注意事項
・この作品は第一次wrwrd様の二次創作です。
・本人様とは関係ありません。
・検索避けに協力してください。
・軍パロ、怪我表現が含まれます。
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「入れ。」
「くそがッ…。」
乱暴に檻の中へと投げられたtnは、敵軍の男を睨みつけた。
虚しくもそれは効かず、そのまま鍵が締められる。
まあだが、それも慣れている。
なんせ彼は書記長で、狙われやすい立場の男だ。
何度囚われてきたことか。全く。
tnは溜息をつき、しぶしぶ座り込んだ。
キツく縛られた紐を取りたいものだ。
ガタと物音がして横を向けば、同じ檻にもう1人、男が入れられていた。
随分と長くいるのか、痩せこけていて服も汚れている。
膝にはカサブタが沢山あった。
にしても、綺麗な水色だ。
そう思い、顔を隠している長い前髪を退かしてみた。
虚ろとした目が合う。
「…ci?」
「…tn!?」
どうやら、とんでもない事が起きたらしい。
*
「な、なんでおんの。ci、お前ここの国の軍やったんけ。」
「ちゃうよ!俺、散歩中に道迷ってここに入ってきちゃったら不審者って勘違いされて囚われてんねん。tnは?」
「俺はw国におる。今は囚われとるけどな。」
「w国に入軍できたんやね。流石やなあ。」
「まあな。てか、お前散歩中って、軍はどうしたん?」
ciは座り込み、膝をぎゅうと抱きしめた。
それから、少し間を開けて小さく声を出した。
「…旅人やねん今。結局諜報とか外交官とか、できんくて。すまん。」
彼にとって辛いことを聞いてしまった、とtnは後悔をした。
だが、これはむしろ好都合なのではないだろうか。
「じゃあci、俺んとこ来いよ。」
彼の虚ろな目が大きく開かれる。
彼は元々気にしいだし、弱っちいから、ほっとかれることに比べたら嬉しいに決まってる。
tnとciが、士官学校での同級生だった。
別れ際に、tnは軍の偉い人になると、ciは外交官になると、お互いに拳をぶつけていた。
現在、tnは書記長である。
あとはciが外交官になるだけだ。
才能はあるのだから、それを見極めている人がいれば既になれていること。
見る目がない者だらけだな、とtnは呆れた。
「その為にはここから生きて脱出せんといかんな。ci、体力は?」
「…,」
ciはtnの耳元に近寄り、こそ、と小さく伝える。
「ここの飯、少量の毒入ってるから気ぃつけや。」
長居してると、蓄積された毒で戦うどころか、走ることもできなくなるぞ、と。
その時、丁度兵士の男がワゴンを持ってやってきた。
ふにゃふにゃで冷めたお粥をふたつ、檻の中へと入れ、恐らく食べ残しである野菜を少し置いて出ていった。
ciは溜息をつきながらお粥を1口。
「…食べんと餓死するで、tn。」
「でも毒あるんやろ。」
そう言えばciは、tnのお粥と自分のお粥を交換した。
「tnは書記長やから、きっと俺よりも多くの毒が入れられとる。そっち食いなよ。」
「でもそれだとお前が!!」
「大丈夫。毒耐性あるから。」
もぐもぐ、と頬を揺らして食べていく。
その表情に満足気はないが、次第に皿の中は空っぽになった。
tnも食べ終え、野菜は念の為tnが半分以上を食べることにした。
tnだって、毒耐性は少し着いている。
全部ciに押し付けるつもりは無いのだ。
「…なぁci、お前脱獄計画とか立ててないんか。」
「うーん…立ててないかなぁ。あ、でも道具ならね、持っとるんよ。」
ここ、ここ、と檻の隅の窪みから箱を取り出す。
中にはドライバーやら、トンカチやら、工具系が色々と入っている。
「多分、檻作った人が忘れてったんやろね。使えそうなのある?」
「インカム持ってんねん。ただ壊されたから、直せばいける。使えまくりやな。」
「そっか。よかった。」
ciはへたん、と床に寝転がる。
どうやらもう夜のようで、眠気がやってきていた。
tnも釣られて寝転がる。
