テラーノベル
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「藍音ちゃーん!」
昼休み。
クラスメイトの美咲が駆け寄ってきた。
「今日さ、一緒に帰ろ!」
「え、うん…いいけど」
その瞬間。
教室の外がざわついた。
「え、誰あれ」
「モデル?」
「スーツの人いるんだけど」
藍音は嫌な予感がした。
窓の外を見る。
――いた。
湊だった。
(なんで来てるの!?)
しかも。
隣には女性がいた。
長い髪の綺麗なお姉さん。
大人っぽくて、スタイルも良くて。
二人は楽しそうに話している。
胸が――
チクッと痛んだ。
「藍音?どうしたの?」
「……なんでもない」
でも視線は離れない。
(誰…あの人)
放課後。
校門に行くと湊がいつも通り頭を下げた。
「お迎えに参りました、お嬢様」
「……」
「どうかなさいましたか?」
藍音は思わず言った。
「さっきの人、誰?」
「さっき?」
「一緒にいた女の人」
一瞬。
湊は驚いた顔をした。
そして少しだけ笑った。
「取引先の方です」
「ふーん」
「気になりますか?」
「別に」
即答だった。
でも。
心は全然別だった。
沈黙。
歩きながら藍音は小さく呟く。
「……綺麗だったね」
「ええ。優秀な方です」
その言葉で。
胸がギュッと締め付けられた。
気づけば立ち止まっていた。
「お嬢様?」
藍音は顔を上げた。
「……湊ってさ」
「はい」
「彼女とかいるの?」
空気が止まる。
数秒の沈黙。
そして湊は静かに言った。
「おりません」
「……そ」
「ですが」
藍音の心臓が跳ねた。
「お嬢様以外に時間を使う予定はありません」
「え?」
「私は貴女の執事ですから」
ドクン。
胸が大きく鳴る。
嬉しいのか。
苦しいのか。
自分でもわからない。
その夜。
藍音はベッドの中で顔を埋めていた。
(なんで安心してるの…私)
(なんでモヤモヤしてたの…)
答えはまだ。
知らない。
でも確実に――
何かが始まっていた。
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ほ~