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うわっ……第74話、衝撃的すぎました……! ナギが魔女を倒したと思ったら、まさかのナハトが本体で、しかも背後から刺されるなんて。あの「ゲームオーバー」のラジオの声も不気味で、世界の仕組みまで見えてきた感じがしてゾクゾクしました。 シイナユウの苦しむ姿も、モリヤオサムが吹き飛ばされる瞬間も、一瞬一瞬が詰まっていて、読んでるこっちの心臓までバクバクでした……。 続きが気になりすぎます!
ナハトは素早く後方へ退避すると、魔女とシイナユウとの闘いを鋭い眼光で見つめた。 体を低くし、毛を逆立て、警戒心をあらわにしている。
しかし——やはり、ナギに気がついている様子はない。
魔女とナハトは、ちょうどナギの位置から同じくらいの距離に立っていた。
(ここで黒猫を殺せば、魔女を斃せる。だがその場合、ナカムラソウゴは——ニアは死ぬこととなる)
焦りの中、ナギはもう一度魔女に目をやった。
「このぉ——糞がぁぁぁ!」
魔女は今や、左手に持った箒を投げ捨て、両手で応戦していた。
だが——それでもなお、明らかにシイナユウの方が優勢だ。
(今斬りかかれば——魔女を仕留められるのでは?)
そんな都合のいい考えを嘲笑うかのように、再び戦況は動いた。
「フン——ようやく始まったねえ!」
それまでの腹立たしそうな様子から一変、魔女がニヤリと意地悪く笑う。
見ればシイナユウの全身に、真っ赤な色をした文字列が、刺青のように浮かびあがっていた。
「ううっ……!?」
それに呼応し、シイナユウが苦悶の表情を浮かべ、その場に片膝をつく。
発する〝力〟が弱まり、シイナユウの体は魔女の魔力に吹き飛ばされた。
「きゃあっ!」
「由宇!」
シイナユウの悲鳴と、モリヤオサムの叫びが重なる。
「そいつは前もってつけておいた生贄の印さ!〝夜〟が近づくにつれて苦痛は増すよ!」
「このっ——!」
モリヤオサムが、魔女に向けて銃弾を放つ。
「おおっと!」
すかさず、魔女がモリヤオサムに左の掌を向けた。
銃口から伸びた赤い線が、掌の直前で途切れる。
停止した弾丸が、一瞬遅れて地面に落下した。
「そんな——」
「引っ込んでな、小僧!」
続けざまに掌から放たれた魔力が、モリヤオサムを直撃する。
「うわあっ!」
モリヤオサムが吹き飛ばされる一方で、魔女へと素早く駆け寄る影があった。
——ニアだ。
ニアは獣の様な咆哮と共に、魔女へと飛びかかった。
だが。
「遅いっ!」
魔女の左の掌が、今度はニアに向けられた。
ニアの体は、魔女を殴りつける寸前のモーションのまま、空中でピタリと静止した。
「くそっ……!」
「小蝿がブンブンとやかましいねえ——そんなに死に急ぎたいなら、お望み通り殺してやるよ!父親と同じ殺し方でねえ!」
そう叫ぶ魔女の右の掌に、漆黒の火球が生じる。
その炎を見た瞬間——ナギは駆け出していた。
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
叫びながら、矢のような速さで距離を詰める。
魔女はギョッとした表情でナギの方を向き、咄嗟に彼女のいる方向——自身の右側へ向けて火球を放った。
しかし火球は、体勢を低くしていたナギの頭上を素通りした。
髪が僅かに焦げるのを感じつつ、ナギは抜刀した。
勢いそのまま、高速の斬撃を連続で繰り出す。
「ぐあっ——!?」
ナギは魔女の右手と首を続け様に斬り落とした後——よろめく魔女の体を、真上から唐竹割りに両断した。
魔女の肉体はバラバラとその場に崩れ落ち、魔力から解放されたニアも地面に倒れた。
(——勝った、のか?)
余りにも呆気ない幕切れ。
勝利の実感を得るよりも早く——
ドスッ。
——胸のあたりに、衝撃があった。
視線を下に下げる。
ちょうど心臓のあたりから、血に濡れた刃物の先端が顔を覗かせていた。
「なるほど〝新月の秘薬〟かい」
背後から、しゃがれた声が——今しがた自分が殺したばかりの、老婆の声が聞こえた。
「……え?」
ナギは呆然としながら、首だけでゆっくりと背後を振り返った。
そこにはいつの間にか背後に忍び寄り、短剣を巻き付けた蔓を口から伸ばしたナハトの姿があった。
「流石のアタシも、こいつは前もって知っていなけりゃあ感知できないわな。しかし、惜しかったねえ」
ニヤリと笑って、ナハトが短剣を引き抜く。
「そのババアの体は、囮の肉人形——本体はアタシだよ」
「そん、な——」
口と傷口から血が一斉に溢れ、ナギはその場に崩れ落ちた。
すぐ側に転がっている老婆の体が、蝋人形の様にどろどろに溶けていくのが見えた。
立ちあがろうとするが、体に力が入らない。
視界も、急速に霞んでいく。
五感が失われていく中、最後の瞬間——
「ナギ!ナギ!——姉さんっ!」
——どこか遠くで、そんな悲痛な叫びが聞こえた気がした。
——同刻。
堺の世界に存在する、巨大な城壁にぐるりと囲まれた街にて。
その街の神殿には、異界から流れ着いた、壊れたラジオが祀られていた。
神殿の内部には、今日も大勢の参拝者が押し寄せている。
昆虫の様な複眼を持った老人が、いつもの日課で、ラジオの前に膝をついて祈りを捧げたその時だった。
「あーらら、そっちを選んじゃったかぁー」
突然、目の前のラジオから、そんな声が聴こえた。
男性の、低音の効いた美声だった。
老人は驚いて顔をあげた。
長いことこの神殿に通っているが、こんなことは初めてだった。
声は、おかしくてたまらないといった口調で続けた。
「ちゃんナギ、ゲームオーバーっ」
——それを最後に、声は聴こえなくなった。
背後で咳払いがした。
振り返ると、すぐ後ろに並んでいる体中から毒々しい茸を生やした女が、「早くどけ」と言いたげにこちらを睨んでいた。
老人は逃げるようにして神殿の外へ出ると、先程の声について考えた。
お告げにしては意味がわからな過ぎる。
他に声が聴こえた人もいないようだったし、おそらく——いや、きっと自分の聞き間違いだろう。
苦笑しつつ、空を見上げる。
間も無く〝夜〟が来る。
若い頃のように、妻と一緒に夜空を見上げてみるのもいいかもしれない。
蠢く黒い太陽の下、老人は一人家路を急いだ。