「おやすみ、ci。」
「うん。」
*
「tn氏はどこに囚われたんだ!?」
その頃、grは地図をばら撒きながら暴れていた。
emがtnの予定と合わせながら考えているが、どうやら拉致られた可能性が高く、特定ができないとのこと。
護衛の奴らは何故か全員気を失っていた。
それほど強い奴らに襲われたのだと。
zmは落ち着きを失い会議室内をうろちょろしながら、時折shoの服を引っ張っていた。
knはいつでも迎えるように、銃に弾を入れ込んでおり、htは刀を磨いていた。
ut、shp、rbは護衛の兵士らの話を聞きに、この場を離れている。
osも、emを手伝い、特定を試みていた。
「近い国のカメラハッキングして、tnらしき姿が映ってないか、見てみるしかないなぁ。時間かかるけど。」
emはパソコンを開き、utに連絡を入れる。
ハッキングはutが得意なのだ。
「時間かかるのか!?!?tn氏はどれだけ待たねばならない!?!?我が国の書記長だぞ!?」
「無理に全国探すよりかはマシなんや、それに、それが一番早い」
「…仕方ない、私にも手伝わせてくれ。」
grはemのパソコンを覗く。
合わせて皆もemの傍に集まった。
「ハッキングは一気にut先生にやってもらいましょう。それから、分担で探す。それでいええか?」
ああ、と力強く頷く彼らは燃えていた。
*
「ci、俺らって拷問されたりするん?」
「多分されない。あって、愚問やね。毒が拷問代わりってとこやろ。」
朝日も拝めず、tnはぐでーんと檻の中で寝転がっていた。
ciは小さく足を折り曲げて座っている。
しばらく雑談していると、中に兵士が入ってきた。
男は片手に長い棒を、もう片手にメモ帳を持っていて、tnの前に腰を下ろした。
「書記長。軍の機密情報は吐く気になっているのか?」
「なってると思うか?」
「思わない。お前はw国の素晴らしい書記長だからな。ああ、そしてこいつと知り合いなのか?」
男は棒を檻の中へと伸ばし、ciの頭をかんかんと軽く叩く。
「知らん。どこの国のやつかも分からんわ。」
「嘘、だな。仲良く喋っていたでは無いか。聞こえていたぞ?」
「全く知らん。少なくともこの国、我が国のやつではない。」
tnは無理に話せないため、ciを危険にさせたくないため、咄嗟に半分嘘をついた。
こいつが誰かは知っている。でもどこの国なのかは知らない。
「お前はどこから来たんだ。言え。」
「…覚えてない。旅人なんやってば。」
「ちッ、イラつかせんな!」
男は勢いよく棒を振り上げた。
士官学校を卒業したと言えど、ciは旅人として生きている。
ちら、と視界に入ったciの瞳がきゅ、と小さく震えていた。
tnは咄嗟に動き、棒を手で掴んで止める。
「…ほう?立場を理解していないのか書記長?」
「旅人なんやぞ、こいつは無罪や。吐ける情報もない。帰してやったらどうや。」
「…さて。それはどうだろうな?」
男は檻の中へと入ってきた。
tnはciを引っ張り、隅へと後退りをする。
男は窪みから箱を取り出した。
ciの喉から、ぁ、と声が漏れる。
「こんなもの隠して。檻から出てついでに情報を奪うつもりだろう?くっくっく…旅人がこれを持ってるわけがない。」
「それは最初からそこに、!!」
tnが声を上げるが、男は無視して檻から出る。
鍵を閉めると箱を机に置き、ナイフを取り出した。
「抵抗したらどうなるか…。分かるよな。」
「…書記長様に触るな。」
ciの声に男は目付きを変えた。
ナイフをciに向ける。
「………。ふん、まあいい。まだ殺すなと言われているからな。」
男はそそくさと出ていった。
「…tn、ごめん。取られてもうた、」
目に涙の膜を張りながら俯く。
そんなciの頭をわしゃと撫でて微笑んだtnは得意げな表情だ。
「中身はここや、ばァか。」
tnのポケットには工具が詰められていた。
*
「分かった。y国や。」
shpが声を出す。
それに皆が反応し、shpの元へと集まった。
