テラーノベル
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思わぬ言葉に、目を瞬く。
「贅沢と散財を好むだけの娘だと思っていた」
「……随分な評価ですこと」
「否定はせぬ」
(そこは少しくらい否定しなさいよ!)
「だが――」
皇帝陛下の表情が、わずかに和らぐ。
「今日の働きが、偶然ではないことは分かった。横領を暴き、その再発を防ぐ仕組みまで示した。ならば、その能力は国家のために使うべきだ」
皇帝陛下が、大臣たちを見渡した。
「ソフィアの提案を採用する。まずは皇宮の調達部門から、新しい会計制度と監査体制を導入せよ。必要な人員と予算は国庫から出す」
「はっ!」
書記官が頷く。
(……来た!)
(予算を任される未来に、一歩近づいたわ!)
「そして、ソフィア」
「はい」
「制度設計と運用には、お前自身も加われ」
(え?)
(ちょっと待って。予算権限ゲットの前に、仕事だけドカンと増えるの!?)
「俺も支える」
横からカイル殿下まで参戦する。
「必要な人員でも予算でも、俺に言え」
「…………」
ちらりと見る。本人は、いたって真剣だ。
(まあ……)
(使えって言ったのは、そっちだものね)
私はにっこり微笑み、カイル殿下の手を取った。
「では、お言葉に甘えまして――」
ぎゅっ。
「これからも存分に、殿下のお手を煩わせていただきますわ♡」
「ああ」
澄ました顔をしているくせに。なんだか、ちょっと嬉しそうだった。
***
長かった緊急会議が、ようやく終わった。
「見事だったぞ、ソフィア」
カイル殿下が、晴れやかな顔で歩み寄ってくる。
「不正を暴くだけでなく、再発を防ぐ仕組みまで示すとは。正直、圧倒された」
「当然ですわ」
私は手元の資料を、パタンと閉じた。まるで、本日の業務終了を告げるチャイムのような心地よい音。
「数字が合わない世界なんて、私にとっては地獄も同然ですもの」
(ああ……やっと終わった……)
(疲労がヤバい……)
(もう一言も喋りたくない……)
「……ソフィア」
「何でしょう?」
「俺は今日のお前を見て、改めて――」
「お言葉ですが、殿下」
すっと言葉を遮る。
「何だ?」
「本日の就業時間は、すでに終了しております」
「……は?」
「残りの質疑応答は、明日の業務時間内に承りますわ♡」
完璧なカーテシーで挨拶を決める。
「では、ごきげんよう」
私は足早に会議室を後にした。
***
「待て!」
カイルが慌てて追いかけようとした――そのとき。
「殿下! お待ちください!」
「新制度について、至急確認したいことが!」
「監査部門の人員配置は、どのようになさるおつもりで!?」
「申請・承認・受領・支払いを分けるとは……実に合理的ですぞ!」
興奮した大臣たちが、我先にとカイルを取り囲んだ。
「どけ! 今はそれどころでは――!」
人垣の向こうで、ソフィアの背中がどんどん遠ざかっていく。パタン――。無情にも、扉が閉じた。
「…………」
カイルは、伸ばした手のまま固まった。
(……そんなに俺と話したくないのか?)
一瞬、本気で落ち込む。
(いや)
(違う。きっと疲れているだけだ)
……そう思いたい。今日の彼女は、本当に眩しかった。疑われても一歩も怯まず、自らの力で実力を証明し、最後には皇帝や大臣たちの評価までひっくり返した。
噂だけを信じ、彼女自身を知ろうともしなかった自分が、今さらひどく浅はかに思えた。
(もっと知りたい)
夫婦なのに、俺はまだソフィアのことをほとんど知らない。
(だったら、これから知ればいい)
カイルは、ぐっと拳を握った。
(俺は、絶対に諦めない)
#溺愛
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コメント
1件
うわあああ第26話読み終えたよ〜!!🔥✨ ソフィア、横領を暴いて新しい制度まで提案するなんてまさに有能ヒロインの鑑すぎる…!😭💕 皇帝陛下に「国家のために使うべき」って言わせるの、尊すぎるでしょ。そして最後の「本日の就業時間は終了しました」からの颯爽退場、完璧すぎて笑ったw カイル殿下が追いかけようとして大臣たちに囲まれてるギャップ、ちょっと可愛い…♡ もっと知りたいって思うカイルの気持ち、すごくわかるよ!この二人の距離感、じわじわ縮まってくの最高すぎる〜🌸 次話も楽しみにしてるね!