テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

四鹿(よつしか)跡永賀(あとえか)の朝は早い。

というのも、隣室からの打撃音で否応なく目が覚めてしまうからだ。

「またか」


イライラで頭を掻き、短い髪が揺れる。跡永賀は早々に廊下を渡り、件(くだん)の部屋のドアを開く。そこから漂う悪臭には、悲しいことに、もう慣れてしまった。

「壁殴るのやめろって何度言えばわかんだよ、この豚野郎!」

「ぶひぃいいいいい!」


そこにいたのは、肥満体型の男だった。四鹿初無敵(そんてき)、跡永賀の兄である。十代後半だが、その肥えに肥えた体と、油ギッシュな肌と髪で、見た目はすでに中年の様相である。

「だ、だってね、アット。こいつがボクティンの嫁をね……」


太い指が差した先には巨大なテレビがあり、高画質の映像が流れていた。

「またアニメの主人公に嫉妬かよ」

何のことはない、ごくありふれたラブコメがそこでは展開されていた。典型的なイケメン主人公と美少女のやりとりである。


「深夜アニメの昼夜逆転生活も、アホみたいに高いアニメの有料放送にも文句はつけないけどよ、一々そんなことで叩き起こされる身にもなれよ。こっちには学校があるんだからさ」

すっかり汚れ曇った窓からは、まだ日は見えない。深夜と黎明の狭間だ。老人でさえ布団の中であろうこの時刻に、なぜニートのごくつぶしに叩き起こされねばならんのか。


「くそっ……また壁を殴っちまった」

言っているそばから、また壁を叩く兄。彼にとっては、弟の会話よりこちらの方が優先される。録画しているため、見逃しても問題はないはずなのだが、『放送そのものを楽しむことが大事』ということだ。


サブカルチャーに疎い――初無敵と比べれば、誰でもそうである――跡永賀にとって、その深みにある兄の言葉は、日本語であるはずなのに理解できないことが多々あった。

「それより、用が済んだなら速く出て行ってくれないか。ボクティンも暇じゃないんでね」

「毎日が日曜日の奴が何いってんだ」

「あーくそ。やっぱこの声優だめだな。声に処女らしさがない……っと」


跡永賀をそっちのけに、初無敵はテレビの横にあるディスプレイ、その前に置かれたキーボードをカタカタ叩く。なんでも、アニメをネット上で実況しているらしい。同じようなことをする人が何人もいるらしく、それゆえ盛り上がり、連帯感が生まれるんだそうな。社会で盛り上がれず、連帯できない人間のすることではない。

最弱テイマーの最強テイム~スライム1匹でどうしろと!?~

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

13

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