ハッキングされた他国のカメラを全員で分担して見ていたところ、どうやらshpの見ていたy国にtnの姿があったらしい。
車で連れ去られ、乱暴に連れて行かれている。
grは無言でその映像を見ていた。
「…行きます?」
shpがちら、と皆を見る。
「俺は行けるぜ!!!」
「おれも!!」
shoとzmは武器を片手に準備体操をしている。
「そうやね、早めがいい。行こう。」
emは映像を見ながら頷いた。
それから、zm、sho、shpの3人で侵入することが決まった。
utはカメラを見ながら支持を出す。
他は、もし戦争になった場合の準備を始めた。
emは不安そうに地図を眺めていた。
「何かあったか?」
grがemの顔を覗き込むように問う。
出発準備中の皆の視線もそちらへと向く。
「いや、x国が隣にあるのが不安で。」
「x国か。奴隷制度とか、上下関係のいじめとかの国だよな。」
「はい、y国と地味に仲良いから、tnさんがそちらに連れて行かれないかが不安やし、それにもしy国と戦うことになればx国も特攻隊として来てまいそうだなって。」
grは眉間に皺を寄せて足をタンタンと床に叩きつけた。
shpがそれをじっと見ていることに気がつくと、grは足を止めて言った。
「tn氏を頼むぞ。」
*
「ぶんぶん〜!!かっ飛ばすぜえ!!!」
「ぶんぶんぶーん!!!!!!」
前方を乱暴に走るzm、shoを呆れながら見る。
shpは後方をゆっくり安全に走っていた。
我が彼女を傷つける訳にはいかない。
「ふ、バイク傷つきそ。」
前方の土埃を見ながら苦笑する。
だがゆっくりしてはいられない。
shpは2人と道を変え、真っ直ぐ、平面の道を進み始める。
遠回りではあるが、こちらの方が彼女の負担が少ない。
「ふー…。」
思い切りに力を入れて全速力で走り出す。
ぶぉんぶぉんと音を立てながら風とぶつかり合う。
ピピ、とインカムから音が鳴る。
どうやら、切り忘れているようでutらの声が聞こえてきた。
「y国言うたら、せこい戦い方してくる国やんな?em。」
「せやね、今まで戦ったことあるけど、ほんませこかった覚えがある。確かここら辺に…。」
ガサガサ、と聞こえてくる。
何かを探しているのだろう。
「あった、記録本。y国はー…、ああ。毒ガスを撒き散らして戦ってきたんや。」
「あっちはガスマスク用意満タンやったんよね。俺らほんま焦ったわ。」
utがケラケラと笑う。
「あそこは毒を作るに適した地域なのかもしれないな。それか、作れる博士的な人間がいるのか。」
「そういう地域とかあんの。」
「うん、あるよ。例えば毒蛇が住みやすい気温だったりとか、毒キノコが生えやすい気候だったりとかね。」
「ほーん。」
「もしかしたらtnさん、毒やられとるかもだから、snさん準備宜しく。」
「はいはい。前言ってた解毒剤とか用意すればいい??」
ガタリと立ち上がる音が聞こえる。
隣に座って、話を聞いていたsnの音だ。
「x国ってどんなんなの?俺知らんけど。」
utの声だ。
「x国の奴隷やいじめを受ける方々の耳には黒色のピアスが付けられるんや。可哀想な子たちばっか。行きたくもないわ。」
emが怒ったような低い声を出す。
少し気まづそうに無言が続く。
「…あ、インカムつけっぱやった。」
無言を破り、utの声で最後ぷつりと切れた。
*
「…!ci、見て。切れた。」
檻の鉄格子の一部が切れていた。
tnは息を整えながらciを見る。
ciは脱獄の作戦を立てていたのだが、手を止めて鉄格子を見た。
「ほ、ほんまや。すげえ、!!」
「そっちはどうや?」
「…や、やっぱり書き直す、こんなん使えへんっ、」
ciは作戦を書いていた紙をぐちゃ、と丸めてしまった。
「見せて。俺、お前の立てた作戦でやりたいねん。」
「…っ、こ、これなんやけど、さ。」
鉄格子を切り離し、そこから鍵を外す。
または、兵士を気絶させて檻から出る。
それから。
書かれた地図をciは指さした。
