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その日の晩は魔法によって燃えてしまった部屋や壁の消火や怪我人を治癒したりと、慌ただしく時間が過ぎ、一段落ついた時には朝になっていた。

エルは夜型に戻っていたので、夜中の内に手紙を送って連絡を取ったら、すぐにこちらに来てくれた。

城の寮からシトロフ家まではそう遠くないのは助かった。


様子を見に来てくれたエルは、私たちの代わりに怯えているミレイを、彼女が眠りにつくまで見てくれた。

ミレイを仮眠をとると言うお母様に預けたあと、エルが詳しい話を求めてきたので、レイロとの会話を話すと、エルは眉根を寄せた。


「あいつは一体何を考えてるんだ」

「よくわからないけど、ミレイを連れて行こうとしていたわ。奥さんが子供が嫌いなのに、どうしてミレイを連れて行こうとしたのかしら」

「兄さんの好みじゃないんじゃないか?」

「……どういうこと?」


どうして、それがミレイを引き取る理由になるのかわからない。


「その妻っていうのは、兄さんが命からがら逃げ延びたあとに出会った女性、もしくは昔からの知り合いだが、俺たちが知らない人物だろうな」

「たぶんね」

「助けてもらった恩で結婚したのかもしれないな」

「そんなことで結婚するかしら。お姉様との時はあれだけ嫌がっていたのに」


それに、どうして今のタイミングで現れたのかしら。

何か理由があるはずだわ。


考えていると、エルがため息を吐いたあとに口を開く。


「ミレイはショックを受けてた」

「それはそうでしょう。死んだと思っていた父親が部屋にやって来るんだもの」

「最初はおばけが出たのかと思ったって言ってたよ」

「部屋に忍び込んだ時点で怖いのに、死んでいると思っていた人が現れたら余計に怖いわ」


エルが難しい顔をしているので尋ねる。


「どうかした?」

「……考えたんだが、ミレイは俺が預かったほうが良いかもしれない」

「どういうこと?」

「俺なら絶対にあいつに勝てる」


それは絶対に間違いない。たとえ、レイロの実力がエルを上回っていたとしても、エルが負けるはずがない。

レイロはエルには手を出せないんだから。

だけど、問題がある。


「レイロ一人だけなら勝てるでしょうけど、レイロの嫁が出てきたら、あなた一人では厳しいと思うわ。攻撃魔法が使えるみたいだから」

「嫁のことだが、兄さん、ああ、もう、兄じゃないのに、癖で言っちまう。あいつがミレイに嫁の名前を言ってたらしくて、それで今、該当しそうな人間を当たってもらってる」

「何ていう名前なの?」

「ティルシーって呼んでたらしい」

「ティルシー?」

名前には聞き覚えがあった。

問題になった第二王子殿下の側室の一人で、裏でレイロと関わっていたのではないかと言われている人物だ。

彼女は現在、行方不明になっているから、レイロと一緒にいてもおかしくない。


「知ってるのか?」

「ええ。彼女には色々と邪魔されたから」

「それって……」

「ええ。彼女はレイロのことが好きで、妻になった私を憎んでた」

厄介なことになりそうだわ。


私は大きなため息を吐いた。


******


その日の昼過ぎに、ティルシー様についての報告が改めて上がってきた。

名前はティルシー・ブライトン。


5年前、魔物との戦いが終わってから、突然、姿をくらました人物だ。

昨日、彼女らしき人物が片腕のない男と歩いていたという目撃情報が王都で相次いだため、昨日の女性だと判断され、王都は厳戒態勢がしかれることになった。

結婚したと言っていたから、ティルシー様、いや、ディルシーも外では違う名前を名乗っている可能性が高い。

考えたくないけど、誰かを殺して成り代わっているのかもしれないわね。


「アイミー」


部屋でこれからどう対応していくかを考えていると、お母様がやって来て、私に白い封筒を差し出した。


「エイミーから手紙が届いているわ」

「……レイロの話を聞いたんですね」


礼を言って、お母様から封筒を受け取り、封を切って中身を読む。


そこには、『レイロのことで協力したいから会いに来てほしい』と書かれていた。

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