですか」
「それは失礼。理由を聞かせて頂けますか?」
「私情によるものですよ。今現在レイミ達家族を除けば最も信用できる方はシスターです。そのシスターを信用しないとなれば、誰を信用しますか」
あっ、ルイは別ですよ。信用云々以前の問題ですから。
「……分かりました。例えなにが起きてもお姉さまをお守りします。私はそのために強くなったのですから」
「頼もしくなりました、レイミ。でも、ただ護られているだけだと私の威厳がありませんから、お手柔らかに」
私は頼もしくなったレイミに笑みを浮かべて頭を撫でました。
……身長差?|背伸び《気合い》でなんとかしましたが?
レイミを愛でた私は教会に足を運びました。いつものようにシスターは礼拝堂で祭壇に腰掛けて勇者様の像を眺めています。
「シスター、お話があります」
「魔法の件ですか?」
シスターは振り向かずに淡々と言葉を返してきました。
「ご存知でしたか」
「あれだけ目立つなと言ったのに、全く仕方の無い娘です」
そっとシスターは祭壇から降り、振り向いて私を見つめます。
「私もビックリでした。いや、それ以上にシスターがご存知なのがビックリですが」
「先ほど連絡が来たのです。最終的解決のために、異端に対する決然とした行動をするようにとね」
シスターがゆっくりとリボルバーを……私に向けました!?
「シスター……!?」
「魔力検知の結果、魔法の行使を確認。それも魔石ではなく、勇者のそれと同じものである可能性が高い。速やかに対象を排除せよとね」
シスターは淡々と語りかけてきます。
「……私はずっと監視されていたのですね?」
「シャーリィ、貴女は『聖光教会』に危険視されていたヴィーラ=アーキハクトの長女です。三年前に『蒼き怪鳥』とやり合った時、貴方の存在が教会に露見したのです」
あの時に!?
「それ以来、全く音沙汰がなかった本部から指示が届くようになりました。有り体に言えば、シャーリィを監視するようにとね」
「それで、シスターはそれに従ったのですね」
「ふふっ……ええ、貴女の事を事細かに報せましたよ。まあ、内容は本部の連中からすれば求めていないものばかりだったようで、いつの間にか監視する人員が派遣されていたようですね」
「その監視に今回の件が露見したと」
「その通りです」
そうだったのですか……。
「そして最終的な命令が下されたと言うことですか」
「ついさっきね」
私は銃口を向けられたままですが、不思議と恐怖は感じません。だってシスターの目は何処までも優しいのですから。
「ではシスター、端的に。撃つのですか?」
「今ここで殺してあげるのも親心であると考えています。『聖光教会』に追われるような人生は最悪ですよ。万が一捕まった異端者がどうなるか、連中のやり口は良く理解していますから」
拷問とかするんだろうなぁ。私がやってる以上なのか気になりますが。
「先ずは優しさに感謝します。ですがその親心は不要ですよ、シスター」
「シャーリィ」
「私はまだまだ死ぬわけにはいきません。それに、今の話を聞けばあの日に『聖光教会』が関与している可能性が高いと考えます。つまり、『聖光教会』もまた私の復讐すべき相手なのです。敵です。敵なら殲滅しないといけません」
失念していました。『聖光教会』はお母様を敵視していました。よくお屋敷に宣教師が来ていましたね。いつもお母様が追い払っていましたが。
「下手をすれば帝国そのものを敵に回しますよ?」
「それでも構いません。それが私の変わらない目標なのですから。そして私が知りたいのは、シスターがどうするかです」
「私ですか?」
「出来るならば、これからも母として私を支えて欲しいのです」
「私に教会を捨てろと?」
「そうです。と言うか、銃を降ろしてください。撃つ気もないくせに」
だって、銃口をが揺れているんです。シスターの迷いを現すようにね。
「……少しは動揺してくださいよ、シャーリィ」
シスターはリボルバーを下げました。
「少しビックリしましたが、それだけです。シスターの報告だって『聖光教会』が求めるような内容では無かったのでしょう?」
「ええ、貴女の成長日記みたいなものをね」
それはそれで恥ずかしいです。
「もしシャーリィが怯えるようなら撃っていましたよ。死なせてあげるつもりでした。でも、貴女は『聖光教会』を敵に回す事に躊躇しなかった」
「する必要がありません。むしろ分かりやすいです」
「ふふっ……面倒事が増えますよ」
「慣れていますよ、より一層備えるために組織を強化しないといけません」
「分かりました。では、私も覚悟を決めましょう。シャーリィ、私の決断を後悔させないで下さいね」
「当たり前です、シスター」
『聖光教会』、私の新しい敵が現れました。よりによってシスターに私の始末を命じるような連中に遠慮する必要はありませんね。
私はシスターと抱擁を交わして決意を新たにしました。
……お胸様がすごーい……ファック。