「元貴知ってた?ディズニーで結婚式出来るんだって!」
家に帰ると俺より先に帰っていた若井が嬉しそうに教えてくれる。
「へぇ、そうなの?ミッキーとか来るの?」
「ホテルでの式みたいなんだけどね、来てくれるみたい、元貴はどのキャラクター呼びたいとかある?それとも海外の南の島で2人きりとかがいい?」
なんだか変な質問だ、まるで俺が結婚式するみたいな。
「若井さん?えーっと何の話してるの?」
「結婚式の話!」
「だね、誰の結婚式?」
きょとん、として若井が俺を見つめる。
「そんなの決まってるでしょ、俺と元貴の結婚式だけど?他に誰かと結婚するなんて許さないし」
「はぁ···?全然意味わかんないけど」
「テレビで言ってたじゃん!結婚したいって!!」
そこで俺はやっとわかった。テレビの占いしてもらった番組で結婚したい、と言ったのが、放送されたことを。
確かに言った。言いましたとも。
そりゃ願望としてはある、ただ晩婚ですねって言われて、それに若井と付き合ってるのだから、結婚式、というキーワードが俺の中にはそもそも無かったのだ。
「タキシードは白?黒?いっそドレス着ちゃう?どれも似合うだろうなぁ」
若井は今にもゼクシィでも買ってきそうなくらいの勢いだ。
「今の日本じゃ同性は結婚出来ないって知ってる?」
「バカにすんな、知ってるよ」
「じゃ、なんでそんなこと···」
「元貴占いで晩婚って言われてたじゃん!たぶんね、しばらくしたら日本でも結婚出来るようになると思うのよ、俺」
「はぁ」
「そしたら俺は元貴と結婚するの!だから今からどんな式がいいか考えとこうと思って♡」
「例えそれが10年とか15年先とかでも?」
「うん、当たり前じゃん」
なんで若井はいつだってそんなに俺との未来を少しも疑わずに居てくれるんだろう?真っ直ぐな瞳で見つめる若井が俺にはいつも眩しすぎるくらいだ。
「···そんな先の事なんてなんにもわかんないじゃん。不変なんてないんだよ。色んなものが変わって俺から離れて行く人たちもいるのに、なんでそんな風に言えるんだよ」
どんなに大切にしてても相手が無理だと思ったらもう引き止められない、一緒にはいられないと俺は経験から痛いほどわかってる。それは若井だって一緒だろ?
「俺は元貴みたいに上手く言えないけど···変わらないものも確かにあると思うんだよね···形がないものだけど、絶対に存在してるっていうか···それを俺は元貴に対してずっと持ってきてるし、これからもそれは持ち続けていくから、一生」
一生。その重すぎる言葉が胸に刺さる。
「それに元貴は変わらないものを、永遠みたいなものをずっと探してるんでしょ?俺があげられるのってそれくらいしかないから、ね」
そういって若井は立ち尽くしていた俺の頭をぽん、と撫でた。
「そんな大事なもの俺が貰っていいの?」
「元貴にしかあげたくないよ···って、なんで泣いてるの···?」
心配そうな若井の声が聞こえたけど勝手に溢れてきた涙は止まらなくて、俺は珍しく泣いてしまった。
「元貴って泣き顔も可愛いんだから···俺の前だけにしてよ」
そういって抱きしめてくれる若井にすがりついて俺は幸せを感じても人はこんなに泣けるんだなと思った。
コメント
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明るくて前向きで眩しい若井さんとちょっと影あるもっくんがイイ…!!はるかぜさんのお話し、大好きです♡