チャイニーズ・シアターの正面に車を停めると、奈津美さんが助手席側の窓をコツコツ叩いた。
キャピタル・レコードが見えたところでハリウッド・ブルバードを右に折れ、南に下る。
「私、自分を過信してました。外国でもどこでも一人で生きていけるって」
「最初は誰もが分からないものです」
「街を知ってる人と一緒だと、心強いです」
ウィルシャー・カントリークラブの暗い森が見えてきた。あれを超えるとウィルシャー・ブルバードがあり、クレンショーはその先だ。
「この街いろいろ案内したいといつも思ってたんですが、俺、週末バイトだし、奈津美さんも学校終わるとこんな時間じゃないですか。この後じゃちょっと遅すぎますしね。だから、なかなか行けないですね」
「私、別に遅くなっても構わないですよ。ご迷惑でなければ」と彼女は答えた。
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