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キズカナイ【完結済】

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キズカナイ【完結済】

30 - 第1章 妊娠

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2022年02月06日

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翌日、学校が終わると、俺がいつも乗り降りしている駅に向かった。母さんが駅まで迎えに来てくれることになっていたからだ。マナは嫌々俺の後をついて来ていた。そして学校を出てから電車を乗り継いで、約束の場所に着くまでに30分以上もかかってしまった。俺一人ならもっと早く着いていたが、マナがダラダラ歩いていたせいで、倍の時間がかかってしまった。駅のロータリーには、既に母さんが車で迎えに来ていた。

「乗って」

「うん、ありがとう」

母さんに言われて車に乗り込もうとしたけど、マナは相変わらず不貞腐れて、中々入ろうとはしなかった。

「マナ、入りなって」

「――――」

「マナさん、遠慮しないで乗って」

「別に遠慮なんかしてませ〜ん」

「マナっ!」

「えっ!? 何?」

「なっ、何でもないよ。あんまり調子が良くないんだ。つわりがヒドイうえに、風邪も引いちゃってさ」

「風邪? 何で私が?」

不貞腐れているマナは、あからさまに態度が悪かった。

「いいから、早く乗れって!」

「やめろよ! わかったから押すんじゃねえよ!」

嫌々車に乗せられたが、マナの声が聞こえるんじゃないかとヒヤヒヤした。

「これから私の知り合いの産婦人科の先生に会いに行くわ。病院で会うのは難しいから、ファミレスで待ち合わせをしてるの」

「そうなんだ。迷惑かけちゃって、ホントにごめん」

「いいのよ、気にしないで!」

「マナもお礼を言いなよ」

「何で私が?」

「いいから言いなって」

「別にお礼なんて言ってくれなくてもいいのよ。それより、1日も早く処置をした方がいいわね」

「何ですか? 処置をするって?」

「あなたのお父様に知られないうちに、お腹の子をおろすのよ」

「私、おろすなんていっ――」

俺は慌ててマナの口を塞いだ。

「母さん、その話は――今とっても精神的にナーバスになってるから――」

「そっ、そうね」

それから母さんの知り合いの先生が待つファミレスに10分程度で到着した。中に入って行くと、そこには意外にも20代後半くらいであろう若い女性が待っていた。母さんの知り合いと聞いていたので、もっと年齢を重ねたベテランの医師なのかと思っていた。

「お待たせ」

「明石先生、お待ちしておりました」

「忙しいのに本当にごめんなさいね」

「いいえ、先生の頼みとあれば、直ぐにでも駆けつけます」

「ありがとう、助かるわ」

2人の会話を聞いているだけでは、どういう関係なのか全くわからなかった。

「圭太、堀越先生にご挨拶をなさい」

「こっ、こんにちは。明石圭太と申します。よろしくお願いします」

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