「俺、ここに連れてかれるまでの道のりなんとなく覚えとるから、確かこういう構図やったはず。」
城の内装の地図を指さし、脱出ルートを辿った。
「…流石やん!!!」
tnはciの頭を撫で回した。
ciだけでなく、tnまでもが嬉しそうに笑っていた。
「…あとな、ここの周り崖が沢山あんねん。だから、飛び降りたりとか、飛んだりとか、すると思う。」
そこでtnは毒のことを思い出した。
微かに悲鳴をあげている胃を皮膚越しに見つめる。
「毒が蓄積されたら、そんな体力ないし、でも腹減った状態もまずいから……。」
ciはそこに作戦の欠点があると言う。
「いや、それで行こう。ci、ありがとうな。」
もう一度、頭を撫でる。
「おい。飯の時間だ。」
またふにゃふにゃのお粥が出てくる。
「…おい?書記長はどうした。」
ぐったりと檻の中で倒れるtnを見て男はciを睨んだ。
ciは青ざめた顔を向けて震えて首を振る。
「お、おれじゃないッ…おれはなにもしてないッ、」
「てめぇ、!!!!書記長に何をしたんだ!!!!!」
「こ、ころしてないッ、おれ、おれぇッ、」
男は顔を真っ赤にして檻の中へと入る。
棒を振り上げてciを睨んだ。
「…随分前にx国から連絡があったんだよ。」
ciがぴくりと震えを止める。
「どうやら、奴隷が1人抜け出したらしくてなァ。」
男はしゃがみ、ciの耳をぎゅう、と掴む。
それから耳を引っ張るように力を入れた。
ciは顔を歪ませ、顔は完全に真っ青。
「おまえなん
ドカッッッ!!!!!!!!
「…よし、作戦成功やな。」
tnが倒れた男を引きずり、檻の中に閉じ込める。
檻から出ることが出来た2人は地下室を出るために階段を登った。
階段の扉まで着いた頃。
「…ci?どうした?」
ciが震えて扉に近づこうとしなかった。
さっきのは演技だ。
今y国が欲しいw国情報を持つtnが、倒れるという演技だ。
ciも、震えや顔色は演技でやってもらっていた。
なのに、その演技が取れていない。
いや、これは演技ではない。
「どうした。」
手を伸ばすが、後退りをしてしまう。
どうしていきなりtnを避けたのか。
「ci、帰るで。」
「…ッ、ぅ、」
tnはciの手を掴み、扉を開けた。
廊下には誰もいなかった。
兵士から奪ったナイフと銃を持ち、廊下を進む。
片手から震えが伝わってくるのが、tn自身を不安にさせた。
「作戦通りに行こう。えっと…どうすればええんやっけ。」
そう問えば、ciは我に戻ったように方向を指さした。
震えも少し落ち着いたようだ。
早歩きで進んでいく。
途中で兵士と鉢合わせしたが、なんとか対処することができた。
そしてようやく、城から抜け出した。
あとは、最難関である崖を飛び越えるだけである。
兵士がこれほどいないことに疑問を持ちながら崖の下を眺める。
これ、落ちたら死ぬな。
tnはごく、と息を飲んだ。
「ci…ci!?!?」
ふいに振り返ると、ciは口を押えて丸くなっていた。
間違いない、これは毒の症状。
ciの背中をさすりながら意識を確認する。
「大丈夫。あと飛ぶだけや。頑張れ。」
「tn、い、いって、はやく」
「…またお前と別れなあかんのか?」
「…う、ん」
「無理。絶対にやだね。」
tnはciの腕を肩に回して後ろに下がる。
tn1人で、2人分を飛べるはずがないのに。
あるはずがないのに。
「ci。昔遊んだ時を覚えてるか?」
「…、いつ、?」
「ほら、空き地で遊んでたやろ。まだ、10も無い時。」
故郷の空き地で、tnとciは走り回って鬼ごっこやら、隠れんぼやらをしていた。
懐かしい思い出に、ciは小さく微笑んだ。
「また遊びたいなぁて、思っとってん。俺。」
「…せ、やね。」
「ん。同意は得たぞ。」
「え?」
「いくぞci!!!!!!!!!」
tnは2回ほど軽くジャンプをした。
ciの腕をぎゅうと掴み、目の前を強く見つめる。
「昔と同じリズムで行こう!!!!」
「ま、まってや、おま、ほんき、!?」
ホップ!
