テラーノベル
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鏡の前。
制服のボタンを止めようとして、手が止まる。
胸元。
白い花の紋様の一部が、薄く黒ずんでいた。
指で触れる。
「…ッ、痛い。」
まるで痣の奥に棘が埋まっているようだった
「なんで…。治ってないの…?」
ぽつりとつぶやく。
昨日、助けた青年の顔が浮かぶ。
『あなたはヒーローです』
そのあと、
“怯えた顔で逃げた姿も”
「……。 」
スズランは鏡から顔を逸らした。
お仕事に行く準備をする。
「今日は、ゆっくりでよかったよね。 」
ガタンッガタンッ
電車に乗っている。
「そういえば…」
「これからは、午後6時から花の衆として、集合するからな。」
月桂樹が言う。
「はぁ、めんどくさ」
「文句を言うな、彼岸花」
「もう、菊はいっつもうるさいんだから。」
空気が凍る。
「集合場所はどこなの?」
ふと、気になったことを言う。
「あぁ、本部前でいいだろう。」
「わかった。ありがとう」
「集合があったよね…。めんどくさ」
ポツリとつぶやく
「おはようございます」
「あぁー、鈴音さん。おはようございますー。 」
「今日もよろしくお願いします。」
「来て早々ごめんだけど、薬の調合をお願いしてもいい?」
「いいですよー。」
もう、働いてから五時間ぐらい経ったかな。
本当に、疲れた。
「ふぅー、すみません。一旦休憩行ってきます」
「はーい、行ってらっしゃいです。」
今日は…。お弁当作ってきてないから、買いに行かなくちゃね。
待合室の方に行くように、調剤室を出る。
ふと、テレビの音が聞こえてくる。
『能力者災害対策強化策ーーーー』
「花織人って怖いよな。」
「ほんとにね。庭園管理局がいなかったら終わってるわ。 」
スズランが横で聞いている。
誰も彼女が花織人だと知らない。
何時間経ったんだろう。仕事をやっているはずなのに、さっきのことが頭から離れない。
今は、午後7時か。
「鈴音さん、大丈夫?仕事に身が入ってないように見えるけど…」
「あぁ、ごめんなさい。すぐやります。」
「いやいや、そう言うことじゃなくて…。」
「じゃなくて?…」
「あなたを呼んでいる友達の皆さんが待っているわよ。 」
「はい、わかりました。すぐ行きます。」
誰なんだろう、見当がつかない…
「おい、集合時間を過ぎているぞ。」
「え?…。
あ、ごめんなさい。」
そういえば、6時に集合だった。
もう、結構過ぎてしまっている。
だけど…
「たくさんの大人数で来ましたね。
1人、2人ぐらいでよかったんじゃ…」
「よくみんなの格好を見てみろ。 」
みんなの格好をジッと見てみる
月桂樹はオフィシャルスーツっぽいを着ている
菊はガチガチのスーツだ。権力凄そう…。
あの時の冷徹な男性は、工事現場の服を着ている。確かにあっているような気がする。
「わかっただろう。
みんな仕事を終わってから来ているから、
みんなで行動しようと言うことになったん
だ。
どうせ、ここからだと戦闘訓練場近いし
な。」
「な、なるほど。」
「さて、移動しようか。
今日はバスで行くよ。」
とても静かだ。誰も口を開くことをしない。
ふと、思ったことを口に出してしまう。
「昨日、あの人助けられたよね。」
「でもそれは、結果論だ。」
菊が冷たく言う。
「でも…」
「お前は、よく救えたかもしれないで動こうとする。」
菊は資料から目を離さない
「俺は、死ぬ可能性で止まる。」
「よし、これで終わりにしよう。」
「帰りもバスだから、早く準備して」
「早くバスに行かなくちゃ。」
「ふぅー。疲れた。」
ドサッと座ってしまう。
「お前はもうちょっと体力をつけたほうがい
い。
あと観察力も。」
菊はスズランの左手を見ていた。
「そうね…。頑張る。 」
「ねぇねぇ、スズランちゃん。」
