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第4話:眠れない夜
事故の翌日。
朝から体がだるかった。
「……頭重い」
学校へ行こうとして立ち上がった瞬間。
ふらつく。
「お嬢様?」
後ろから支えられる。
湊だった。
「顔色が悪いです」
「平気…」
「平気ではありません」
額に手が触れる。
「……熱があります」
「え?」
そのまま抱き上げられた。
「ちょ、ちょっと!」
「本日はお休みです」
「自分で歩ける!」
「命令違反になります」
「もう…」
でも。
少しだけ嬉しい。
医師を呼び、診察が終わる。
「軽い風邪ですね。安静にしてください」
部屋には藍音と湊だけ。
静かな空気。
「お粥、食べられますか?」
「……うん」
スプーンを差し出される。
「自分で食べる」
「熱があります」
「子供じゃない」
「知っております」
でも。
優しく口元に運ばれる。
結局。
食べさせてもらうことになった。
恥ずかしい。
でも――
嫌じゃない。
むしろ安心する。
夜。
熱が少し上がった。
「……湊」
「はい」
「帰らないの?」
「帰りません」
「え?」
「本日はここにおります」
「ええ!?」
心臓が跳ねる。
「お嬢様が眠るまでそばに」
「……」
顔が熱い。
熱のせいじゃない。
絶対。
深夜。
目が覚めた。
部屋は暗い。
でも。
手を握られている。
湊がベッドの横で眠っていた。
椅子に座ったまま。
手を握ったまま。
(ずっと…ここにいたの?)
胸がぎゅっとなる。
寂しくない。
怖くない。
こんな気持ち初めて。
無意識に。
指を握り返す。
その瞬間。
湊が目を覚ました。
「……お嬢様?」
「起きちゃった?」
「ええ」
少し沈黙。
そして藍音は小さく言った。
「……ありがとう」
湊の目が柔らかくなる。
「当然です」
「違う」
声が震える。
「ずっといてくれて」
沈黙。
そして。
優しく頭を撫でられた。
「貴女が望むなら」
低い声。
「一生そばにおります」
ドクン。
胸が壊れそうになる。
(だめ…)
(これ以上優しくされたら…)
気づけば。
藍音は彼の服を掴んでいた。
「……湊」
「はい」
「好きって…どういう感じ?」
空気が止まる。
湊の瞳が揺れた。
「それは……」
でも。
言葉は続かなかった。
藍音はまだ。
自分の恋を知らない。