ステップ!
ジャンプ!!!!!!!!!!
*
「y国はここやな。」
zmがポキ、と骨を鳴らす。
「やけに静かやね。どうしたんやろ?」
「あー…今連絡が来ました。emさんが暴れ倒してるらしいっす。」
shpはインカムを耳に当てて、バイクから降りる。
「y国とx国の機械をハッキングして、y国が提供してた毒ガスをx国に噴射。それに怒ったx国がy国に宣戦布告。で、今遠くの戦場で戦っとるらしいっす。」
zmとshoは転げて笑っている。
tnの事を忘れてはいないだろうな?
「くっく…、emさん最高やなァ。」
「んで?tnは?」
「tnさんは…。」
ガサガサガサ
奥の木々から音が聞こえる。
敵かと、3人は構えた。
そこから、赤色のマフラーが目に入ったのだ。
「「「tn /さん !!!!!!」」」
「お前らっ、やっぱりおったか!!はやく帰るぞ!!!!!」
その背中には見たことの無い水色頭。
誰かを背負っている。
生憎、3人はバイクで来ていた。
shpはちら、と顔を見た。
彼は血を吐いていて明らかに体調が悪い。
そして、耳には大きく黒いピアスがつけられていた。
shpはこのピアスに聞き覚えがあった。
x国の奴隷が付けられているものだ。
「俺の背中に括り付けてください。」
「ええか、??すまんな、」
tnはマフラーを取り、男とshpを結んだ。
知らない奴だとしても、背中の熱が飛ばされていくのを感じるのは嫌いなのだが。
*
w国に着き、tnとciは解毒剤を入れられ治療を受けていた。
tnは少量の毒しか摂取していなかったのもあり、すぐに明るい顔色に戻った。
だが、問題はciだった。
毒による内臓破壊が進んでしまっており、寝たきりになっていた。
「こんにちわ、snさん。」
「あらまshpくんじゃん。珍しいねお見舞いなんて。」
「まあ…はい。」
ヒラヒラと手を振るsnのすぐそばには寝落ちしたらしいtnがいた。
枕の隣に本が雑に置かれている。
どうにも、可愛らしい絵本を読んでいたようだ。
それを目に捉えつつ、ドアノブを捻った。
重要医療室とかいう硬い名前の部屋を跨ぐ。
「…shpくん、その子に用があったの?」
「用というか、気になってることがあって。」
そう言うと、snも悩みながらこちらに近寄ってきた。
沢山のチューブで繋がれている彼の耳を触るため、髪の毛に手を伸ばした時snが察したように息を飲んだ。
耳たぶには、大きく黒いピアスが付けられている。
と、言えばいいのだろうか。
乱暴に付けられたらしく、正しくは埋め込まれている、のような状態だ。
「これって、x国の奴隷とかのやつですよね。」
「間違いないよ。でも、なんでy国にいたんやろ。」
「…tnさんは知ってるんじゃないですか?仲、良さそうでしたし。」
「そうだね。起きたら聞いてみよっか。」
重苦しい部屋から出て、tnの所へと戻る。
来ていたらしい、zmがtnの傍に立っていた。
手には絵本が持たされている。
絵本を興味津々に読んでいるようだ。
「あっ、sn!!このえほん!!」
「tnが読んでたんやね。zmもお見舞い?」
「うん!emさん忙しそうやったから!」
shpも気になり、絵本を横から覗き込む。
zmが見やすいように絵本を広げてくれた。
可愛らしいぶたの絵が目に入る。
tnらしくないような、らしいような。
「これ、tnの故郷の国の絵本なんやね。だいぶ前のや。」
「そうなの??ふーん、急にどうしたんやろ、」
snが首を傾げれば、zmも釣られて傾げた。
shpは小さく寝息を立てるtnをじっと見つめていた。
その無防備というか、ほのぼのとした寝顔は、まるで”なにも”知らないように見えた。
もし、彼がtnとの知り合いだったら。
知り合いだから連れて帰ってきたのだったら。
x国の奴隷だと知らなかったら。
*
「ciはどうなんや。」