隣にいたカスミソウに話しかけられる。
「ん?あ、カスミソウさん。 」
「カスミソウだけでいいよ。」
「じゃあ、カスミちゃんでいい?」
「もちろん。それでさ、」
「どうしたの」
「スズランちゃんってさ」
「ん?」
「自分のこと全然大事にしないよね。」
「…….そんなことないよ」
「嘘つけ。」
カスミソウは笑う
でも、その笑顔が少しだけ寂しい
「優しい人ってさ、自分が壊れるときは黙るんだよ。」
カスミソウは笑った。
いつもと同じ。
明るい笑顔。
でもその目は笑っていなかった。
「私はね、そう言う人を何人も見てきたの」
「……」
「そう言う人こそ大丈夫って言うんだよ。」
「まだやれるって。」
「平気だ…、って。」
スズランは返事をしなかった。
カスミソウは窓の外を見ながら続ける。
「でもね。」
「そう言う人って、ある日急にいなくなる 」
バスの振動だけが響く
「だからさ。」
カスミソウは少しだけ笑った。
「壊れる前に誰か言いなよ。」
「『助けて』って。」
「…….」
「スズランちゃんはさ、人を助けるの上手そうだから。」
「助けられるのは、苦手そうだけど。」
バスを降りる。
みんな帰っていく。
その時、後ろから声をかけられた。
「スズランちゃん。」
「んー?。あぁ、カスミソウちゃん。」
「なに?」
「スズランちゃんさー。」
「ん?」
「胸痛いでしょ」
スズランは固まってしまう。
「……なんのこと?」
「私も同じだから。」
カスミソウは笑う。
でもその笑顔は少し苦しそう。
「人の痛みを引き受けるタイプってさ、」
「隠すの下手なんだよね。」
スズランは言葉を失ってしまう。
「…無理しないでね。」
「…………. 」
「私、そういう人放っておけないからさ。」
カスミソウが去っていく。
カスミソウが走り去っていく姿にスズランは気づく。
カスミソウの首元。
白い花の紋様がある。
だけど、黒ずんでいる。
私の左手のように
「……え?」
また別の日。
また私たちは集まっていた。
「今日は遅刻じゃないよね。月桂樹。」
「あぁ。だが、それが普通だからなんも自慢することはないからな。」
月桂樹に冷たくあしらわれる。
「あぁー。本当に疲れた。」
ポツリと小さくつぶやく
「ほんとにね。 」
「あぁ、カスミちゃん。聞いちゃってた?」
「うん。でも私も同じ気持ちよ。」
「そうよね。ほんとに疲れるよね。」
「ほんとねー。」
出口に出そうとする。
カスミソウが突然立ち止まる。
「……待って。」
スズランが振り返る。
「どうしたの?」
カスミソウは遠くを見る。
「なんか、聞こえた。」
その瞬間。
路地裏で悲鳴。
二人が駆け出す。
「「いこう!!」」
能力者同士の小さな喧嘩。
一般人が巻き込まれている。
「助けなきゃ。」
スズランは助けようとする。
でも、 カスミソウが腕を掴む。
「ダメ。」
「え?」
「今ここで能力を使ったら、庭園管理局が来る。」
「でも!」
「だから我慢。」
その直後。
白い装甲。
庭園管理局が現れる。
一般人は歓声。
能力者は即拘束。
ズキンッズキンッ
胸が痛い。
ふと胸の方を見てしまう。
「え、、、?」
黒ずみがひどくなっていっていた。
「なんで。私はただ、助けたいだけなのに。」
なくも
ミツバ🌴💜🍓
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コメント
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なくもさん、第4話読ませていただきました! カスミソウちゃんがスズランちゃんに「壊れる前に『助けて』って言いなよ」って言ったシーン、すごく心に残りました。自分を大事にできない優しい人ほど、黙って壊れていく…その描写が丁寧で胸が締め付けられました。最後、二人とも黒い紋様があるって気づくところも切ないですね。次が気になります!