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「……おはよう」
その声の主は、Yukiだった。
彼女は机に伏せたまま、顔も上げずに、でもはっきりとそう言った。
クラス中が凍り付く。
「余計なことすんなよ」という無言の圧力がYukiに突き刺さる。
でも、私は知っている。今の「おはよう」が、どれほど重い言葉だったか。
私は、悪意で汚された自分の机ではなく、Yukiの席の隣まで歩いていった。
「Yuki」
ゆっくりと顔を上げた彼女の瞳。怯えている。
私はポケットから、病院でもらったあの温もりを思い出すように、スマホを握りしめた。
Yukiの席の真横に立ち、彼女の机の角を指先でそっと触れる。
「……休み時間、ここに来てもいい?」
休み時間という「変数」の時間は、私の意思で決める。
Yukiは、驚いたように目を見開いた。
周囲の嘲笑が、少しだけ引き攣る。
決められたルールの中で、私が「選択」を始めたから。
「……うん。……待ってる」
Yukiの小さな、でも明確な返事。
それは、座席表を飛び越えて届いた、初めてのパスだった。
私は自分の「呪われた席」へと歩き出す。そこには相変わらず無意味な文字があるけれど。
チャイムが鳴る。
ハードモードな1時間目の、始まり。