と、また口癖になったその言葉を言う。
tnは扉のしまった部屋を見つめて、もう一度問う。
「安定してきてはおるよ。ま、目を覚ますのはまだかな。」
「…そうか。」
少しだけ表情が和らぐ。
隣の机に置かれたお茶を1口飲み、窓の外を覗いた。
外ではzmとshoが鬼ごっこをしているようだった。
どうりで、騒がしいわけだ。
「こんにちわ。tnさんもこんにちわ。」
医務室にやってきたemがぺこ、とお辞儀する。
流れるように、ciの寝ている部屋に入って行った。
emは今、x国について調べている。
前のy国との戦争でお互いに勢力を失い崩れている2つの国の関係性についてを。
しばらくして、emが出てきた。
すかさず、tnが口を開く。
「em、ciはどうなんや。」
「呼吸も落ち着いてるし、大丈夫だと思うで。」
「そうか。」
その様子に、くすりとsnは微笑んだ。
tnがむっとこちらを睨む。
「そんな心配せんでも。そんなにあの子が気になる?」
「あ、当たり前やろッ…、俺の相棒みたいなもんやぞ、ずっと前からの、」
snとemが同時に目を丸くする。
お互いに顔を合わせ、喉を鳴らした。
「なんや、言ってなかったっけ。あいつ、同じ士官学校の知り合いやねん。」
「…tn、あの子、どこに入軍したかは知っとる?」
「しとらんって言っとった。旅人って。」
emが小さく呟く。
伝えようと声を出すが、それはまるで呟いたようにその場に落とされた。
「あの子、x国兵士で奴隷とされとるで、」
tnは点滴をぶち抜く勢いで立ち上がり、そのまま倒れた点滴を引きずり彼の部屋へと走った。
snが慌てて追いかける。
emは悲しそうに俯いたままだ。
外も、しん、と静かになっていた。
突然大きな音を立てた医務室に、皆が集まってくる。
emは更に悲しそうに、その事を伝えた。
「………。」
tnはciの黒いピアスを見て、その場にしゃがみ込んだ。
snもなんて声をかければいいのか分からず、部屋から出ることにした。
今は、2人きりの方が良い気がして。
*
なるほど。
確かに、言われてみればそうだったのかもしれない。
彼の嘘にまんまと騙されてしまっていた。
あれほど才能のある彼が入軍できないなんて、有り得ない話だ。
最後、脱出する時兵士がx国の名を出していた。
ciの顔色は、きっとそれにも関係していたのだろう。
卒業したあと、ciはどんな道を歩んだのだろうか。
それはきっと、俺が思ってる以上に辛いことだ。
俺は呑気に、色々と言ってしまったのかもしれない。
気づけていたら。
いやもしかしたら、気づけていても、ciの助けになるような言葉は言えなかったと思う。
現に、今がそうなのだから。
「…子供ちゃうんに。」
「…子供やで。」
あの時の、リズムが。
掛け声が。
一瞬で長い時を戻してくれたようだった。
俺は、ずっと長い時を永遠と過ごしていたのだと、今になって実感する。
あのまま、諦めていたら。
もし、tnと会えなかったら。
俺は、十分と救われたんだ。
それ以上を求めなくても良いほど。
あの時の、ホップステップジャンプは、魔法のように、俺とtnを子供に戻した。
子供の頃のように、全力で楽しめていた。
先のことも気にせず、後のことも忘れて。
ホップステップジャンプのリズムで、
また一緒に進めるだろうか。
おわり✌🏻
今回は長編にしてみました
それと、区切り方?を変えてみたんです!!
前までは、長く空白つけて、─ だったんですけど
今回は少しだけ空白つけて、* にしました
(文字数減らし術)
分かりずらいようなら、昔の方に戻しますので教えてください🙇♀️
それと、ここで完結なのですけれども
もし、要望があれば続編作りますんで
また教えてください!!!!!!!
コメント
12件
続編も良ければほしいです!✨
続編希望です!!!