8 専属
私のペットボトルの蓋を開けてから先生はソファから立ち上がった。
「あ…これコピーしなきゃじゃん」
机にあったプリントを見てチッと軽く舌打ちをした。
「秘書ほしいわぁ、秘書ー!」
『えー?教師に秘書ですか?』
「あ、知らねぇの?大学にはいんのよ。秘書」
『先生は高校教師ですけど』
「ふはっ笑それ言うなよ」
腕を組んで笑いながら秘書ほしいって言ってる。
『秘書のお仕事はなんですか?』
「んー、俺の手伝い全般」
『雑用係ですか?』
「そうも言うな」
うん、って先生が頷いて偉そうに
「俺専属のね。」
ニヤッと口角を上げた。
それ。好きなやつ。
『先生』
「ん?」
『秘書、やってあげてもいいですよ』
「お、上から目線」
『国語、嫌いじゃないし』
「姫野、日本語すきだしな」
私の言葉を本気にしてるのか、してないのか分からない先生の態度。
『今日みたいに手伝う日があったら手伝ってあげてもいいですよ』
「んふふ、だからなんで上から目線なんだよ」
コビーしなきゃって言ってた紙をピラピラさせながら、眉間にシワをよせ、笑った。
その視線があまりにも刺激強いから、何か色々誤魔化す為にミルクティーをグビクビ飲んでみた。
「あー、お前、ご褒美が目当てなんだろ」
『…あ、バレましたか。』
「やっぱなー。そんな何度もしてあげれねぇよ」
『何度かに1回でいいので。』
何が目的だなんて言わない。
ただ、先生と話せてるだけでいい。
それがご褒美だもん。
「じゃ、たまに手伝って貰おうかな。」
「誰も手伝ってくんねぇし。」
『ふふっ』
「あいつら冷たいよなー。手伝ってって言った途端、ソッコー目逸らしたからね?」
姫野も見たろ?って感じで前のめりになって話してきた。
「ちょっと寂しかったもん」
『みんな、早く帰りたいんですよ。予定があったりとか。』
「姫野はねぇの?予定」
『予定がない、って言うと悲しいですね…』
私がボソッと呟くと、先生はゴメンって私の顔の前で手を合わせて、
「目、合わせてくれる子が居て、嬉しかったよ」
優しい目だった。
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何 も か も が さ い こ う な ん だ け ど !